125 / 144
勇者になったレオの現在
しおりを挟む
誰が呟いた。
「――――『勇者 レオ・ライオンハート』……か。あの死にたがりが、まだ生きていたのか?」
それを皮切りに、噂と悪口が入り交じった言葉が、あちらこちらのテーブルで聞こえる。
「1人で戦場に突っ込む馬鹿だろ? 何で生きてるのさ?」
「昔は、良い冒険者だったぞ。仲間もいて……」
「戦場が頭を狂わせたのさ。仲間も狂死してなきゃ、離れて行ったんだろ?」
悪い酒が原因か? 悪質とも言える言葉であったが、当の本人は────
ゆらゆら……
ゆらゆら……
幽鬼の如く、歩いている。
彼に向けられる声が届いているのか、いないのか?
そのまま、最奥にたどり着く。対応した女性は――――
「えっと、ご注文は?」と顔を引き付かせながらも応じる。しかし、レオは小さな声で、
「――――」と聞き取れなかった。
「え?」
「依頼は? 何か良い条件の依頼はないのか……そう聞いた」
言われてから、女性はこの場所が冒険者ギルドだと言うことを思い出したようだ。
「あぁ、冒険者ギルドとしての正規の依頼ですか? 申し訳ありませんが、ここ1年くらいは、新規の依頼は入っていません」
「――――そうか。また来る」と踵を返して出口に向かうレオ……いや、不意に足を止めた。
ポケットから、取り出したのは金貨。
今の時代では価値が著しく低下した貨幣通貨……それも古く汚れた物を指で弾くと、
「え?」と金貨が飛んで行ったテーブルに座った男が声を出した。
男は冒険者を引退して、田舎に帰る計画を立てていた(最も、現在の冒険者は国の予備戦力扱いなので、自己判断で引退はできないのだが……)
そのため、机の上には地図が広げられていた。
それが、どうして世界地図なのか? きっと理由は、持ち主の本人もわからないだろう。
その地図にレオが視線を向ける。 それから――――
「やる」とだけ、口にした。
言われた本人も呆けた顔を浮かべるだけだったので、レオは「金貨だ。やる」と付け加えた。
それでも手を伸ばさない男に、
「旅に出るのだろ? 選別だ。昔、世話になったからなぁ……」
「あぁ、それじゃ遠慮なく」と財布にしまいながらも、男は「そう言えば……」と思い出した。
(確か5年前……まだ、前か? たまたま迷宮で協力し合ったこともあったな。覚えていたのか?)
改めてレオを見る。その瞳には、周りで言われているような狂気は秘められておらず、どこまで正気のソレだった。
しかし――――
「そこにいるのか、ジェル……待ってろよ」
地図の上に金貨が落ちた場所。 そこは魔族が支配したばかりの土地。
どういう理屈だろうか? レオ・ライオンハートは、ただの当てずっぽうに見える行為で、正確に『魔王ジェル』の居場所を、ジェル・クロウの居場所を当てた。
そして、ふらつきを隠せない歩き方のまま、地図の場所へ。
魔族が支配する領土に向かって歩き始めた。 ただ……
(徒歩で何日くらいかかるか?)
そんな事を考えながら――――
「――――『勇者 レオ・ライオンハート』……か。あの死にたがりが、まだ生きていたのか?」
それを皮切りに、噂と悪口が入り交じった言葉が、あちらこちらのテーブルで聞こえる。
「1人で戦場に突っ込む馬鹿だろ? 何で生きてるのさ?」
「昔は、良い冒険者だったぞ。仲間もいて……」
「戦場が頭を狂わせたのさ。仲間も狂死してなきゃ、離れて行ったんだろ?」
悪い酒が原因か? 悪質とも言える言葉であったが、当の本人は────
ゆらゆら……
ゆらゆら……
幽鬼の如く、歩いている。
彼に向けられる声が届いているのか、いないのか?
そのまま、最奥にたどり着く。対応した女性は――――
「えっと、ご注文は?」と顔を引き付かせながらも応じる。しかし、レオは小さな声で、
「――――」と聞き取れなかった。
「え?」
「依頼は? 何か良い条件の依頼はないのか……そう聞いた」
言われてから、女性はこの場所が冒険者ギルドだと言うことを思い出したようだ。
「あぁ、冒険者ギルドとしての正規の依頼ですか? 申し訳ありませんが、ここ1年くらいは、新規の依頼は入っていません」
「――――そうか。また来る」と踵を返して出口に向かうレオ……いや、不意に足を止めた。
ポケットから、取り出したのは金貨。
今の時代では価値が著しく低下した貨幣通貨……それも古く汚れた物を指で弾くと、
「え?」と金貨が飛んで行ったテーブルに座った男が声を出した。
男は冒険者を引退して、田舎に帰る計画を立てていた(最も、現在の冒険者は国の予備戦力扱いなので、自己判断で引退はできないのだが……)
そのため、机の上には地図が広げられていた。
それが、どうして世界地図なのか? きっと理由は、持ち主の本人もわからないだろう。
その地図にレオが視線を向ける。 それから――――
「やる」とだけ、口にした。
言われた本人も呆けた顔を浮かべるだけだったので、レオは「金貨だ。やる」と付け加えた。
それでも手を伸ばさない男に、
「旅に出るのだろ? 選別だ。昔、世話になったからなぁ……」
「あぁ、それじゃ遠慮なく」と財布にしまいながらも、男は「そう言えば……」と思い出した。
(確か5年前……まだ、前か? たまたま迷宮で協力し合ったこともあったな。覚えていたのか?)
改めてレオを見る。その瞳には、周りで言われているような狂気は秘められておらず、どこまで正気のソレだった。
しかし――――
「そこにいるのか、ジェル……待ってろよ」
地図の上に金貨が落ちた場所。 そこは魔族が支配したばかりの土地。
どういう理屈だろうか? レオ・ライオンハートは、ただの当てずっぽうに見える行為で、正確に『魔王ジェル』の居場所を、ジェル・クロウの居場所を当てた。
そして、ふらつきを隠せない歩き方のまま、地図の場所へ。
魔族が支配する領土に向かって歩き始めた。 ただ……
(徒歩で何日くらいかかるか?)
そんな事を考えながら――――
0
あなたにおすすめの小説
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
異世界亜人熟女ハーレム製作者
†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です
【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる