装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

911 まるでドラマみたいな登場の仕方は主人公

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「――ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」

 耳を擘くけたたましい咆哮。
 巨大な竜の牙が俺とトウテツを丸呑みにしようと迫っていた。

 ……エメラルドグリーン。
 飲み込まれる最中、輝く竜の鱗が少しだけ見える。

 この色には、見覚えがある。
 さらに、鳴き声にも聞き覚えがあった。

「ヌッ!?」

 バクンッ、と勢いよく閉じられた顎をギリギリで躱すトウテツ。
 後ろ飛びで宙を舞ったその一瞬の隙をついて、後ろで編み込んだサラサラの金髪を持つ少年が肉薄した。

「その薄汚い手を離して貰おうか、トウテツ」

「ぬおっ!?」

 少年が身長よりも長い六尺棒をトウテツの腕に打ち付ける。
 すると、トウテツの顔が痛みに歪み、痺れてしまったように腕の力が抜けた。
 激しく動いた勢いのままに、俺はすっぽりとトウテツの手から解放される。

「わーっ」

「ギャオッ!」

 そして、すっとんだ俺の襟元を小さな竜が咥えてキャッチした。

「…………チビ……ウィンスト!!!!!」

 俺がずっと探し回っていた二人。
 この土壇場で……このギリギリの場面で……ようやく。

 ようやく、再会できた!!

「すまないトウジ、遅くなってしまった」

 宙を蹴ってトウテツから距離を取り、俺とチビの元へ駆け寄るウィンスト。

「死ぬかと思った! 死ぬがどおぼっだ!!!!!」

 やばい、泣きそう。
 いや泣いている。
 この展開は予想できていなかった。

「それにしても、しばらく合わない間に随分と見違えたもんだ」

「これはビシャスの……って、あれ? なんでウィンストは若返ってないんだ?」

 赤ちゃん返りしてしまった俺と比べて、ウィンストは以前のままだ。
 むしろ前にも増して髪がかなりサラサラになっているような気もする。

「なるほどそう言うことか」

 俺の言葉から色々と汲み取ったウィンストは言う。

「私の生きてきた年月は、そもそも100年200年じゃ済まないからだろうな」

「あっ」

 つまりは、どれだけあの簡易式エンチャント・ダンジョンコアの能力が働こうとも意味がないのだ。
 彼は俺の数十倍以上の年月を過ごしてきていたのだから。

 あのエンチャント・ダンジョンコアは、俺みたいな人間には通用する。
 しかし、寿命を遥かに超越したような存在にはあまり意味のない仕様だってわけだ。

 一応装備のレベルとかも下がってると思うのだが……。
 恐らくそれはトウテツも同じだから、ダンジョンコアクラスの化物にも対抗しうるのだろう。

「チビは?」

「魂はガイアドラゴンだからな、そもそも寿命なんて存在しない」

「あっ」

 これはとんでもない味方が来てくれたもんだ。
 奇跡だな、まさに。

「ポチたちがいないのも、レベルが1になっているからか?」

「うん」

「なるほど……厄介な力を使われたものだ。トウジ、ここは私に任せてほしい」

「助かる」

 任せることしか現状できないから、本当にありがたい。

「ちなみにさ、ウィンスト」

「む?」

「今までどこに行ってたんだ? ずっと探してたんだが、サルトにはいなかったし」

「それについては約束を破ってしまって申し訳ないと思っている」

「いやいや」

 ウィンストのことだ、何か事情があって留守にしていた。
 理由を言えないのならば俺はそれで良い。
 今こうして実際に再会することができたんだからね。

「この件とも少し関わりがあるのだが……詳しい話はあとにしよう——!」

 そんな話をしている最中、俺たちの元に突風のような衝撃。

「ヌハッ、復活して間もないとは言えど、見事な一撃だったぞ」

 ウィンストに一撃をもらった右腕をグーパーしながら、殺気を剥き出しにしたトウテツが迫っていた。
 顔を綻ばせながらも、その威圧感は俺に向けていたもの以上に膨れ上がっている。

 強敵を前にして、どことなく楽しそうな雰囲気。
 アローガンスも、トウテツのことをたいして嫌ってなかったっけなあ……?

「名を聞こう」

「ウィンスト。トウジにトガルの守護を仰せつかった……ゴブリンだ」

「ヌハハッ!」

 ゴブリンだと聞いたトウテツは、大口を開けて笑い始めた。

「ゴブリンだと? その姿で? ヌハハハハハハッ! やはりわしの推測はあっとった!」

「話がよく見えないが、何を笑っている」

「いや、こっちの話だ」

 ボッ、といつもキングさんがやるようにトウテツの姿が消えて俺たちの目の前に現れる。
 強烈な拳の一撃を目で追うことは不可能。
 気付けば、ウィンストが長い杖でその拳を受け止めてお返しとばかりに火ダルマにしていた。

「カアッ! ウィンスト……その姿は、まるで人じゃないか」

 全身にまとわりつく炎を気合でかき消したトウテツは嬉々としながら尋ねる。

「お前はいつからその姿になった?」

「さあな、遠い昔のことだ、もう覚えていない」

 ウィンストは何重にも折り重なった魔法陣を形成しながら言葉を返す。

「私が一番大事なのは、今だ——複合魔法《太古の礎》」

 なんかかっこいい言葉を呟いたと思ったら、大量の魔法陣がトウテツを囲った。
 魔法陣の中で灼熱やら極寒やら雷やら大雨やら竜巻やら……なんかすごいことになっている。
 や、ヤバそう。

「ヌフフ、やはりそうか、そうかそうか……そうかそうかそうか!」

 そしてその渦中でも笑顔を崩さずに、耐えているトウテツ。
 俺も強くなったと思っていたけど、井の中の蛙だったのかもしれない。

 なんかインフレしてないか?
 俺は弱体化したって言うのに。

 そりゃそうか、俺が強くなっていくように。
 周りも強くなっていくもんだ。
 この世界はレベルという概念の存在する世界なのだから……。

「ヌハァアアアアーーッ! やはり、欲しい! 欲しいぞ人の血が! その因子!」











=====
トウジ「俺も必殺技みたいなのほしいなあ……」




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いる限り

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たくさんの感想ありがとうございます。
設定した目標を達成できたら掛け合ってみます。
もう本を買ってる方もいると思いますので
サイン本と言うよりは、もうちょっと豪華な形でできたらと思っています。

細かい話はツイッターや配信で話せたら良いなと思います。
書くモチベが上がっていますので、今月は毎日更新します。

毎日更新、応援よろしくお願いします。
いや、いつも応援のほどをありがとうございます!
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