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8.閑話
46.永那 中2 夏《野々村風美編》
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ドラムも断るほど…幽霊部員になろうか悩むほど、お金がないんだって、永那は言っていたのに…。
自分の無神経さにイライラする。
「風美先輩?…どうしたんですか?」
「え…あ…いや…なんでもないよ。…ご飯、美味しいね」
「…はい!」
「一口、いる?」
「え!いいんですか?」
「いいよ」
それから、妹のことを聞かれ、相変わらず憎たらしいのだと愚痴を言うと永那は笑っていた。
「笑い事じゃないのに」って言うけど、永那は笑顔のままだった。
永那は食べるのが早くて、驚いた。
私も慌てて早く食べようとすると、咽てしまった。
隣に座って背中を叩いてくれる。
「すみません、食べるの早くて。風美先輩はゆっくり食べてください」
「で、でも、待たせちゃうのも悪いし…」
「大丈夫ですよ。私、ドリンクバーを楽しんでますから!なかなかファミレスなんて来られないですからねー」
彼女がニシシと笑う。
「永那…風美…」
聞き覚えのある声に2人で驚く。
「「芽衣」」
…ん?芽衣…?“先輩”は…?
「えー!なんでここにいるの?」
永那のタメ口に、もっと驚く。
「それはこっちのセリフ」
「私は、風美先輩が奢ってくれるって言うから…」
永那が私を見て、バッチリと目が合う。
「あ…です、です…芽衣先輩」
「ハァ」と芽衣が大きくため息をつく。
「バーカ」
芽衣は永那にデコピンした。
「永那、たるみ過ぎ」
「いたーっ」
額を両手で押さえる。
「ごめんね、風美」
「え…な、なにが?」
芽衣は少し考えて、永那を睨む。
「永那、私と2人の時はいつもこうでさ。学校では、ちゃんとさせてるんだけど。驚かせちゃったでしょ?」
なに、その言い方。
まるで永那の恋人みたいに…。
「べつに…」
胸が、苦しい。
まだ、さっき詰まらせた食べ物が喉に引っかかっているみたいに、苦しい。
「芽衣先輩は」
「もういいでしょ、バレてんだから」
「ああ、そっか。…芽衣は、誰と来てんの?」
「家族」
「へー!じゃあお母さんもいるんだ!」
「うん」
嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ…早く、どっか行ってよ…。
「挨拶したほうがいいかな?」
「なんでよ…。お兄ちゃんも妹もいるし、面倒なことになるから来なくていい」
「そ?じゃ、いっか」
「うん。じゃあ…またね。2人とも」
そう言われて、勢いよく顔を上げる。
芽衣の笑顔が、私の全てを見透かしているみたいで、終わりのない罪悪感に襲われる。
私、最低だ。本当に、最低だ。
「いやあ、ビックリしました…ね…。風美、先輩?」
両目から溢れる涙が止まらない。
「ちょ…どうしたんですか?なんで?え…なんで!?」
永那がペーパーナプキンで拭いてくれる。
「ぅぅ…っ、うっ…」
全然、止まらない。
ギュッと抱きしめられて、もっと涙が溢れた。
「ぁぁっ…」
「よしよし」
頭を撫でられて、もう、何もかもが決壊する。
彼女の肩に顔を押し付けて、押し殺すこともなく声を出した。
「疲れちゃったんですかね?勉強」
ずっと、頭を撫で続けてくれる。
「根詰めてるって言ってたし。気晴らししたいって言ってましたもんね」
胸がズキズキと痛む。
私はこんなにも無神経なのに、どうしてそんなに優しくしてくれるのかわからない。
「妹さんのことも、ストレスですよね。大事な時期なのに」
「芽衣と…」
“ひっく”としゃくり上げる。
「芽衣と、付き合ってるの?」
「え!?」
彼女が私の両肩を掴んで離すと、鼻水の橋がかかった。
「あっ、ごめ、ごめんっ」
「あ、全然。気にしないでください」
鼻水をペーパーナプキンで拭いてくれる。
「芽衣とは付き合ってませんよ。ただの友達」
フフッと彼女が笑って、全身の力が抜けた。
「私も、“風美”って呼んで?」
「いいんですか?」
「私も、タメ口がいい」
「りょーかい」
永那が優しく笑う。
胸が痛い。
苦しい。
気づいたら、彼女の両頬を包んで、口づけしていた。
「せ、先輩」
ぶわっと涙がまた溢れる。
「あっ…風美…だ、だめだよ、こんなとこで」
「…ごめん、ね」
俯くと、頭を撫でられる。
永那は、私が落ち着くまでそばにいてくれた。
私が冷めたパスタをちびちびと食べる間、永那は氷だけになった、コップにささったストローをズズズと音を立てて待っていた。
食べ終えて、お金を払って、ファミレスを出る。
永那の手を握った。
永那が握り返してくれる。
「芽衣とも、手、繋ぐ?」
「…うん」
「芽衣とも、キス、する?」
「…うん」
「芽衣の胸も、さわった?」
「…うん」
深く息を吸う。
そして、ゆっくり吐き出す。
「会う時、毎回?」
「…うん」
「そっか…。そっかあ…」
道に、しゃがみ込む。手は繋いだままで。
「永那は、芽衣が好き?」
「好きだけど、友達としてね」
友達として…。
「風美…芽衣とのことで、泣いてるの?」
「そうだよ?」
「私が、芽衣と仲良くするから、泣くの?」
「そうだよ」
「どうして?」
思わず、笑う。
自分の無神経さにイライラする。
「風美先輩?…どうしたんですか?」
「え…あ…いや…なんでもないよ。…ご飯、美味しいね」
「…はい!」
「一口、いる?」
「え!いいんですか?」
「いいよ」
それから、妹のことを聞かれ、相変わらず憎たらしいのだと愚痴を言うと永那は笑っていた。
「笑い事じゃないのに」って言うけど、永那は笑顔のままだった。
永那は食べるのが早くて、驚いた。
私も慌てて早く食べようとすると、咽てしまった。
隣に座って背中を叩いてくれる。
「すみません、食べるの早くて。風美先輩はゆっくり食べてください」
「で、でも、待たせちゃうのも悪いし…」
「大丈夫ですよ。私、ドリンクバーを楽しんでますから!なかなかファミレスなんて来られないですからねー」
彼女がニシシと笑う。
「永那…風美…」
聞き覚えのある声に2人で驚く。
「「芽衣」」
…ん?芽衣…?“先輩”は…?
「えー!なんでここにいるの?」
永那のタメ口に、もっと驚く。
「それはこっちのセリフ」
「私は、風美先輩が奢ってくれるって言うから…」
永那が私を見て、バッチリと目が合う。
「あ…です、です…芽衣先輩」
「ハァ」と芽衣が大きくため息をつく。
「バーカ」
芽衣は永那にデコピンした。
「永那、たるみ過ぎ」
「いたーっ」
額を両手で押さえる。
「ごめんね、風美」
「え…な、なにが?」
芽衣は少し考えて、永那を睨む。
「永那、私と2人の時はいつもこうでさ。学校では、ちゃんとさせてるんだけど。驚かせちゃったでしょ?」
なに、その言い方。
まるで永那の恋人みたいに…。
「べつに…」
胸が、苦しい。
まだ、さっき詰まらせた食べ物が喉に引っかかっているみたいに、苦しい。
「芽衣先輩は」
「もういいでしょ、バレてんだから」
「ああ、そっか。…芽衣は、誰と来てんの?」
「家族」
「へー!じゃあお母さんもいるんだ!」
「うん」
嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ…早く、どっか行ってよ…。
「挨拶したほうがいいかな?」
「なんでよ…。お兄ちゃんも妹もいるし、面倒なことになるから来なくていい」
「そ?じゃ、いっか」
「うん。じゃあ…またね。2人とも」
そう言われて、勢いよく顔を上げる。
芽衣の笑顔が、私の全てを見透かしているみたいで、終わりのない罪悪感に襲われる。
私、最低だ。本当に、最低だ。
「いやあ、ビックリしました…ね…。風美、先輩?」
両目から溢れる涙が止まらない。
「ちょ…どうしたんですか?なんで?え…なんで!?」
永那がペーパーナプキンで拭いてくれる。
「ぅぅ…っ、うっ…」
全然、止まらない。
ギュッと抱きしめられて、もっと涙が溢れた。
「ぁぁっ…」
「よしよし」
頭を撫でられて、もう、何もかもが決壊する。
彼女の肩に顔を押し付けて、押し殺すこともなく声を出した。
「疲れちゃったんですかね?勉強」
ずっと、頭を撫で続けてくれる。
「根詰めてるって言ってたし。気晴らししたいって言ってましたもんね」
胸がズキズキと痛む。
私はこんなにも無神経なのに、どうしてそんなに優しくしてくれるのかわからない。
「妹さんのことも、ストレスですよね。大事な時期なのに」
「芽衣と…」
“ひっく”としゃくり上げる。
「芽衣と、付き合ってるの?」
「え!?」
彼女が私の両肩を掴んで離すと、鼻水の橋がかかった。
「あっ、ごめ、ごめんっ」
「あ、全然。気にしないでください」
鼻水をペーパーナプキンで拭いてくれる。
「芽衣とは付き合ってませんよ。ただの友達」
フフッと彼女が笑って、全身の力が抜けた。
「私も、“風美”って呼んで?」
「いいんですか?」
「私も、タメ口がいい」
「りょーかい」
永那が優しく笑う。
胸が痛い。
苦しい。
気づいたら、彼女の両頬を包んで、口づけしていた。
「せ、先輩」
ぶわっと涙がまた溢れる。
「あっ…風美…だ、だめだよ、こんなとこで」
「…ごめん、ね」
俯くと、頭を撫でられる。
永那は、私が落ち着くまでそばにいてくれた。
私が冷めたパスタをちびちびと食べる間、永那は氷だけになった、コップにささったストローをズズズと音を立てて待っていた。
食べ終えて、お金を払って、ファミレスを出る。
永那の手を握った。
永那が握り返してくれる。
「芽衣とも、手、繋ぐ?」
「…うん」
「芽衣とも、キス、する?」
「…うん」
「芽衣の胸も、さわった?」
「…うん」
深く息を吸う。
そして、ゆっくり吐き出す。
「会う時、毎回?」
「…うん」
「そっか…。そっかあ…」
道に、しゃがみ込む。手は繋いだままで。
「永那は、芽衣が好き?」
「好きだけど、友達としてね」
友達として…。
「風美…芽衣とのことで、泣いてるの?」
「そうだよ?」
「私が、芽衣と仲良くするから、泣くの?」
「そうだよ」
「どうして?」
思わず、笑う。
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