装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

493 学校案内など。

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 それから、俺は食堂でアシュレイ先生と食事を取った後。
 午後イチの集会にて挨拶を行う。

『トウジ・アキノです。Aランク冒険者です。よろしくお願いします』

 声量を増幅し拡散させる魔導機器。
 つまるところのマイクに向かってそんな自己紹介。

「……普通だ」

「なんか地味」

「つまんな」

「弱そう」

 当然ながら、とんでもない数の生徒の前で話すのには勇気がいる。
 失敗しないように、安全策として簡潔な物を用意したのだが……。
 普通だの、地味だの、弱そうだの、つまんないだの……なんだよ。

 だいたいこんなもんだろうが!
 あーいるいる。
 学生時代の陽キャってすぐウケ狙いに走るよな?
 それが一番寒いんだってのって、ずっと思ってました。

「連れてるコボルト可愛くない?」

「うん、コボルト可愛い~!」

「むしろコボルトに教わりたいかも~?」

 対して、ただ俺の隣にいただけのポチはすごい人気だった。
 俺の後ろをてちてちついて来るだけでキャー。
 一緒に礼をするだけでキャー。
 そして、ちょっとでも手を振ってみればキャー。

 うら若き女子学生たちの黄色い声を一身に受ける。
 なんだろう、この扱いの差。
 最近活躍の機会少ないし、俺もマスコットになりたい。
 リアルガチのマジでそう思った。

「……ポチ、変身薬でたまに俺とお前変わる?」

「アォン」

 それはダメだろ、と首を振るポチ。
 くそぉ、よしよしされたい。
 イグニールにしてもらうのは恥ずかしいから却下。

 ちなみに、壇上に立った際、社会人クラスのマイヤーの顔も見えていた。
 俺が今場所にいることに目を丸くしていた。
 家に帰ったら質問ぜめされそうだな、こりゃ。

 挨拶が終わった後は、一通りどんな授業があるかを見て回る。
 俺のいた世界と変わらない様な語学、数学、社会学、地理学。
 それに追加して魔法学、魔物学とか、様々な分野があるそうだ。

「……これから募集する生え抜き冒険者の卵さんたちは、ダンジョン学も学ぶんですよ」

「ダンジョン学……?」

「ええ、アーティファクトとは切っても切れない縁を持つダンジョンに関する講義です! なので、トウジさんには冒険者という立場か見て来たダンジョンというのもについて、色々とアーティファクト研究科の生徒にお話していただければ、と思っているのですよ」

「なるほど」

 もともとアーティファクト研究の中に含まれていたものをより細分化、より専門的に。
 そうやってできたのが、ダンジョン学というものだ。
 冒険者のスポンサーとして、ダンジョン探索への支援を行う商会も多い。
 そのミニマム版的なものが、学院の中でも形作られようとしているのだろうな……。

「ダンジョンについては各所行ったことありますから大丈夫ですよ、できます」

「おお~! ちなみにどちらですか?」

「できたばかりのダンジョンが一つ、それと極彩諸島、断崖凍土、深淵樹海の三つですね、今の所」

「大迷宮を三つも経験してるなんて! とてつもない経験談になるじゃないですか!」

「そうですかね?」

「そうですよ! すごいですよ! 基本的には伝承にあるダンジョンの書物で生徒は勉強をするので、生の話を聞ける機会なんて滅多にありません。お金を積んでも、ダンジョンアタックする冒険者はなかなか講義に来てくれませんし……トウジさんが話を受けてくださって、心強いです!」

 冒険者を教職に挿げるのは、ある種そういう役割もあるのだろう。
 しかしながら、ギルドの職員だって元冒険者がやっていることは多い。
 それなりにピンチも切り抜けて来て、話もできると思うのだが……。

「おっ、体育だ」

 ぼんやり考えつつ廊下を歩きながら何気なく外を見るとグラウンドに生徒が集まっていた。
 指定の体操着に身を包んで、学生たちが体を動かしている。
 今はまだ寒い時期だから、みんな上から黒いジャージの様な衣類を身につけている様だ。

「良い勉学には健康な体が不可欠ですから、それなりに運動にも力を入れているんです」

「へえー、ごもっともですね」

「授業が終わったあとも、生徒主体で集まって特定分野でのスポーツや専門の研究を行うクラブ活動もありますよ。どんなクラブがあるのかは、その時になってからまた案内しますね」

「どうもです。しかし、寒そうですね」

 みんなジャージを身につけている中、足を出している女子生徒もいる。
 一応言っておくが、ブルマーではない。
 俺が学生の時、つけていた様なハーフパンツ型ではなく、短パン型。
 逆にエロいよな、逆に。

「ある程度の気温くらいならば、エンチャントされた糸を使った特別製なので問題ないですよ」

「おお、さすがは有名校」

 生徒用の食堂も、ポチがぉんぉんと頷く程度には美味しかったし質は高い。
 しかも、水とか飲み物がボタンを押せば使い捨てのコップに注がれる販売機もある。
 割と快適な空間なんじゃないかな、と思った。
 全てのクラスに冷暖房魔導機器が設置されて、ぶっちゃけ俺がいた学校よりいいぞ。

「あっ! トージせんせ~!」

 女子生徒の一人が手を振りながらこちらへかけてくる。
 あのギャル子ちゃんだった。
 エイミィだっけな、たしか。

「どうも」

「せんせ、新しくこの学校に来た先生だったんだ?」

「うん」

「冒険者を教えるとかヤバたんじゃん?」

「ヤバイね」

「講義メンドって思ったけど、せんせの授業は受けよっかなマジ絶対」

「それマジ?」

「うんマジマジ、絶対マジ」

「トウジさん……話通じてるんですか……?」

「ええ、まあ、多分」

 言葉のニュアンスはわからん訳でもない。
 サモンモンスター相手にする時とか、だいたいこんな感じだ。
 フィーリングだよ、フィーリング。

「もー、エイミィさんも授業中ですよ! サボっちゃいけません!」

「アッちゃんせんせ、今日めっちゃオシャレしてるじゃん」

「へ?」

「マジどうしたの? 狙い系? いつもはフリフリの服なんて着ないでジャージなのに」

「いやいやいや、これがいつもの私ですよ? 何言ってるんですか!」

「ふーん……とりま戻るから、トージせんせまた後でね! クラブの時に!」

「ほいほい」

 風の様に近づいてきたエイミィは、ポチをひとしきりもふもふするとまた風の様に授業に戻っていった。
 自由な子だな、と思う。
 遅刻してたし。

「トウジさん、私いつもこの格好ですからね? ジャージなんて着ないですよ? 本当です」

「……あっはい」

 教師なんて、大事な会議とか上司が来る時以外はだいたいジャージだ。
 別に気にする必要もないと思った。
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