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暗闇の海
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翔は目を覚ます。
「……負けたのか、俺は?」
「あっ! 起きましたか、翔先輩?」
「あかり、アイツは? 仮面をつけた化け物は、お前が倒してくれたのか?」
「はい? なんです? その化け物って?」
「えっと……だな? 俺は、温泉の中で白い仮面の死神と戦っていて……」
「温泉の中? 白い仮面? 死神? 先輩、疲れてませんか?」
「あれ? いや、あれ? (夢……だったのか? 本物の化け物がいたなら、あかりが反応しないわけない……よな?)」
「しっかりしてくださいよ、先輩。翔先輩は湯舟に浸かり、のぼせて失神していたのですよ」
「のぼせて失神って、そんな漫画みたいな……」
「翔先輩は、私に感謝してくださいよ。
たまたま私が先輩の部屋に行って、たまたま、お風呂の方にいかなければ、溺れ死んでいたかもしれないのですからね!」
「それはありがとう。おかげで助かった……いや待て。たまたま、お風呂の方に入って来た?」
「……さて、そろそろ晩ご飯の時間らしいですね」
「誤魔化すな。お前、俺の入浴を覗こうとしたな」
「ぎ、ギクッ! い、良いじゃないですか! それで先輩の命が助かったと思えば、裸の1つ、2つくらい!」
「むっ……そう言われると強く言えないが……」
「そうですよ。私の活躍を先輩にも見せたかったくらいです!」
「うん、助かったよありがとう」
「沈みゆく先輩を見つけて、湯舟に飛び込んだ私は、先輩の体を肩に担いで――――」
「ハリウッドのアクションスターかな?」
そんな話をしている最中だった。
「失礼します。お食事をお持ちいたしました」
従業員らしき着物を着た人物が颯爽と現れ、慣れた手つきで食事を並べて行った。
「あかり、あかり」
「どうしましたか先輩、そんなに声のボリュームを殺して。大丈夫です、私わかってますよ? 今度、2人きりの時は和服でご奉仕をご希望ですね!」
「いや、全然違う。お前の『大丈夫』と『わかった』は要注意だな」
「ぶー それじゃなんですか?」
「ここの従業員さん……配膳係って言うか? 彼女たちは人間じゃなくて式神ってやつで良いんだよね?」
「はい、そうですね。見る人が見れば、人間ではないとわかると思います」
「へぇ~ 凄いなぁ。俺には、全然区別がつかないよ……そう言えば、けあきって何をしてるの?」
その言葉に反応したのは、彼女の式神だった。
「ご主人さまは、外へ。浜の様子を見ているそうです」
「あっ、そうなんですね。ありがとうございます(返事があるとは思ってなかった。本当に人間と区別がつかないなぁ)」
「先輩、畏まって反応が面白いです」
「お前は、誰に対しても怖気ないなぁ。……でも、浜? なんでこんな時間帯に海辺なんかに?」
「先輩は女心がわかりませんね」
「お前はわかると言うのか?」
「当り前です。休日に友人を誘った海……しかし、その友人は彼ピッピとイチャラブ。夜の海を眺めて、侘びしさと寂しさを……これは何? 涙?」
「随分と解像度が高いなぁ、おい!」
「まぁ、食事を取ったら、探しに行ってみるか? (あの死神……本当に夢だったのか? そもそも、俺たちをここに呼んだ理由、けあきに聞いていなかった)」
「えぇ?」
「露骨に嫌そうな顔をするなよ。ほら、料理が運ばれて……あれ? 洋食?」
「う~ん ここがレストランなら、文句のないほどのコース料理なんですが、和テイストの旅館なので違和感が半端ないですね!」
「申し訳ありません。主人の天王けあきは、洋食を好まれておいでなので、私たちも和食は嗜む程度……お客様にお出しするのは難しく」
そんな式神を話しを聞いた2人は
「なるほど……(釣りか!)」
「そうですね!(明日は釣りをしましょう!)」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
「ふぅ~ 食べ過ぎて眠くなりました。血糖値を下げるために夜の散歩も悪くはないですね」
「流石に、量が凄かったからなぁ。あれって絶対に、けあきの分を入れて3人分だったよな?」
「まぁ、当人がいないのですから出された物は全部食べないと……私はそういう主義なのですよ」
「そうか……それにしても暗いな。月明りだけで、周囲に建物もないから、雲が出たら真っ暗になる。せめて、懐中電灯を用意して貰えばよかったかもしれないな」
「そうですね。まぁ、私は夜でも目が効くので平気ですが」
「じゃ、真っ暗になったらナビゲートを頼むよ」
「はい! 暗闇のドサクサに紛れて、あんな事や、こんな事を……セクハラ、やり放題で楽しみです!」
「お前、思った事を口にしないためのブレーキを作った方がいいよ?」
「え? でも、先輩は『素直で正直な君が好きだ』って言ってくれたじゃありませんか?」
「そう言えば――――いや、言ってない。(言ってないよな? たぶん)」
「ほら、こんな話をしていたら、月が雲に隠れて……ふっ、やはり勝利の女神は私に祝福を与えてくれる」
「お前――――いや、待て! あそこ! ……いや、そこじゃない。セクハラするな! あそこを、あそこを見ろ! なんか、戦っていないか!?」
「……負けたのか、俺は?」
「あっ! 起きましたか、翔先輩?」
「あかり、アイツは? 仮面をつけた化け物は、お前が倒してくれたのか?」
「はい? なんです? その化け物って?」
「えっと……だな? 俺は、温泉の中で白い仮面の死神と戦っていて……」
「温泉の中? 白い仮面? 死神? 先輩、疲れてませんか?」
「あれ? いや、あれ? (夢……だったのか? 本物の化け物がいたなら、あかりが反応しないわけない……よな?)」
「しっかりしてくださいよ、先輩。翔先輩は湯舟に浸かり、のぼせて失神していたのですよ」
「のぼせて失神って、そんな漫画みたいな……」
「翔先輩は、私に感謝してくださいよ。
たまたま私が先輩の部屋に行って、たまたま、お風呂の方にいかなければ、溺れ死んでいたかもしれないのですからね!」
「それはありがとう。おかげで助かった……いや待て。たまたま、お風呂の方に入って来た?」
「……さて、そろそろ晩ご飯の時間らしいですね」
「誤魔化すな。お前、俺の入浴を覗こうとしたな」
「ぎ、ギクッ! い、良いじゃないですか! それで先輩の命が助かったと思えば、裸の1つ、2つくらい!」
「むっ……そう言われると強く言えないが……」
「そうですよ。私の活躍を先輩にも見せたかったくらいです!」
「うん、助かったよありがとう」
「沈みゆく先輩を見つけて、湯舟に飛び込んだ私は、先輩の体を肩に担いで――――」
「ハリウッドのアクションスターかな?」
そんな話をしている最中だった。
「失礼します。お食事をお持ちいたしました」
従業員らしき着物を着た人物が颯爽と現れ、慣れた手つきで食事を並べて行った。
「あかり、あかり」
「どうしましたか先輩、そんなに声のボリュームを殺して。大丈夫です、私わかってますよ? 今度、2人きりの時は和服でご奉仕をご希望ですね!」
「いや、全然違う。お前の『大丈夫』と『わかった』は要注意だな」
「ぶー それじゃなんですか?」
「ここの従業員さん……配膳係って言うか? 彼女たちは人間じゃなくて式神ってやつで良いんだよね?」
「はい、そうですね。見る人が見れば、人間ではないとわかると思います」
「へぇ~ 凄いなぁ。俺には、全然区別がつかないよ……そう言えば、けあきって何をしてるの?」
その言葉に反応したのは、彼女の式神だった。
「ご主人さまは、外へ。浜の様子を見ているそうです」
「あっ、そうなんですね。ありがとうございます(返事があるとは思ってなかった。本当に人間と区別がつかないなぁ)」
「先輩、畏まって反応が面白いです」
「お前は、誰に対しても怖気ないなぁ。……でも、浜? なんでこんな時間帯に海辺なんかに?」
「先輩は女心がわかりませんね」
「お前はわかると言うのか?」
「当り前です。休日に友人を誘った海……しかし、その友人は彼ピッピとイチャラブ。夜の海を眺めて、侘びしさと寂しさを……これは何? 涙?」
「随分と解像度が高いなぁ、おい!」
「まぁ、食事を取ったら、探しに行ってみるか? (あの死神……本当に夢だったのか? そもそも、俺たちをここに呼んだ理由、けあきに聞いていなかった)」
「えぇ?」
「露骨に嫌そうな顔をするなよ。ほら、料理が運ばれて……あれ? 洋食?」
「う~ん ここがレストランなら、文句のないほどのコース料理なんですが、和テイストの旅館なので違和感が半端ないですね!」
「申し訳ありません。主人の天王けあきは、洋食を好まれておいでなので、私たちも和食は嗜む程度……お客様にお出しするのは難しく」
そんな式神を話しを聞いた2人は
「なるほど……(釣りか!)」
「そうですね!(明日は釣りをしましょう!)」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
「ふぅ~ 食べ過ぎて眠くなりました。血糖値を下げるために夜の散歩も悪くはないですね」
「流石に、量が凄かったからなぁ。あれって絶対に、けあきの分を入れて3人分だったよな?」
「まぁ、当人がいないのですから出された物は全部食べないと……私はそういう主義なのですよ」
「そうか……それにしても暗いな。月明りだけで、周囲に建物もないから、雲が出たら真っ暗になる。せめて、懐中電灯を用意して貰えばよかったかもしれないな」
「そうですね。まぁ、私は夜でも目が効くので平気ですが」
「じゃ、真っ暗になったらナビゲートを頼むよ」
「はい! 暗闇のドサクサに紛れて、あんな事や、こんな事を……セクハラ、やり放題で楽しみです!」
「お前、思った事を口にしないためのブレーキを作った方がいいよ?」
「え? でも、先輩は『素直で正直な君が好きだ』って言ってくれたじゃありませんか?」
「そう言えば――――いや、言ってない。(言ってないよな? たぶん)」
「ほら、こんな話をしていたら、月が雲に隠れて……ふっ、やはり勝利の女神は私に祝福を与えてくれる」
「お前――――いや、待て! あそこ! ……いや、そこじゃない。セクハラするな! あそこを、あそこを見ろ! なんか、戦っていないか!?」
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