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6.さんにん
405.冷たい
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横に座る永那ちゃんはちょっと不機嫌。
個室が空いてなかったから。
天井のない、ただ仕切りでブースが区切られている部屋に、2人で縮こまって座っていた。
床はふかふかのマットになっているから、足を伸ばすこともできるけれど、そんな風に寛ぐような雰囲気ではない。
目の前に置かれたパソコンの画面が眩しく光っている。
「私、ここも新鮮で面白いよ?」
ジトーっと見られる。
仕切りは、人が立っても中が見えないくらいの高さがある。
少しイチャイチャするくらいなら、問題はなさそう。
…でも、永那ちゃんは、それだけでは不満なんだよね。
「ハァ」とため息をついて、膝を立てて座る彼女は顔をうずめてしまう。
「早く大人になって、ラブホ行けるようになりたいわ」
発したこともない言葉をサラリと言われて、心臓が飛び跳ねる。
永那ちゃんが酷く落ち込んでいるから、なんだか少し気まずい空気が流れている。
でも、何もしなくとも時間は過ぎていく。
せっかくの2人の時間だから、少しでも楽しく過ごしたい。
私は項垂れる永那ちゃんに密着するように座り直して、彼女の横顔を覗き込む。
と言っても、膝に顔をうずめてしまっているから、頬から耳にかけてしか見えない。
彼女の耳に顔を近づける。
ピアスの穴が開いてるけど、最近つけているところを見ていない。
心臓がドクドクと脈打つ。
小さく口を開けて、彼女の耳たぶを唇で挟んだ。
彼女の肩がビクッと上がる。
挟んだ耳たぶを離して彼女を見ると、覗き見るように片目を私に向けてくれた。
「好き」
小さく呟くから、頬が緩む。
「私も、永那ちゃん好き」
彼女の瞳が細くなって、まるで捕らえられた獲物のような気分になる。
「わっ」
勢いよく両肩を掴まれて、押し倒される。
勢いがよかったのは肩を掴まれた時だけで、押し倒す時にはゆっくりと気遣ってくれるのがわかるから、永那ちゃんの優しさに心がぽかぽかする。
「穂、好き」
そっとキスされる。
ああ…。ただ唇と唇を重ねただけなのに、もう下腹部がキュゥキュゥと締め付けられる。
指先まで電流が走っているみたいにピリピリと神経が昂って、全身がぷるぷると震えだす。
湿った彼女の唇が気持ちいい。
何度も啄むようにキスを繰り返す。
彼女の手が胸に触れる。
期待に心が踊る。
「穂?」
小声で言われて、それが妙に濃艶で、ドキドキした。
「な、に…?」
「声、出しちゃダメだよ?…絶対」
…出来る気がしない。
眉間にシワが寄り、下唇を噛むと、永那ちゃんが楽しそうに笑った。
彼女の顔が近づくから、噛んでいた下唇を解放する。
彼女の口角が上がり、すぐに重なった。
ブレザーの上から優しく胸を揉まれるのは、なんだかすごくもどかしい。
マッサージされているような気持ち良さはあるけれど…そうじゃない…。
そうじゃ、なくて…。
私が上半身を起こしてブレザーを脱ぐ姿を、永那ちゃんは微笑みながら眺めていた。
「可愛い」
そう言われて、恥ずかしくなる。
…私、本当にやる気満々みたいに見えてるのかな。
いくら永那ちゃんがエッチが好きだからって、こんなに積極的じゃ、さすがに引かれる日がきたりするのかな?
でも、どうすればいいのか、わからない。
今は、永那ちゃんからたくさん求められているし、私も、永那ちゃんと触れ合いたくて仕方ない。
どうしてこんなにも歯止めが効かなくなっているのか、誰かに教えてもらいたいくらいだ。
…毎日するのが当たり前になって…でも急に1ヶ月も出来なくなって…盛大に焦らされているような感覚。
永那ちゃんと生活するようになって1ヶ月弱経った頃、千陽が“寂しい”と泣いたことがあった。
あの“寂しい”にはいろんな意味合いがあったんだと思うけど、なんとなく…その気持ちが理解できたような気がした。
もちろん、全て理解できるわけじゃない。
今の私が感じている寂しさは、きっと永那ちゃんも感じてくれていて、それが“独りじゃない”と思わせてくれるから。
それでも、寂しい。
触れ合いたいのに、触れ合えない。
それが、寂しい。
両肘をマットにつけて上半身を半分起こした状態のまま、彼女にキスされる。
寝転ぶタイミングがわからず少し戸惑ったけれど、彼女の舌が私のなかに入ってきて、ねっとりと絡まる頃には、自分の体勢なんてどうでもよく思えた。
優しく胸を揉まれ続け、もっと先を欲しがる。
その期待に応えるように、彼女はセーターの中に手を入れた。
シャツ越しに触れられると、彼女の体温が鮮明に伝わってきた。
それほどまでに自分の肌が敏感になっているのだということも、わかった。
「穂、可愛い…。もう声出てる」
耳元で囁かれる。
全然、気づかなかった。声…出てた?
顔が熱くなる。
「…これは、ダメかな」
永那ちゃんが困ったように眉根を下げた。
「なに、が…?なにが、ダメ?」
「穂、声、出ちゃうでしょ?」
やめるってこと…?
そりゃあ、確かに、天井は筒抜けで、声なんて絶対に出しちゃダメだってわかってるけど…。
この、脈打つ鼓動の速さを、どう鎮めればいいの?
個室が空いてなかったから。
天井のない、ただ仕切りでブースが区切られている部屋に、2人で縮こまって座っていた。
床はふかふかのマットになっているから、足を伸ばすこともできるけれど、そんな風に寛ぐような雰囲気ではない。
目の前に置かれたパソコンの画面が眩しく光っている。
「私、ここも新鮮で面白いよ?」
ジトーっと見られる。
仕切りは、人が立っても中が見えないくらいの高さがある。
少しイチャイチャするくらいなら、問題はなさそう。
…でも、永那ちゃんは、それだけでは不満なんだよね。
「ハァ」とため息をついて、膝を立てて座る彼女は顔をうずめてしまう。
「早く大人になって、ラブホ行けるようになりたいわ」
発したこともない言葉をサラリと言われて、心臓が飛び跳ねる。
永那ちゃんが酷く落ち込んでいるから、なんだか少し気まずい空気が流れている。
でも、何もしなくとも時間は過ぎていく。
せっかくの2人の時間だから、少しでも楽しく過ごしたい。
私は項垂れる永那ちゃんに密着するように座り直して、彼女の横顔を覗き込む。
と言っても、膝に顔をうずめてしまっているから、頬から耳にかけてしか見えない。
彼女の耳に顔を近づける。
ピアスの穴が開いてるけど、最近つけているところを見ていない。
心臓がドクドクと脈打つ。
小さく口を開けて、彼女の耳たぶを唇で挟んだ。
彼女の肩がビクッと上がる。
挟んだ耳たぶを離して彼女を見ると、覗き見るように片目を私に向けてくれた。
「好き」
小さく呟くから、頬が緩む。
「私も、永那ちゃん好き」
彼女の瞳が細くなって、まるで捕らえられた獲物のような気分になる。
「わっ」
勢いよく両肩を掴まれて、押し倒される。
勢いがよかったのは肩を掴まれた時だけで、押し倒す時にはゆっくりと気遣ってくれるのがわかるから、永那ちゃんの優しさに心がぽかぽかする。
「穂、好き」
そっとキスされる。
ああ…。ただ唇と唇を重ねただけなのに、もう下腹部がキュゥキュゥと締め付けられる。
指先まで電流が走っているみたいにピリピリと神経が昂って、全身がぷるぷると震えだす。
湿った彼女の唇が気持ちいい。
何度も啄むようにキスを繰り返す。
彼女の手が胸に触れる。
期待に心が踊る。
「穂?」
小声で言われて、それが妙に濃艶で、ドキドキした。
「な、に…?」
「声、出しちゃダメだよ?…絶対」
…出来る気がしない。
眉間にシワが寄り、下唇を噛むと、永那ちゃんが楽しそうに笑った。
彼女の顔が近づくから、噛んでいた下唇を解放する。
彼女の口角が上がり、すぐに重なった。
ブレザーの上から優しく胸を揉まれるのは、なんだかすごくもどかしい。
マッサージされているような気持ち良さはあるけれど…そうじゃない…。
そうじゃ、なくて…。
私が上半身を起こしてブレザーを脱ぐ姿を、永那ちゃんは微笑みながら眺めていた。
「可愛い」
そう言われて、恥ずかしくなる。
…私、本当にやる気満々みたいに見えてるのかな。
いくら永那ちゃんがエッチが好きだからって、こんなに積極的じゃ、さすがに引かれる日がきたりするのかな?
でも、どうすればいいのか、わからない。
今は、永那ちゃんからたくさん求められているし、私も、永那ちゃんと触れ合いたくて仕方ない。
どうしてこんなにも歯止めが効かなくなっているのか、誰かに教えてもらいたいくらいだ。
…毎日するのが当たり前になって…でも急に1ヶ月も出来なくなって…盛大に焦らされているような感覚。
永那ちゃんと生活するようになって1ヶ月弱経った頃、千陽が“寂しい”と泣いたことがあった。
あの“寂しい”にはいろんな意味合いがあったんだと思うけど、なんとなく…その気持ちが理解できたような気がした。
もちろん、全て理解できるわけじゃない。
今の私が感じている寂しさは、きっと永那ちゃんも感じてくれていて、それが“独りじゃない”と思わせてくれるから。
それでも、寂しい。
触れ合いたいのに、触れ合えない。
それが、寂しい。
両肘をマットにつけて上半身を半分起こした状態のまま、彼女にキスされる。
寝転ぶタイミングがわからず少し戸惑ったけれど、彼女の舌が私のなかに入ってきて、ねっとりと絡まる頃には、自分の体勢なんてどうでもよく思えた。
優しく胸を揉まれ続け、もっと先を欲しがる。
その期待に応えるように、彼女はセーターの中に手を入れた。
シャツ越しに触れられると、彼女の体温が鮮明に伝わってきた。
それほどまでに自分の肌が敏感になっているのだということも、わかった。
「穂、可愛い…。もう声出てる」
耳元で囁かれる。
全然、気づかなかった。声…出てた?
顔が熱くなる。
「…これは、ダメかな」
永那ちゃんが困ったように眉根を下げた。
「なに、が…?なにが、ダメ?」
「穂、声、出ちゃうでしょ?」
やめるってこと…?
そりゃあ、確かに、天井は筒抜けで、声なんて絶対に出しちゃダメだってわかってるけど…。
この、脈打つ鼓動の速さを、どう鎮めればいいの?
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