223 / 682
本編
492 思ったよりも多かった業務
しおりを挟む「お久しぶりです、トウジさん」
「どうも」
それから職員室へ向かうと、アシュレイ先生が対応してくれた。
変わらず、なんとも小柄で可愛らしい先生だこと。
「こちらです。一先ず学校の内の案内から行いますので」
「はい」
マップ機能に構内図をしっかり登録しておいたのだけど。
自分の目で見て場所を覚えるのは重要なことだ。
いちいちマップ開いて、とかすごく面倒なのである。
「……どうしたんですか? 右足引きずってますけど?」
「いえ、お気になさらず」
ポチに蹴ったり噛まれたりしたところである。
割と本気で噛みつきやがって。
女子学生のパンツの色を聞いて本当にすいませんでした。
色は分からず仕舞いだが、ギャルのパンツってツルツルテカテカしたやつだろ?
偏見が込められた意見、異論は認めるぞ、語り明かそうじゃないか。
さて、そんなどうでも良く、かつ一部のマニアにはどうでも良くない話は置いといて。
「俺、何するんですか? とりあえず気楽に言ってくれみたいな感じで言われたんですけど」
「え? ギルド側で説明受けてないんですか?」
「え?」
説明ってソレイル側でやってくれるんじゃないの?
あの受付嬢め。
リゾート行けるからってその辺すっ飛ばしたな……。
「とりあえず、校内を案内しながらご説明しますね」
「お願いします。すいません本当」
「いえいえ、結構やること多いですからこの場で説明しますね」
そんな訳で、ソレイル王立総合学院で俺が何をすれば良いのかを聞いた。
まず今日のお昼前にちょうど学院集会が行われる。
その時、新任として冒険者の先生が来てくれましたと挨拶。
「挨拶……なんか緊張するなあ……」
「大丈夫ですよ。生徒総数1000人超えますけど、大丈夫です」
全然大丈夫じゃなかった。
とんだマンモス校だな!
さすがはギリス首都随一の学校。
通っている生徒は、平民や貴族の子供から大人まで十人十色。
はたして俺みたいな一介の冒険者が前に立って挨拶して良いものか……。
「その後は、基本的には補講や自主参加での講義を行っていただきます」
「冒険者の講義……うーん、ピンとこない……」
ガチ物の講義とかやらされたらたまったもんじゃない。
うら若き乙女と絡めるが、その分ストレスも多そうだ。
安請け合いしなきゃよかった、と少しだけ後悔する。
なんでこう、お金になびいてしまうのやら……。
「ォン」
「ん?」
ポチに腰をチョンチョンと突かれて視線を向けると。
俗物変態野郎と書かれた板を持っていた。
クソが!
よくわからんタイミングで心を見透かすようにボケやがって!
「ほっぺグニグニの刑だ、このこのこのこの!」
「アォンアォンアォンアォン!?」
「ちょ、ちょっとトウジさん! ポチちゃん可哀想ですよ!」
「あ、言えこれはコミュニケーション的なものっていうか、その……」
「くぅん」
ひしっ。
「生徒が真似したら困りますので、そういうことはお控えくださいね!」
「は、はい……」
ぐぬぬぬぬぬぬぬ!
ぐぬぬ、むきぃー!
まあ良い、今日は許してやる。
次やったら、枕にするぞ。
抱き枕じゃなくて、普通の枕だ。
「後はそうですね……基本的に課外授業以外は、指定時間における校内の見回り、校外校内の清掃、破損箇所の保全、各部活動の監督、そして宿直などを行ってもらいます」
「えっ!? そ、そんなに!?」
矢継ぎ早に出てくる言葉は、俺の想像していたよりもめちゃくちゃ多かった。
ほとんど用務員さんがやる仕事だけど、それを俺がやるの!?
「ええ、新学期になって実際にスタートした際、担当していただく冒険者の皆さんにはその他雑務も含めた依頼という形式にてお願いいたしますから、学校の警備やら手が回っていない保全活動を主だって行っていただくんですよ?」
「聞いてないです」
「えっと、一応上に確認しておきますけど……私はそう聞きましたね?」
「そ、そうなんですか……」
契約書類を見ておくんだった、こういうことなら。
いつもは詳しく話を聞かせてくださいっていうけども、まさかこんなに業務が多いとは……。
外での依頼とかじゃない、街中依頼なだけに油断していた。
失態である。
「りょ、了解です……上の人には特に確認とか、大丈夫です……」
「良いんですか? 私も結構やること多いとは思ってるんですけど。ギルド側はトウジさんなら一人でできるって言ってまして、学院側もオーガから一度救ってくれたトウジさんなら、と信頼を寄せているのですよ」
「なるほど……」
おそらく、俺がずっとずーっと複数依頼を失敗することなくこなしているからだ。
ギルド側は俺の力量を評価し、これくらいならば余裕だと判断したのだろう。
複数とかパーティー単位で話を持ってこなかったのも、依頼報酬高かったらやるのをわかってるからだ。
してやられた気分だぜ。
せこい手を使って評価を得まくった代償が、ここに来てドッと押し寄せている形である。
巡り巡って、しっぺ返しが。
「大丈夫ですよ、トウジさん! 私もサポートしますから、一緒に頑張っていきましょう!」
「は、はい……」
先が思いやられるな。
しかし、馬鹿高い報酬はもらえる。
ギリスから出ることはないので他の作業も捗るだろう。
今はあちこち飛び回るよりも、俺の基盤を作り込む時だ。
「アッちゃんせんせ~! 誰それ隣の人? ついに彼氏できた?」
業務について話しながら歩いていると、鐘がなって生徒が廊下に出て来た。
そしてアシュレイを見るや否やニヤニヤしながらそう茶化す。
「アッちゃん先生、もう29歳だからそろそろ婚期だもんな?」
「がんば~!」
「ちっ、ちちち、違いますよ! この人は新しい先生です!」
「顔真っ赤だよー!」
「も、もう! 行きましょうトウジさん! 昼食の場所を教えますから!」
「あっはい」
顔を真っ赤にしたアシュレイに手を引かれるようにして、廊下を歩いていく。
ちなみにアシュレイの歳は29歳、俺の一つ下なんだそうだ。
この世界の寿命は俺のいた世界と変わらず、一般的な婚期は20~30の間。
なるほど、イグニールもそろそろ考え始める頃だったりするのかな?
41
お気に入りに追加
30,171
あなたにおすすめの小説
無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~
鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!
詳細は近況ボードに載せていきます!
「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」
特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。
しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。
バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて――
こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

スキルを得られない特殊体質の少年。祠を直したらユニークスキルもらえた(なんで??)
屯神 焔
ファンタジー
魔法が存在し、魔物が跋扈し、人々が剣を磨き戦う世界、『ミリオン』
この世界では自身の強さ、もしくは弱さを知られる『ステータス』が存在する。
そして、どんな人でも、亜人でも、動物でも、魔物でも、生まれつきスキルを授かる。
それは、平凡か希少か、1つか2つ以上か、そういった差はあれ不変の理だ。
しかし、この物語の主人公、ギル・フィオネットは、スキルを授からなかった。
正確には、どんなスキルも得られない体質だったのだ。
そんな彼は、田舎の小さな村で生まれ暮らしていた。
スキルを得られない体質の彼を、村は温かく迎え・・・はしなかった。
迫害はしなかったが、かといって歓迎もしなかった。
父親は彼の体質を知るや否や雲隠れし、母は長年の無理がたたり病気で亡くなった。
一人残された彼は、安い賃金で雑用をこなし、その日暮らしを続けていた。
そんな彼の唯一の日課は、村のはずれにある古びた小さな祠の掃除である。
毎日毎日、少しずつ、汚れをふき取り、欠けてしまった所を何とか直した。
そんなある日。
『ありがとう。君のおかげで私はここに取り残されずに済んだ。これは、せめてものお礼だ。君の好きなようにしてくれてかまわない。本当に、今までありがとう。』
「・・・・・・え?」
祠に宿っていた、太古の時代を支配していた古代龍が、感謝の言葉と祠とともに消えていった。
「祠が消えた?」
彼は、朝起きたばかりで寝ぼけていたため、最後の「ありがとう」しか聞こえていなかった。
「ま、いっか。」
この日から、彼の生活は一変する。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~
柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」
テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。
この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。
誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。
しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。
その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。
だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。
「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」
「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」
これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語
2月28日HOTランキング9位!
3月1日HOTランキング6位!
本当にありがとうございます!

5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。

ハイエルフの幼女は異世界をまったりと過ごしていく ~それを助ける過保護な転移者~
まぁ
ファンタジー
事故で亡くなった日本人、黒野大河はクロノとして異世界転移するはめに。
よし、神様からチートの力をもらって、無双だ!!!
ではなく、神様の世界で厳しい修行の末に力を手に入れやっとのことで異世界転移。
目的もない異世界生活だがすぐにハイエルフの幼女とであう。
なぜか、その子が気になり世話をすることに。
神様と修行した力でこっそり無双、もらった力で快適生活を。
邪神あり勇者あり冒険者あり迷宮もありの世界を幼女とポチ(犬?)で駆け抜けます。
PS
2/12 1章を書き上げました。あとは手直しをして終わりです。
とりあえず、この1章でメインストーリーはほぼ8割終わる予定です。
伸ばそうと思えば、5割程度終了といったとこでしょうか。
2章からはまったりと?、自由に異世界を生活していきます。
以前書いたことのある話で戦闘が面白かったと感想をもらいましたので、
1章最後は戦闘を長めに書いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。