3 / 3
3 犬もたまにはやり返す
しおりを挟む
「抜く、だけって、言った、くせにぃっ」
「そう言ったのはおまえだ。俺は相手をすると言ったはずだが?」
「ひぃっ」
小さいながらも必死に勃起しているものを左手で擦ると、小柄な体がおもしろいようにビクンと跳ねた。前で感じさせながら、後ろに突っ込んだ右の人差し指と中指をグチュグチュと動かす。
(そろそろいいか)
発情期だからか思っていたよりも早くほぐれた。それとも猫だからだろうか。
猫は俺たち犬よりも体が柔らかい。だからといってこんな場所まで柔らかいとは思えないが、人差し指と中指を広げても痛がる様子はなかった。それどころか濡れた中が指に纏わりつくように動いている。
「も、尻、いじるなってっ」
うつ伏せで尻だけ高く上げたまま、涙目の顔を向けてくる。小さいながらもしなやかに反る背中と、それを遮るように揺れている白と黒の尻尾に思わず口を開いていた。
カプ。
揺れている尻尾の先端を甘噛みした途端に「にゃがっ」という聞き慣れない悲鳴が聞こえた。見れば倍の大きさに見えるほど尻尾の毛を逆立てている。
「なに、しやがるっ!」
「あぁ、すまない。ちょっとおいしそうだったから」
「おま、マジでスプラッタに、する気、かよっ」
「おまえだってよく噛むだろう?」
そう言ってやれば、涙目でグッと唇を噛み締めた。
(まぁ、猫が噛みつくのは普通か)
それにしては噛みすぎのような気もする。お菓子の食べ過ぎだと取り上げれば手の甲に噛みつき、ちゃんと服を着ろと裾を引っ張れば腕に噛みつく。寝ているときに肩を噛まれたこともあった。
(そういえば、猫が噛みつくのは愛情表現だと聞いたことがあったな)
目の前でプルプルと体を震わせている猫を見る。やけに噛みつくなと思っていたが、もしかしてそういうことだったのだろうか。
「……なるほど」
猫がツンデレと言われるのがわかった気がした。超大型犬の俺に噛みつくとはいい度胸だと思っていたが、違う意味で噛みついていたのだとしたら……。
(それはそれでおもしろい)
種族は違うものの、犬と猫の共存区域ができてからは猫と番う犬も少しずつ増えている。これだけ体格が違うといろいろ心配になるが、一度試してみてから考えればいいだろう。
「腰をもっと上げろ」
「な、んだよ」
「あぁ、いい。俺が持ち上げたほうが早い」
「は? ……って、何しやが、っ!?」
掴んだ腰は俺の両手にすっぽり収まりそうな細さだ。これで本当に大丈夫か心配になるが、そのまま膝立ちしている俺の腰まで尻たぶを持ち上げる。そうして熱くほぐれた後ろに先端をググッと押し込めた。
「ひ、ひぃっ」
「……まだ、少しきつかったか」
「っ、っ!」
茶色の髪が無理だと言うようにブンブン揺れている。シーツを掴む指に力が入っているのは節を見てわかった。腰を持ち上げられ中途半端に曲がったままの膝では力が入らないらしく、足の指はベッドを力なく引っ掻いている。
「すぐによくしてやる」
すっかりへたれてしまった耳を見ると可哀想な気もしたが、ある程度のところまで試してみなければ先に進めない。そう思いながら右手を腹に回して腰を支え、自由になった左手で尻尾の付け根をパンと叩いた。
「ひゃっ!」
聞いていたとおりだ。猫は尻尾の付け根を叩かれると気持ちいいらしい。なかには嫌がる猫もいるそうだが、続けて叩いても甘い声で鳴くということはやはり気持ちがいいのだろう。
「ひゃっ、なに、やめ、やだ、そこ叩いたら、だめ、って」
「気持ちよくないか?」
「そういう、ことじゃ、なくって、ひゃっ! ひゃ、んにゃっ」
やめろと言う割には尻尾がピンと立っている。おかげで俺を咥えている場所がよく見えた。
「なんというか……エロいな」
小さな穴がめいっぱい広がっている様はエロいとしか言いようがない。そう思いながらじっと見ていたからか、俺のものが一回り大きくなってしまった。
「ひぐっ!」
「あぁ、すまない。全部は入れないから安心しろ」
まずは尻で気持ちよくなれるようにしなければ。犬も猫も最初の躾が肝心なのは変わらない。まずは俺のものが気持ちいいと覚えさせるのが先決だ。
「ぃっ、うご、くなって、ひっ、ひぃ!」
「たしかこの辺りに……」
小さすぎてあまり動けないため、ニャン太の体のほうを少しずつ動かして探りを入れる。
「っ!?」
「……ここか」
見つけた。思っていたよりも手前で通り過ぎていたらしい。ゆっくりと俺のものを引き、雄でも感じるところにカリ首を押しつけるようにゆっくりと擦る。
「ひっ、なに、ひゃっ、なにこれっ」
「一発目から感じるとはな。やはり発情期だからか?」
「待って、そこ変だか、らぁっ。ひっ、ひぃっ、やだ、にゃにっ、ひんっ!」
ほんの少しニャン太の体を揺らしただけなのに盛大に鳴き始めた。気のせいでなければ中もいい感じにうねっている。これなら全部入れられる日も近いかもしれない。
「さぁ、俺ので気持ちよくなろうな」
「やだっ、やめ、そこゴリゴリ、しにゃ、でぇ!」
「嘘はいけない。体は気持ちいいと濡れまくりだぞ?」
「ちがっ、んなこと、あるわけ、にゃ……っ!」
少し強く押し潰すと小柄な体がブルブルと震えだした。左手でニャン太の股間を探ればトロトロとひっきりなしに子種を垂らしている。
「イッてるじゃないか」
あまりに早い射精に驚かされたが、発情期だからだろうか。どちらにしても相性は悪くないようだ。問題は体格差だが、そのうち何とかなりそうな気がする。
「同じ犬同士でも怖がられてきた俺だが、おまえなら大丈夫そうだな」
かつての恋人たちを思い出すと、ベッドの上で青ざめていた顔ばかりが浮かんできた。俺のものは同じ犬でも恐怖だったのだろう。ベッドの上だけじゃない。出かけても食事をしていても「楽しい?」と聞かれることのほうが多かった。
(楽しくないわけじゃなかったんだがな)
それでもニャン太と暮らし始めて、ようやく楽しさの意味がわかった。穏やかな日常ではなくなったが、忙しない姿を見るだけで楽しくなる。面倒だと思っていてもおもしろさが上回った。
(それに、ニャン太は面倒くさい性格の俺を受け入れてくれている)
俺が口うるさく言っても噛むか殴るか程度で出て行ったりはしない。俺が作る食事もおいしそうに食べる。風呂は嫌だと言いながらも毎日入り、寝るときはぴったりくっついてきた。
いまだってそうだ。嫌だと頭を振りながらもこうして受け入れ、前も後ろもたっぷりと感じてくれている。「毎日ほぐせば全部入る日も近いな」と思いながら、先端だけ入れたままビュッと吐き出した。
「……しまった、ついそのまま出してしまった」
猫と違って犬の射精は長い。ただでさえ苦しいだろうに、先端だけしか入っていないとはいえ十分ほどこの状態が続くのはつらいはずだ。
さすがに謝っておくかと「ニャン太」と声をかけたが反応がなかった。見れば両手はだらりとベッドに伸びていて、枕に頬を埋めている頭も動いていない。
「気絶させてしまったか」
おそらく初めての行為だったのだろう。挿入する前も一度イッていたし、中で感じながらイッたのなら疲れてしまっても仕方がない。
そもそも腹を抱えながら突っ込むこの体勢がよくなかったのかもしれない。ニャン太にとっては尻を吊り上げられているようなものだし、不安定で集中できなかっただろう。
「最初は座位のほうがいいか」
それなら俺も支えやすいし安定感も増す。温かな体を抱きしめながらというのも悪くない。問題は奥に入りすぎることだが、少しずつ慣らしながらやれば何とかなるだろう。
「ま、追々だな」
そのまま射精が終わるのを待ち、もう一度一緒に風呂に入ってから整え直したベッドで眠った。
・ ・
「おまえっ、自分がバカでかいこと忘れてんだろっ!」
翌日、昼前に起きたニャン太は俺を見るなりそう怒鳴った。
「忘れるわけないだろう。もちろんペニスが大きいこともわかっている」
「お、おま……っ!」
ニャン太の顔が真っ赤になった。完熟したトマトのような顔を見ているとトマトソースのパスタが食べたくなる。
「ミネストローネでもいいか」
「何の話だよっ! ってか、俺の話聞いてんのか!?」
「聞いている。昨夜は抜くだけの話がなぜ突っ込んだんだという話だろう? 抜くだけだと言ったのはニャン太のほうで、俺は最初から相手をすると言っていたはずだが?」
「だ、だからって……っ」
真っ赤な顔のまま少し俯き唇を噛み締めている。嫌がっているわけではなさそうだが、この怒りようというのは……。
「恥ずかしいのか」
「言うなよ! おまえ最悪だなっ!」
「発情期なんだから恥ずかしがる必要はない。それに猫の発情期は秋頃まで続くぞ? 毎回恥ずかしがるつもりか?」
「犬だって似たようなもんだろうが!」
「時期はほぼ同じだが、その間二回程度しか来ない。それに比べて猫は頻繁に発情する。毎回恥ずかしがっていたら大変だと思うが?」
またもや唇を噛んだニャン太が、ぼそっと「初めてだったのに」とつぶやいた。
「やはり初めてだったか」
今度は噛みついてこなかった。首まで真っ赤になった肌がおいしそうで、少しだけ喉が鳴りそうになる。
(犬が強く好意を抱いた相手を噛みたくなるのは本当みたいだな)
てっきり都市伝説だと思っていたが、どうやら本当だったらしい。
(つぎはうなじを噛んでみるか)
猫は交わるときにうなじを噛むと聞いている。そんなことをしたことはないが、犬としても支配欲が高まって快感が増すに違いない。
(なるほど、支配欲か)
自分が抱いている感情の根源がわかったような気がした。それに自分のものにしておきたいという欲求も感じる。つまり、俺はニャン太に強い好意を抱いているということだ。しかも番いたいという類いの好意だ。
真っ赤に茹だったニャン太の体を抱き寄せると、わずかにピクッと反応したが噛みついたり叩いたりすることはなかった。それに少しだけ笑みをこぼしつつ、腰を屈めて耳元に口を寄せる。
「大丈夫だ。責任を取って今後の発情も相手をしてやる」
そうしていつもニャン太にされているような甘噛みの要領で、耳の先端をカリッと噛んだ。
「っ!?」
ビクッと派手に跳ねた小柄な体が腕の中から飛び退くように離れた。見れば噛んだ左耳を両手で押さえながら真っ赤な顔で俺を見ている。見開いた緑色の目が光って見えるのは、恥ずかしさか興奮で潤んでいるからだろう。
(なるほど、噛むのは楽しいものだな)
これはいいことに気がついた。今後は俺もニャン太を甘噛みすることにしよう。これまで噛みつかれ叩かれてきたささやかなお返しにもなる。
「さ、昼飯にするぞ」
冷蔵庫に熟したトマトがあったはず。それでミネストローネを作ろう。パンにはニャン太が好きな苺ジャムとたっぷりのバターを載せるか。そんなことを考えながら、少し浮き足立った足でキッチンへと向かった。
「そう言ったのはおまえだ。俺は相手をすると言ったはずだが?」
「ひぃっ」
小さいながらも必死に勃起しているものを左手で擦ると、小柄な体がおもしろいようにビクンと跳ねた。前で感じさせながら、後ろに突っ込んだ右の人差し指と中指をグチュグチュと動かす。
(そろそろいいか)
発情期だからか思っていたよりも早くほぐれた。それとも猫だからだろうか。
猫は俺たち犬よりも体が柔らかい。だからといってこんな場所まで柔らかいとは思えないが、人差し指と中指を広げても痛がる様子はなかった。それどころか濡れた中が指に纏わりつくように動いている。
「も、尻、いじるなってっ」
うつ伏せで尻だけ高く上げたまま、涙目の顔を向けてくる。小さいながらもしなやかに反る背中と、それを遮るように揺れている白と黒の尻尾に思わず口を開いていた。
カプ。
揺れている尻尾の先端を甘噛みした途端に「にゃがっ」という聞き慣れない悲鳴が聞こえた。見れば倍の大きさに見えるほど尻尾の毛を逆立てている。
「なに、しやがるっ!」
「あぁ、すまない。ちょっとおいしそうだったから」
「おま、マジでスプラッタに、する気、かよっ」
「おまえだってよく噛むだろう?」
そう言ってやれば、涙目でグッと唇を噛み締めた。
(まぁ、猫が噛みつくのは普通か)
それにしては噛みすぎのような気もする。お菓子の食べ過ぎだと取り上げれば手の甲に噛みつき、ちゃんと服を着ろと裾を引っ張れば腕に噛みつく。寝ているときに肩を噛まれたこともあった。
(そういえば、猫が噛みつくのは愛情表現だと聞いたことがあったな)
目の前でプルプルと体を震わせている猫を見る。やけに噛みつくなと思っていたが、もしかしてそういうことだったのだろうか。
「……なるほど」
猫がツンデレと言われるのがわかった気がした。超大型犬の俺に噛みつくとはいい度胸だと思っていたが、違う意味で噛みついていたのだとしたら……。
(それはそれでおもしろい)
種族は違うものの、犬と猫の共存区域ができてからは猫と番う犬も少しずつ増えている。これだけ体格が違うといろいろ心配になるが、一度試してみてから考えればいいだろう。
「腰をもっと上げろ」
「な、んだよ」
「あぁ、いい。俺が持ち上げたほうが早い」
「は? ……って、何しやが、っ!?」
掴んだ腰は俺の両手にすっぽり収まりそうな細さだ。これで本当に大丈夫か心配になるが、そのまま膝立ちしている俺の腰まで尻たぶを持ち上げる。そうして熱くほぐれた後ろに先端をググッと押し込めた。
「ひ、ひぃっ」
「……まだ、少しきつかったか」
「っ、っ!」
茶色の髪が無理だと言うようにブンブン揺れている。シーツを掴む指に力が入っているのは節を見てわかった。腰を持ち上げられ中途半端に曲がったままの膝では力が入らないらしく、足の指はベッドを力なく引っ掻いている。
「すぐによくしてやる」
すっかりへたれてしまった耳を見ると可哀想な気もしたが、ある程度のところまで試してみなければ先に進めない。そう思いながら右手を腹に回して腰を支え、自由になった左手で尻尾の付け根をパンと叩いた。
「ひゃっ!」
聞いていたとおりだ。猫は尻尾の付け根を叩かれると気持ちいいらしい。なかには嫌がる猫もいるそうだが、続けて叩いても甘い声で鳴くということはやはり気持ちがいいのだろう。
「ひゃっ、なに、やめ、やだ、そこ叩いたら、だめ、って」
「気持ちよくないか?」
「そういう、ことじゃ、なくって、ひゃっ! ひゃ、んにゃっ」
やめろと言う割には尻尾がピンと立っている。おかげで俺を咥えている場所がよく見えた。
「なんというか……エロいな」
小さな穴がめいっぱい広がっている様はエロいとしか言いようがない。そう思いながらじっと見ていたからか、俺のものが一回り大きくなってしまった。
「ひぐっ!」
「あぁ、すまない。全部は入れないから安心しろ」
まずは尻で気持ちよくなれるようにしなければ。犬も猫も最初の躾が肝心なのは変わらない。まずは俺のものが気持ちいいと覚えさせるのが先決だ。
「ぃっ、うご、くなって、ひっ、ひぃ!」
「たしかこの辺りに……」
小さすぎてあまり動けないため、ニャン太の体のほうを少しずつ動かして探りを入れる。
「っ!?」
「……ここか」
見つけた。思っていたよりも手前で通り過ぎていたらしい。ゆっくりと俺のものを引き、雄でも感じるところにカリ首を押しつけるようにゆっくりと擦る。
「ひっ、なに、ひゃっ、なにこれっ」
「一発目から感じるとはな。やはり発情期だからか?」
「待って、そこ変だか、らぁっ。ひっ、ひぃっ、やだ、にゃにっ、ひんっ!」
ほんの少しニャン太の体を揺らしただけなのに盛大に鳴き始めた。気のせいでなければ中もいい感じにうねっている。これなら全部入れられる日も近いかもしれない。
「さぁ、俺ので気持ちよくなろうな」
「やだっ、やめ、そこゴリゴリ、しにゃ、でぇ!」
「嘘はいけない。体は気持ちいいと濡れまくりだぞ?」
「ちがっ、んなこと、あるわけ、にゃ……っ!」
少し強く押し潰すと小柄な体がブルブルと震えだした。左手でニャン太の股間を探ればトロトロとひっきりなしに子種を垂らしている。
「イッてるじゃないか」
あまりに早い射精に驚かされたが、発情期だからだろうか。どちらにしても相性は悪くないようだ。問題は体格差だが、そのうち何とかなりそうな気がする。
「同じ犬同士でも怖がられてきた俺だが、おまえなら大丈夫そうだな」
かつての恋人たちを思い出すと、ベッドの上で青ざめていた顔ばかりが浮かんできた。俺のものは同じ犬でも恐怖だったのだろう。ベッドの上だけじゃない。出かけても食事をしていても「楽しい?」と聞かれることのほうが多かった。
(楽しくないわけじゃなかったんだがな)
それでもニャン太と暮らし始めて、ようやく楽しさの意味がわかった。穏やかな日常ではなくなったが、忙しない姿を見るだけで楽しくなる。面倒だと思っていてもおもしろさが上回った。
(それに、ニャン太は面倒くさい性格の俺を受け入れてくれている)
俺が口うるさく言っても噛むか殴るか程度で出て行ったりはしない。俺が作る食事もおいしそうに食べる。風呂は嫌だと言いながらも毎日入り、寝るときはぴったりくっついてきた。
いまだってそうだ。嫌だと頭を振りながらもこうして受け入れ、前も後ろもたっぷりと感じてくれている。「毎日ほぐせば全部入る日も近いな」と思いながら、先端だけ入れたままビュッと吐き出した。
「……しまった、ついそのまま出してしまった」
猫と違って犬の射精は長い。ただでさえ苦しいだろうに、先端だけしか入っていないとはいえ十分ほどこの状態が続くのはつらいはずだ。
さすがに謝っておくかと「ニャン太」と声をかけたが反応がなかった。見れば両手はだらりとベッドに伸びていて、枕に頬を埋めている頭も動いていない。
「気絶させてしまったか」
おそらく初めての行為だったのだろう。挿入する前も一度イッていたし、中で感じながらイッたのなら疲れてしまっても仕方がない。
そもそも腹を抱えながら突っ込むこの体勢がよくなかったのかもしれない。ニャン太にとっては尻を吊り上げられているようなものだし、不安定で集中できなかっただろう。
「最初は座位のほうがいいか」
それなら俺も支えやすいし安定感も増す。温かな体を抱きしめながらというのも悪くない。問題は奥に入りすぎることだが、少しずつ慣らしながらやれば何とかなるだろう。
「ま、追々だな」
そのまま射精が終わるのを待ち、もう一度一緒に風呂に入ってから整え直したベッドで眠った。
・ ・
「おまえっ、自分がバカでかいこと忘れてんだろっ!」
翌日、昼前に起きたニャン太は俺を見るなりそう怒鳴った。
「忘れるわけないだろう。もちろんペニスが大きいこともわかっている」
「お、おま……っ!」
ニャン太の顔が真っ赤になった。完熟したトマトのような顔を見ているとトマトソースのパスタが食べたくなる。
「ミネストローネでもいいか」
「何の話だよっ! ってか、俺の話聞いてんのか!?」
「聞いている。昨夜は抜くだけの話がなぜ突っ込んだんだという話だろう? 抜くだけだと言ったのはニャン太のほうで、俺は最初から相手をすると言っていたはずだが?」
「だ、だからって……っ」
真っ赤な顔のまま少し俯き唇を噛み締めている。嫌がっているわけではなさそうだが、この怒りようというのは……。
「恥ずかしいのか」
「言うなよ! おまえ最悪だなっ!」
「発情期なんだから恥ずかしがる必要はない。それに猫の発情期は秋頃まで続くぞ? 毎回恥ずかしがるつもりか?」
「犬だって似たようなもんだろうが!」
「時期はほぼ同じだが、その間二回程度しか来ない。それに比べて猫は頻繁に発情する。毎回恥ずかしがっていたら大変だと思うが?」
またもや唇を噛んだニャン太が、ぼそっと「初めてだったのに」とつぶやいた。
「やはり初めてだったか」
今度は噛みついてこなかった。首まで真っ赤になった肌がおいしそうで、少しだけ喉が鳴りそうになる。
(犬が強く好意を抱いた相手を噛みたくなるのは本当みたいだな)
てっきり都市伝説だと思っていたが、どうやら本当だったらしい。
(つぎはうなじを噛んでみるか)
猫は交わるときにうなじを噛むと聞いている。そんなことをしたことはないが、犬としても支配欲が高まって快感が増すに違いない。
(なるほど、支配欲か)
自分が抱いている感情の根源がわかったような気がした。それに自分のものにしておきたいという欲求も感じる。つまり、俺はニャン太に強い好意を抱いているということだ。しかも番いたいという類いの好意だ。
真っ赤に茹だったニャン太の体を抱き寄せると、わずかにピクッと反応したが噛みついたり叩いたりすることはなかった。それに少しだけ笑みをこぼしつつ、腰を屈めて耳元に口を寄せる。
「大丈夫だ。責任を取って今後の発情も相手をしてやる」
そうしていつもニャン太にされているような甘噛みの要領で、耳の先端をカリッと噛んだ。
「っ!?」
ビクッと派手に跳ねた小柄な体が腕の中から飛び退くように離れた。見れば噛んだ左耳を両手で押さえながら真っ赤な顔で俺を見ている。見開いた緑色の目が光って見えるのは、恥ずかしさか興奮で潤んでいるからだろう。
(なるほど、噛むのは楽しいものだな)
これはいいことに気がついた。今後は俺もニャン太を甘噛みすることにしよう。これまで噛みつかれ叩かれてきたささやかなお返しにもなる。
「さ、昼飯にするぞ」
冷蔵庫に熟したトマトがあったはず。それでミネストローネを作ろう。パンにはニャン太が好きな苺ジャムとたっぷりのバターを載せるか。そんなことを考えながら、少し浮き足立った足でキッチンへと向かった。
43
お気に入りに追加
215
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
魔力補給のためには生ハメセックスがいいって言われたから
多崎リクト
BL
『その世界において異世界人は魔力の無限貯蔵庫として奇跡の存在だ。絶対数の少ない彼等を巡って争いも少なくなく、ついに国家間での自国に現れた異世界人はその国から動かしてはならないという条約が結ばれた。
ある日世界でも類を見ない優秀な魔法使いが、ある野望を叶えるために異世界人を召喚した。それは未だ誰もなし得なかった奇跡。
そして召喚されたのが――――』
召喚された大学生(19)×それを召喚した美人天才魔法使い(25)のアホエロ
同一設定で書いた企画ものです!
ムーンライトノベルズさんと自サイトにも掲載中。
【R18】満たされぬ俺の番はイケメン獣人だった
佐伯亜美
BL
この世界は獣人と人間が共生している。
それ以外は現実と大きな違いがない世界の片隅で起きたラブストーリー。
その見た目から女性に不自由することのない人生を歩んできた俺は、今日も満たされぬ心を埋めようと行きずりの恋に身を投じていた。
その帰り道、今月から部下となったイケメン狼族のシモンと出会う。
「なんで……嘘つくんですか?」
今まで誰にも話したことの無い俺の秘密を見透かしたように言うシモンと、俺は身体を重ねることになった。
ぼくは男なのにイケメンの獣人から愛されてヤバい!!【完結】
ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。
眠れぬ夜の召喚先は王子のベッドの中でした……抱き枕の俺は、今日も彼に愛されてます。
櫻坂 真紀
BL
眠れぬ夜、突然眩しい光に吸い込まれた俺。
次に目を開けたら、そこは誰かのベッドの上で……っていうか、男の腕の中!?
俺を抱き締めていた彼は、この国の王子だと名乗る。
そんな彼の願いは……俺に、夜の相手をして欲しい、というもので──?
【全10話で完結です。R18のお話には※を付けてます。】
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?
【短編】ハイエナくんは実は
cyan
BL
読み切り短編、完結済みです。
ハイエナ獣人のフェアトはハイエナという種族に生まれたせいでみんなから嫌われていた。拾った落とし物を届けただけで盗んだと言われ罵倒される。
それでもフェアトは恥ずかしくない生き方をしたいと思っていた。
そんなある日、黒豹のライデンシャフトを街で見かけた。彼は何もしなくても人気者なのに、街で困っているおばあさんを助けていたんだ。そこからフェアトはライデンシャフトのことを目で追うようになる。
ある日ライデンシャフトに声をかけられて家に連れて行かれ……
フェアトの苦悩の日々が始まる。
※シリアスなし、基本ほのぼの
親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話
gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、
立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。
タイトルそのままですみません。
屈強冒険者のおっさんが自分に執着する美形名門貴族との結婚を反対してもらうために直訴する話
信号六
BL
屈強な冒険者が一夜の遊びのつもりでひっかけた美形青年に執着され追い回されます。どうしても逃げ切りたい屈強冒険者が助けを求めたのは……?
美形名門貴族青年×屈強男性受け。
以前Twitterで呟いた話の短編小説版です。
(ムーンライトノベルズ、pixivにも載せています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる