185 / 286
初めての撮影現場
25-9
しおりを挟む
当然事務所の人間なのだろう。カッチリ髪を整髪料で固めた、灰色のスーツの少しきつい目付きが雰囲気からして厳重さを醸し出している。
ふと、男性の様子を観察していると目線が重なって軽く会釈をされた。渉太も透かさず会釈をする。
「隣は?」
向こうからしてみれば事務所に見知らぬ顔を律仁さんが連れてきたら、自然と自分の話になることくらい分かっていたが、いざ自分に話を向けられると全身が緊張した。
渉太自身だってどうして律仁さんに連れてこられたのかも分かっていない現状で、胸を張って立っていられる筈もなく、場違いなんじゃないかとさえ思えてしまう。
半歩後ろに立っていた渉太は、急に律仁さんに抱き寄せられ、よろけて前に出る。
「俺の恋人」
「え!?」
「はぁ?」
平然ととした顔で目の前の男にそう言い放つ律仁さんにギョッとした。
恋人を紹介することなんて、渉太にとっては勇気のいることなのに常々思うが、やはりこの人はいつも堂々としていてる。
目の前の男は、より一層の険しい顔をして、此方を睨んできたので、そのキツい目に萎縮しては身体が固まる。
「早坂渉太、21歳、大学生。吉澤さん今日一日よろしく。渉太、こっちは俺のマネージャの吉澤さん」
「えっ……」
唐突に他己紹介をされて戸惑う。
先程からの男は律仁さんのマネージャさんで、よろしくってことは……これから仕事に同行するってなんじゃないだろうか……。
渉太は『いやいや、律仁さん、それは流石にまずい』と心の中で唱えては気が気じゃない。
「お前何考えてんだ。現場に恋人を連れてくる馬鹿が居るか」
「ここにいるけど」
律仁さんはケロッとした顔で吉澤さんに言い放つ。すると、吉澤さんは深いため息を吐いては、右手で頭を抱えていた。
「渉太、来年就活だし丁度いいじゃん?見学させてあげてよ。周りには新人マネージャってことにしとけば問題ないしょ?」
「ダメだ。帰ってもらえ」
「相変わらず頭硬いなーじゃあ、恋人をほっぽって仕事にはいけないから送ってから行くわ」
淡々と交わされていく会話。
手首を捕まれ、話の流れ的に律仁さんが自分を送ると言い出したのは、黙認したままじゃいけない。
律仁さんの今日一日の細かいスケジュールは分からないが、自分を送迎している時間などないのは確かなのは、渉太でも分かる。
「お、俺は大丈夫です。自力で帰るんで……
律仁さんこれから仕事じゃないんですか」
「そうだ、遅刻したら洒落にならんから
そこの大学生は置いていけ」
「置いていけって渉太は物じゃないんだけど。渉太行こうか?ごめんね、家まで送るから」
律仁さんは吉澤さんの言うことを聞くどころか舌を出してあっかんべーをすると渉太の手を引いて事務所の出口へと向う。
マネージャさんの前では、何処か幼さを感じられる律仁さんは新鮮で可愛いだのと思ったが、そうじゃない。
渉太は「律仁さん、俺はひとりで大丈夫です」と何度も説得を掛けてみても、微動だにしない。尚弥の時といい、こういうときの律仁さんは、手に負えない。
渉太は連れていかれるままに、事務所の出口まで到達したとき、律仁さんに「大丈夫、上手くいくから」と呟くように囁かれた。
渉太がハッとしている束の間に遠くの方から「分かったから今回だけだからな」と半ば呆れたような声音で今回の同行を許可してくれたようだった。
ふと、男性の様子を観察していると目線が重なって軽く会釈をされた。渉太も透かさず会釈をする。
「隣は?」
向こうからしてみれば事務所に見知らぬ顔を律仁さんが連れてきたら、自然と自分の話になることくらい分かっていたが、いざ自分に話を向けられると全身が緊張した。
渉太自身だってどうして律仁さんに連れてこられたのかも分かっていない現状で、胸を張って立っていられる筈もなく、場違いなんじゃないかとさえ思えてしまう。
半歩後ろに立っていた渉太は、急に律仁さんに抱き寄せられ、よろけて前に出る。
「俺の恋人」
「え!?」
「はぁ?」
平然ととした顔で目の前の男にそう言い放つ律仁さんにギョッとした。
恋人を紹介することなんて、渉太にとっては勇気のいることなのに常々思うが、やはりこの人はいつも堂々としていてる。
目の前の男は、より一層の険しい顔をして、此方を睨んできたので、そのキツい目に萎縮しては身体が固まる。
「早坂渉太、21歳、大学生。吉澤さん今日一日よろしく。渉太、こっちは俺のマネージャの吉澤さん」
「えっ……」
唐突に他己紹介をされて戸惑う。
先程からの男は律仁さんのマネージャさんで、よろしくってことは……これから仕事に同行するってなんじゃないだろうか……。
渉太は『いやいや、律仁さん、それは流石にまずい』と心の中で唱えては気が気じゃない。
「お前何考えてんだ。現場に恋人を連れてくる馬鹿が居るか」
「ここにいるけど」
律仁さんはケロッとした顔で吉澤さんに言い放つ。すると、吉澤さんは深いため息を吐いては、右手で頭を抱えていた。
「渉太、来年就活だし丁度いいじゃん?見学させてあげてよ。周りには新人マネージャってことにしとけば問題ないしょ?」
「ダメだ。帰ってもらえ」
「相変わらず頭硬いなーじゃあ、恋人をほっぽって仕事にはいけないから送ってから行くわ」
淡々と交わされていく会話。
手首を捕まれ、話の流れ的に律仁さんが自分を送ると言い出したのは、黙認したままじゃいけない。
律仁さんの今日一日の細かいスケジュールは分からないが、自分を送迎している時間などないのは確かなのは、渉太でも分かる。
「お、俺は大丈夫です。自力で帰るんで……
律仁さんこれから仕事じゃないんですか」
「そうだ、遅刻したら洒落にならんから
そこの大学生は置いていけ」
「置いていけって渉太は物じゃないんだけど。渉太行こうか?ごめんね、家まで送るから」
律仁さんは吉澤さんの言うことを聞くどころか舌を出してあっかんべーをすると渉太の手を引いて事務所の出口へと向う。
マネージャさんの前では、何処か幼さを感じられる律仁さんは新鮮で可愛いだのと思ったが、そうじゃない。
渉太は「律仁さん、俺はひとりで大丈夫です」と何度も説得を掛けてみても、微動だにしない。尚弥の時といい、こういうときの律仁さんは、手に負えない。
渉太は連れていかれるままに、事務所の出口まで到達したとき、律仁さんに「大丈夫、上手くいくから」と呟くように囁かれた。
渉太がハッとしている束の間に遠くの方から「分かったから今回だけだからな」と半ば呆れたような声音で今回の同行を許可してくれたようだった。
12
あなたにおすすめの小説
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる