110 / 124
110 冒険者ギルド
しおりを挟む
「おい! ありゃあ……」
「へー。ついに出てきたか……」
「あの人もよくよく運が無いね。恩を仇で返されるというのは……」
冒険者ギルドは相変わらず賑わっているが、ずっと屋敷に閉じこもっていたオレたちの登場に驚いたような雰囲気があった。騒いでいた冒険者たちの視線を独り占めだ。それだけオレたち『五花の夢』と『切り裂く闇』の対立は、注目を集めているのだろう。
「なんだかすごい注目集めてない?」
「アベるんすっごい見られてる!」
「こんなに注目されてしまうと、緊張してしまいますねぇ」
「ん……」
「冒険者同士の対立なんて珍しくもないでしょうに。やはりアベルへの注目度が高いのね。なんといってもレベル8ですもの。その動向には、皆が注目しているのね」
クロエたちも冒険者たちの視線を感じて、身構えていた。人の視線って重いんだよなぁ。なんていうか、独特の重さがある。オレも未だに慣れない。
「んじゃ、行くか。予定通り、軽く飯でも食おうぜ」
オレは『五花の夢』の少女たちを引き連れながら、冒険者ギルドの食堂に足を踏み入れた。
丁度空いていたテーブルの一つを占領すると、すぐにウェイトレスが注文を聞きにくる。
「いらっしゃいませー。ご注文はお決まりですか?」
「オレは仔牛のワイン煮を頼む。バゲットにはたんまりバターを塗ってくれ。お前らはどうする?」
「あーしはステーキがいい!」
「貴女ね、この後ことも考えなさいな。もう少し軽いものにしなさい。私はサラダをもらえるかしら?」
「えぇー!? サラダだけとか! 食べた気にならなくなーい? ダイエットでもしてるの?」
「うるさいわね」
料理を注文するだけなのに、なんでこんなに時間がかかるんだろうな。そう思いつつも、オレはジゼルとイザベルの言い合いを見守った。これも少女たちのコミュニケーションだからな。この後のことを思えば、邪魔する気も起きない。これが最後の会話になるかもしれないからな……。
「冒険者ギルドのお料理は、量が多いのですけど、軽食やスイーツの類はあまりありませんねぇ」
「スイーツ! あたし季節のケーキとか食べてみたい!」
「んっ!」
なるほど。エレオノールの言う通り、冒険者ギルドの食事は、腹を満たすことが第一で、あまりおしゃれなものは置いていないな。
そして、クロエとリディはケーキが食べたい、と……。オレはあまりよく知らないが、甘味処とかに連れて行ったら喜ばれそうだな。その時は、姉貴も連れて行こう。まぁ、いずれにしろ、まず今日を生き延びないとな。
やがて少女たちの注文も決まり、ウェイトレスが去っていく。
それと同時に、オレたちのテーブルに近づく人影があった。腰の左右に剣を佩いたフル装備の冒険者の青年だ。知らない武装した冒険者の接近に、クロエたちは静かに身構えた。ジゼルなんて剣の柄に片手を置いている。マジの臨戦態勢だ。
オレは右手を上げてクロエたちを制しつつ、見覚えのある冒険者の青年に左手を上げた。
「よお、久しぶりだな。最近どうだ?」
「アベルさん、お久しぶりです。最近はぼちぼちですね」
青年は苦笑を浮かべて、クロエたちに降伏するように軽く両手を上げてみせる。クロエたちに争う意思はないと伝えているのだ。
「聞きましたよ、アベルさん。恥知らずに狙われているようですね」
「お前まで知ってるのかよ……」
「有名な話ですよ。知らない冒険者はモグリですね」
そう言い切った青年の顔には、もはや笑みは浮かんでいない。
「ご迷惑でなければ、俺たち『蒼天』にもお手伝いさせていただけませんか? 無論、お代は結構です。俺たちは貴方に恩をお返ししたい」
恩……ね。
たしかに、昔、青年のパーティをダンジョン内で助けたことがある。とはいっても、戦闘不能になった青年のパーティをダンジョンの入り口まで護衛しただけだが。
青年は、律儀にそのことに感謝し、今回、手助けを申し出てくれた。
本当に、情けは人の為ならずってやつだな。
「ありがたい申し出だ。だが、もう仕掛けは始まっててな。わりぃが、今回はパスさせてくれ。だが、お前らの気持ちは受け取った。ありがとよ」
「そうでしたか……。せっかくの恩返しのチャンスと思ったのですが、乗り遅れたようですね」
青年の真剣な顔が解れ、苦笑を浮かべる。
「ああ。なにかあったら、また頼らせてくれ。『蒼天』の名前、覚えたぜ」
「ありがとうございます! 俺たちも頼ってもらえるように切磋琢磨していきます」
まったく、気持ちのいい青年だったな。ああいう奴を見ると、冒険者もまだまだ捨てたもんじゃないと思えるな。
「『蒼天』といえば、レベル5ダンジョンを踏破した若手の注目株じゃない。そこに惚れ込まれているなんて……。分かっていたことだけど、貴方ってすごいのね」
「叔父さんすごい!」
「アベるんやるじゃん!」
そんなにすごいことでもないんだがなぁ。まぁ、クロエたちに褒められるのは悪い気がしない。もっと褒めて!
しかし、ご満悦だったオレの機嫌は、この後急降下する。冒険者ギルドに入って来た五人の人影を見たからだ。
「へー。ついに出てきたか……」
「あの人もよくよく運が無いね。恩を仇で返されるというのは……」
冒険者ギルドは相変わらず賑わっているが、ずっと屋敷に閉じこもっていたオレたちの登場に驚いたような雰囲気があった。騒いでいた冒険者たちの視線を独り占めだ。それだけオレたち『五花の夢』と『切り裂く闇』の対立は、注目を集めているのだろう。
「なんだかすごい注目集めてない?」
「アベるんすっごい見られてる!」
「こんなに注目されてしまうと、緊張してしまいますねぇ」
「ん……」
「冒険者同士の対立なんて珍しくもないでしょうに。やはりアベルへの注目度が高いのね。なんといってもレベル8ですもの。その動向には、皆が注目しているのね」
クロエたちも冒険者たちの視線を感じて、身構えていた。人の視線って重いんだよなぁ。なんていうか、独特の重さがある。オレも未だに慣れない。
「んじゃ、行くか。予定通り、軽く飯でも食おうぜ」
オレは『五花の夢』の少女たちを引き連れながら、冒険者ギルドの食堂に足を踏み入れた。
丁度空いていたテーブルの一つを占領すると、すぐにウェイトレスが注文を聞きにくる。
「いらっしゃいませー。ご注文はお決まりですか?」
「オレは仔牛のワイン煮を頼む。バゲットにはたんまりバターを塗ってくれ。お前らはどうする?」
「あーしはステーキがいい!」
「貴女ね、この後ことも考えなさいな。もう少し軽いものにしなさい。私はサラダをもらえるかしら?」
「えぇー!? サラダだけとか! 食べた気にならなくなーい? ダイエットでもしてるの?」
「うるさいわね」
料理を注文するだけなのに、なんでこんなに時間がかかるんだろうな。そう思いつつも、オレはジゼルとイザベルの言い合いを見守った。これも少女たちのコミュニケーションだからな。この後のことを思えば、邪魔する気も起きない。これが最後の会話になるかもしれないからな……。
「冒険者ギルドのお料理は、量が多いのですけど、軽食やスイーツの類はあまりありませんねぇ」
「スイーツ! あたし季節のケーキとか食べてみたい!」
「んっ!」
なるほど。エレオノールの言う通り、冒険者ギルドの食事は、腹を満たすことが第一で、あまりおしゃれなものは置いていないな。
そして、クロエとリディはケーキが食べたい、と……。オレはあまりよく知らないが、甘味処とかに連れて行ったら喜ばれそうだな。その時は、姉貴も連れて行こう。まぁ、いずれにしろ、まず今日を生き延びないとな。
やがて少女たちの注文も決まり、ウェイトレスが去っていく。
それと同時に、オレたちのテーブルに近づく人影があった。腰の左右に剣を佩いたフル装備の冒険者の青年だ。知らない武装した冒険者の接近に、クロエたちは静かに身構えた。ジゼルなんて剣の柄に片手を置いている。マジの臨戦態勢だ。
オレは右手を上げてクロエたちを制しつつ、見覚えのある冒険者の青年に左手を上げた。
「よお、久しぶりだな。最近どうだ?」
「アベルさん、お久しぶりです。最近はぼちぼちですね」
青年は苦笑を浮かべて、クロエたちに降伏するように軽く両手を上げてみせる。クロエたちに争う意思はないと伝えているのだ。
「聞きましたよ、アベルさん。恥知らずに狙われているようですね」
「お前まで知ってるのかよ……」
「有名な話ですよ。知らない冒険者はモグリですね」
そう言い切った青年の顔には、もはや笑みは浮かんでいない。
「ご迷惑でなければ、俺たち『蒼天』にもお手伝いさせていただけませんか? 無論、お代は結構です。俺たちは貴方に恩をお返ししたい」
恩……ね。
たしかに、昔、青年のパーティをダンジョン内で助けたことがある。とはいっても、戦闘不能になった青年のパーティをダンジョンの入り口まで護衛しただけだが。
青年は、律儀にそのことに感謝し、今回、手助けを申し出てくれた。
本当に、情けは人の為ならずってやつだな。
「ありがたい申し出だ。だが、もう仕掛けは始まっててな。わりぃが、今回はパスさせてくれ。だが、お前らの気持ちは受け取った。ありがとよ」
「そうでしたか……。せっかくの恩返しのチャンスと思ったのですが、乗り遅れたようですね」
青年の真剣な顔が解れ、苦笑を浮かべる。
「ああ。なにかあったら、また頼らせてくれ。『蒼天』の名前、覚えたぜ」
「ありがとうございます! 俺たちも頼ってもらえるように切磋琢磨していきます」
まったく、気持ちのいい青年だったな。ああいう奴を見ると、冒険者もまだまだ捨てたもんじゃないと思えるな。
「『蒼天』といえば、レベル5ダンジョンを踏破した若手の注目株じゃない。そこに惚れ込まれているなんて……。分かっていたことだけど、貴方ってすごいのね」
「叔父さんすごい!」
「アベるんやるじゃん!」
そんなにすごいことでもないんだがなぁ。まぁ、クロエたちに褒められるのは悪い気がしない。もっと褒めて!
しかし、ご満悦だったオレの機嫌は、この後急降下する。冒険者ギルドに入って来た五人の人影を見たからだ。
144
あなたにおすすめの小説
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~
aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」
勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......?
お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる