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8.閑話
47.永那 中2 夏《野々村風美編》
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永那は“誰かを好き”って気持ちが、まだわからないのかな。
誰にも、少しもヤキモチ妬いたりしないのかな?
永那は頭が良いはずなのに、芽衣が言うように…バカ、だな…。
「永那が好きだから。…私、ちゃんと告白したでしょ?振られちゃったけど」
「そっか。…芽衣に、“最低”って言われたんだ」
彼女を見上げる。
「風美に告白されて振ったのに、キスしたの、“最低”って言われた」
「え…芽衣に言ったの?」
「言ったっていうか、見られてた」
「そうなんだ…」
芽衣、怖いなあ…。
後つけられてたってことなのかな。
私が相談した時、“何も知らない”みたいな態度だったけど、あの時全部知ってたんだ。
立ち上がって歩き始めると、つられて永那も歩く。
「やっぱ、私、最低だよね」
「わかんない」
「え?」
「私は、嬉しかった」
苦しさもあるけど。
「そうなんだ…。よく、わかんないな、ホント」
永那がボリボリと頭を掻く。
「好きな人にキスされて嬉しくない人なんていないでしょ」
「そういうもの?」
「そういうもの」
「ふーん」
「芽衣とは…いつから?」
「ん?」
「いつから、キスとかしてるの?」
「えっと…春休み前くらいかな?」
「私が告白した日よりも、前?」
「うん、少し前だね」
「そうなんだ…」
もっと前からかと思った。
それこそ、芽衣が永那にギターを教えるようになった辺りからかと…。
「芽衣は…永那に告白したの?」
「ううん、するわけないよ。芽衣、好きな人がいるんだって」
「え!?嘘…」
「本当」
信じられない…。本当に?
芽衣が誰かにギター教えるとか、誰か(男子)の間に割って入って会話の邪魔するとか、そういうの、永那にしかしてるところ見たことないけど…。
「相手は?」
「知らない」
「知らない人ってこと?」
「いや、誰か聞いてない」
「興味、ないの…?」
「あんまりないかな」
永那の、人に対する無関心さに驚く。
永那が自分のことを“優しくない”と言い切るのは、そういうところからくるのかな…。
芽衣に“最低”って言われて、真に受けてるみたいだし。
でも、じゃあ、この、繊細な優しさは何?
よく気が利くのはなんで?
すごく矛盾しているように感じる。
「その好きな人に振られたらしくて、それで“慰めて”って言われてキスされた」
「キス、されたの…?」
「うん」
「永那からしたんじゃなくて?」
「ハハハッ」と彼女が軽快に笑う。
「私からしたのは風美が初めてだよ」
“私からしたのは風美が初めてだよ”という言葉の裏に、他にも誰かにキスされたことがあるという意味合いが隠れている気がして、頭が痛くなる。
「んー…」
永那は俯いて、首を掻く。
「まあ、させられたのを入れるなら、風美は初めての相手じゃないのかもしれないけど。…やっぱりあれは、私からした内には入れたくないな」
「誰かに、させられたの?」
「んー…まあ…」
「無理やり?」
「いや、無理やりではないよ」
やっぱり、思った通り、他にもキスしてる人がいるんだ…。
すごいなあ…。そりゃあ、慣れてるわけだよね。
「その…誰か、聞いてもいい?」
「言っても、わからないよ。たぶん」
「そっか…。私の知らない人、なんだ」
「たぶんね」
“学校の人?”とか“もしかして先生?”とか“他校の人?”とか、いろいろ聞きたくなった。
でも、永那が無表情にアスファルトを見つめているから、これ以上聞いちゃいけない気がして、聞けなかった。
芽衣からキスしたってことは、やっぱり、芽衣の好きな人は永那だと思う。
どうして告白しないのかはわからないけど…まあ、芽衣のことだから、永那が芽衣のことを好きじゃないなら好きって言いたくないって感じなのかな。
芽衣はモテるからね~…告白されたことはあっても、告白はしたくないって感じもあるのかもしれない。
“振られた”っていうのは…単純に嘘か、永那が芽衣を好きじゃないからそう表現したのか…。
こんな風にいろいろ考えていると、どうして私って成績悪いんだろう?って思っちゃう。
こういう、人のことに関しては、なんか、すごく、いろいろ当たっている気がする。
国語だけは成績が良いのは、そういうのがわかるからってことなのかな…。
無言のまま、手を繋いで歩いているうちにマンション前についた。
「日程確認したら、連絡するね」
「うん、待ってる」
「またね、永那」
「うん、おやすみ」
「おやすみ」
永那がトボトボと帰っていく。
その後ろ姿が、いつもより小さい気がした。
…そういえば今日、胸、さわられなかったな。
永那、癒やされたかったんだよね…?
だから“会いたい”って言われたんだよね。
なんか、バタバタしちゃって、全然永那に気遣えなかった。
むしろ私ばっかり優しくしてもらっちゃった。
キスもファミレスでした1回だったし…。
次会う時は、今日のお返しのつもりで永那に接しよう!
リビングにある、家族共有の予定表を確認する。
水曜日…妹がプールに行く…!
その日の塾の授業はお昼過ぎまでだから…急いで帰れば、2人きりになれる!
誰にも、少しもヤキモチ妬いたりしないのかな?
永那は頭が良いはずなのに、芽衣が言うように…バカ、だな…。
「永那が好きだから。…私、ちゃんと告白したでしょ?振られちゃったけど」
「そっか。…芽衣に、“最低”って言われたんだ」
彼女を見上げる。
「風美に告白されて振ったのに、キスしたの、“最低”って言われた」
「え…芽衣に言ったの?」
「言ったっていうか、見られてた」
「そうなんだ…」
芽衣、怖いなあ…。
後つけられてたってことなのかな。
私が相談した時、“何も知らない”みたいな態度だったけど、あの時全部知ってたんだ。
立ち上がって歩き始めると、つられて永那も歩く。
「やっぱ、私、最低だよね」
「わかんない」
「え?」
「私は、嬉しかった」
苦しさもあるけど。
「そうなんだ…。よく、わかんないな、ホント」
永那がボリボリと頭を掻く。
「好きな人にキスされて嬉しくない人なんていないでしょ」
「そういうもの?」
「そういうもの」
「ふーん」
「芽衣とは…いつから?」
「ん?」
「いつから、キスとかしてるの?」
「えっと…春休み前くらいかな?」
「私が告白した日よりも、前?」
「うん、少し前だね」
「そうなんだ…」
もっと前からかと思った。
それこそ、芽衣が永那にギターを教えるようになった辺りからかと…。
「芽衣は…永那に告白したの?」
「ううん、するわけないよ。芽衣、好きな人がいるんだって」
「え!?嘘…」
「本当」
信じられない…。本当に?
芽衣が誰かにギター教えるとか、誰か(男子)の間に割って入って会話の邪魔するとか、そういうの、永那にしかしてるところ見たことないけど…。
「相手は?」
「知らない」
「知らない人ってこと?」
「いや、誰か聞いてない」
「興味、ないの…?」
「あんまりないかな」
永那の、人に対する無関心さに驚く。
永那が自分のことを“優しくない”と言い切るのは、そういうところからくるのかな…。
芽衣に“最低”って言われて、真に受けてるみたいだし。
でも、じゃあ、この、繊細な優しさは何?
よく気が利くのはなんで?
すごく矛盾しているように感じる。
「その好きな人に振られたらしくて、それで“慰めて”って言われてキスされた」
「キス、されたの…?」
「うん」
「永那からしたんじゃなくて?」
「ハハハッ」と彼女が軽快に笑う。
「私からしたのは風美が初めてだよ」
“私からしたのは風美が初めてだよ”という言葉の裏に、他にも誰かにキスされたことがあるという意味合いが隠れている気がして、頭が痛くなる。
「んー…」
永那は俯いて、首を掻く。
「まあ、させられたのを入れるなら、風美は初めての相手じゃないのかもしれないけど。…やっぱりあれは、私からした内には入れたくないな」
「誰かに、させられたの?」
「んー…まあ…」
「無理やり?」
「いや、無理やりではないよ」
やっぱり、思った通り、他にもキスしてる人がいるんだ…。
すごいなあ…。そりゃあ、慣れてるわけだよね。
「その…誰か、聞いてもいい?」
「言っても、わからないよ。たぶん」
「そっか…。私の知らない人、なんだ」
「たぶんね」
“学校の人?”とか“もしかして先生?”とか“他校の人?”とか、いろいろ聞きたくなった。
でも、永那が無表情にアスファルトを見つめているから、これ以上聞いちゃいけない気がして、聞けなかった。
芽衣からキスしたってことは、やっぱり、芽衣の好きな人は永那だと思う。
どうして告白しないのかはわからないけど…まあ、芽衣のことだから、永那が芽衣のことを好きじゃないなら好きって言いたくないって感じなのかな。
芽衣はモテるからね~…告白されたことはあっても、告白はしたくないって感じもあるのかもしれない。
“振られた”っていうのは…単純に嘘か、永那が芽衣を好きじゃないからそう表現したのか…。
こんな風にいろいろ考えていると、どうして私って成績悪いんだろう?って思っちゃう。
こういう、人のことに関しては、なんか、すごく、いろいろ当たっている気がする。
国語だけは成績が良いのは、そういうのがわかるからってことなのかな…。
無言のまま、手を繋いで歩いているうちにマンション前についた。
「日程確認したら、連絡するね」
「うん、待ってる」
「またね、永那」
「うん、おやすみ」
「おやすみ」
永那がトボトボと帰っていく。
その後ろ姿が、いつもより小さい気がした。
…そういえば今日、胸、さわられなかったな。
永那、癒やされたかったんだよね…?
だから“会いたい”って言われたんだよね。
なんか、バタバタしちゃって、全然永那に気遣えなかった。
むしろ私ばっかり優しくしてもらっちゃった。
キスもファミレスでした1回だったし…。
次会う時は、今日のお返しのつもりで永那に接しよう!
リビングにある、家族共有の予定表を確認する。
水曜日…妹がプールに行く…!
その日の塾の授業はお昼過ぎまでだから…急いで帰れば、2人きりになれる!
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