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ピンチのときの
ピンチのときの①
しおりを挟む「まさかこんなとこで偶然会うとはね?てっきり君は20歳超えてるかと思ってたよ」
水澤は半笑いをすると、テーブルのパイプ椅子を引き「どうぞ」と言うように椅子へと促してきた。
当然、長居はする気は無い。
優作は水澤を無視して椅子に座らずにその場から一歩も動かなかった。
それを見て座らないと悟った水澤はその引いた椅子に自分が座ると脚を組んだ。
「で、なんですか。口止めなら合意だったんで訴えたりしないので安心してください。
あの日限りのことなので」
愛嬌があるとはいえない、口元だけ笑ったまま何も喋ってこないので優作から話を切り出す。
「あの日限りって冷たいなー。僕は君のこと気に入ってるから番号置いといたんだけど?」
「破って捨てました。俺、特定のやつとヤりたいとは思わないんで。それにあなたはタイプじゃない」
「残念だなー。意外と冷たいんだね。だけど僕は君を手放したくはない。偶然再会できたんだからこれを運命だとは思わないかい?」
「はぁ?」
運命の人·····?そんな訳あるか。
仮にもうしそうだとしても、此奴だとは思いたくない。
「楓さんだっけ?あそこのママが君の育ての親だと思わなかったよ」
眉を下げて流暢に喋る水澤。
「親とはいえ、未成年者をあそこに通わせるのはまずいんじゃない?君も学校に知られたら謹慎は免れないだろ?」
よくある自身を優位に立たせるための脅し文句だが、優作には一切効かなかったのは立場的に水澤の方が不利な状況だと分かっていたからだ。
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