プライベート・スペクタル

点一

文字の大きさ
上 下
99 / 146
第三話 第二章

第八節

しおりを挟む
名乗ると同時に踏み込むエイプリル。杖を構え接近戦を仕掛ける。
フッドもそれに応じた。
交差する杖とクロスボウ。武器の性質上、接近戦を仕掛けて来たフッドに初戦は驚いたエイプリルだったが、今は違う…これがフッドの戦闘スタイルである。
(見える。対応できます!)
互いに打ち合うエイプリルとフッド。
三笠との訓練。それにより向上した身体能力と基礎体術により以前では対応出来なかったフッドの動きに付いて行くことが出来る。
故に死角から放たれた毒矢も弾き飛ばすことが出来た。
「ッ!?」
「やあッ!」
蹴りを撃ち込んだエイプリル。防がれはしたがフッドを吹き飛ばした。
「マシになった……と上からで言っていたが撤回してやる。お前本当に10日前に這い蹲っていた奴か!?見違えたぜ!!」
「うぃ。全ては貴方を斃し超える為です!」
「良いね…狩り甲斐があるッ!!」
短剣を取り出したフッド。クロスボウとの二刀流で一気にエイプリルに距離を詰める。
そこで何かを察したエイプリル。足元に影達を展開させた。
「?」
『……将軍ッ、7時方向に半歩後退!そのまま左方向!』
「うぃ!」
狗の言葉通りに動くエイプリル。少々大仰と言えるほどの動作でフッドの攻撃を躱す。
更に躱しざまに影での反撃を与えた。
「!?」
『次ッ、屈みつつ数歩後退!』
また言葉通りに動くエイプリル。フッドの毒矢を後ろに跳ねる形で躱しつつ、反動の様に頭突きを見舞った。
『次ッ、その場から動かず軸だけずらしつつ反撃!きっとコイツは…』
「うぃ!クロスボウによる牽制ですね!」
「……っ!ああ……」
体軸をずらす形で矢を躱すエイプリル。
「そうか、成程な…」
そこで何かを察したフッドの言葉。エイプリルは用心し距離を取る。
「どうやって感じ取っていたのか?と少々首を捻ったが、ネタが分かればそれ程驚くことでは無いな…」
「……………」
「影を使って検知していたんだな。炭鉱のカナリアの様に…」
「うぃ、その通りです。貴方の見えない刃。無色無臭の毒ガスに対応する為には…」
「へぇ、気付いたか…」
それが不可解ともいえる挙動にて回避行動をとっていたエイプリルの理由であった。
先の白兵戦の折、密かに毒ガスをばら撒いていたフッド。
矢や短剣に塗られていたモノと同じく、少しでも人体に侵入させれば、行動不能になる神経毒。大和に使用した煙幕とは異なり見る事も嗅ぐことも出来ないそれを知らずの内に吸引させる事で斃す。
文字通りの初見殺しの一手である。
「先の戦いでの経験。そして数日前にお婆様と師匠の襲撃によりようやく理解出来た貴方の攻撃。理解は出来ましたがどうやって対応するかには苦労しましたが……狗さん達との協議により編み出させていただきました」
『そうさ!』
それが先のエイプリルの影の展開。能力によるセンサーである。
周囲に影を出し先行させることにより、どのあたりにガスが存在しているのかを認識。狗が伝える事により毒の危険領域を避けつつの戦闘を可能にしたのである。
『俺達は将軍の忠実な駒を自称しているが、言ってみればただの一能力。将軍が能力を解けば引っ込み回復する。身体を張っての見えない地雷に突っ込んでいく役としてこれ以上いねぇわな!!』
「うぃ、皆様をそのように使うのには少々気が引けますが……皆様がそのように仰っていただけたんです。でしたら皆様の心意気ありがたく使わせていただきます!」
『しかし、コイツでお前のとっておきは封じたぜ。前みたいに体術でゴリ押せない。肝心の毒はこの有様だ……さあ、どうする?』
そう問いかけた狗。フッドは一瞬目を見開いたかと思うと「ふぅ…」と長い息を吐いた。
「成る程…丁度お前とは能力的な相性はお前が天敵だったか……」
「そうかそうか…」と聞こえない声量で呟いたフッド。
そこで拳を挙げた。
「ッ!?」
「いや、単なる説明だよ。お前に言いたいことが幾つかあってな…」
指を一つ上げる。
「まず一つ、俺が毒ガス内でガスマスクも無しに自由に動けるのは…抗体や解毒剤がある訳でなく。この毒自体俺の体内で作りだしたものだからだ…能力的と言ったのは、それだ…」
「では貴方は毒を生み出す能力を持つ【星】というわけですか?」
「それほど全般で万能じゃあない。この神経毒のみの限定的なモノだ……この神経毒のみを生み出せる能力。だが、色や臭気等様々なバリエーションとそして動きを操作することが出来る事。それが二つ目」
二つ目の指を立てたフッド。
そして三つ目もすぐさまに立てた。

「そして三つ目。こんなお粗末な毒ガスモノが俺のとっておきなわけないだろ?」

「ッツ!!?」
増した殺意を感じ警戒をさらに高めたエイプリル。フッドの言葉と同時に大気が動いたのも感じた。
よく見るとフッドの周囲に何かが集まってきているのが見える。
アレが周囲に撒かれた毒ガスなのであろう。無色故に感知が難しかったが集まった密度により視認が可能になったのか蒸気のようなモヤとなっている。
「魅せてやる。俺の本当のとっておきを」
そしてうねり始めたモヤ。徐々に何かを形作っていく。
「最後に四つ目。能力的な相性は天敵だが……能力の方向性は似通っているらしい」

【演目】『樹海狩人 獣の猟群』

【演目】の開演と共に現れたのは幾つもの獣達であった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

モブ高校生、ダンジョンでは話題の冒険者【ブラック】として活動中。~転校生美少女がいきなり直属の部下とか言われても困るんだが~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は【ブラック】という活動名でダンジョンに潜っているAランク冒険者だった。  ダンジョンが世界に出現して30年後の東京。  モンスターを倒し、ダンジョンの攻略を目指す冒険者は、新しい職業として脚光を浴びるようになった。  黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。果たして、白桃の正体は!?  「才斗先輩、これからよろしくお願いしますねっ」  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※序盤は結構ラブコメ感がありますが、ちゃんとファンタジーします。モンスターとも戦いますし、冒険者同士でも戦ったりします。ガチです。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。 ※お気に入り登録者2600人超えの人気作、『実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する』も大好評連載中です!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた
ファンタジー
七歳になったアシュリーが神から授けられたスキルは"テイマー"、"魔法"、"料理"、"ダンジョンメーカー"。 けれどどれも魔力が少ない為、イマイチ。 というか、"ダンジョンメーカー"って何ですか?え?亜空間を作り出せる能力?でも弱くて使えない? そんなアシュリーがかろうじて使える料理で自立しようとする、のんびりお料理話です。 小説家になろうでも掲載しております。

烙印騎士と四十四番目の神

赤星 治
ファンタジー
生前、神官の策に嵌り王命で処刑された第三騎士団長・ジェイク=シュバルトは、意図せず転生してしまう。 ジェイクを転生させた女神・ベルメアから、神昇格試練の話を聞かされるのだが、理解の追いつかない状況でベルメアが絶望してしまう蛮行を繰り広げる。 神官への恨みを晴らす事を目的とするジェイクと、試練達成を決意するベルメア。 一人と一柱の前途多難、堅忍不抜の物語。 【【低閲覧数覚悟の報告!!!】】 本作は、異世界転生ものではありますが、 ・転生先で順風満帆ライフ ・楽々難所攻略 ・主人公ハーレム展開 ・序盤から最強設定 ・RPGで登場する定番モンスターはいない  といった上記の異世界転生モノ設定はございませんのでご了承ください。 ※【訂正】二週間に数話投稿に変更致しましたm(_ _)m

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

処理中です...