99 / 138
第三話 第二章
第八節
しおりを挟む
名乗ると同時に踏み込むエイプリル。杖を構え接近戦を仕掛ける。
フッドもそれに応じた。
交差する杖とクロスボウ。武器の性質上、接近戦を仕掛けて来たフッドに初戦は驚いたエイプリルだったが、今は違う…これがフッドの戦闘スタイルである。
(見える。対応できます!)
互いに打ち合うエイプリルとフッド。
三笠との訓練。それにより向上した身体能力と基礎体術により以前では対応出来なかったフッドの動きに付いて行くことが出来る。
故に死角から放たれた毒矢も弾き飛ばすことが出来た。
「ッ!?」
「やあッ!」
蹴りを撃ち込んだエイプリル。防がれはしたがフッドを吹き飛ばした。
「マシになった……と上からで言っていたが撤回してやる。お前本当に10日前に這い蹲っていた奴か!?見違えたぜ!!」
「うぃ。全ては貴方を斃し超える為です!」
「良いね…狩り甲斐があるッ!!」
短剣を取り出したフッド。クロスボウとの二刀流で一気にエイプリルに距離を詰める。
そこで何かを察したエイプリル。足元に影達を展開させた。
「?」
『……将軍ッ、7時方向に半歩後退!そのまま左方向!』
「うぃ!」
狗の言葉通りに動くエイプリル。少々大仰と言えるほどの動作でフッドの攻撃を躱す。
更に躱しざまに影での反撃を与えた。
「!?」
『次ッ、屈みつつ数歩後退!』
また言葉通りに動くエイプリル。フッドの毒矢を後ろに跳ねる形で躱しつつ、反動の様に頭突きを見舞った。
『次ッ、その場から動かず軸だけずらしつつ反撃!きっとコイツは…』
「うぃ!クロスボウによる牽制ですね!」
「……っ!ああ……」
体軸をずらす形で矢を躱すエイプリル。
「そうか、成程な…」
そこで何かを察したフッドの言葉。エイプリルは用心し距離を取る。
「どうやって感じ取っていたのか?と少々首を捻ったが、ネタが分かればそれ程驚くことでは無いな…」
「……………」
「影を使って検知していたんだな。炭鉱のカナリアの様に…」
「うぃ、その通りです。貴方の見えない刃。無色無臭の毒ガスに対応する為には…」
「へぇ、気付いたか…」
それが不可解ともいえる挙動にて回避行動をとっていたエイプリルの理由であった。
先の白兵戦の折、密かに毒ガスをばら撒いていたフッド。
矢や短剣に塗られていたモノと同じく、少しでも人体に侵入させれば、行動不能になる神経毒。大和に使用した煙幕とは異なり見る事も嗅ぐことも出来ないそれを知らずの内に吸引させる事で斃す。
文字通りの初見殺しの一手である。
「先の戦いでの経験。そして数日前にお婆様と師匠の襲撃によりようやく理解出来た貴方の攻撃。理解は出来ましたがどうやって対応するかには苦労しましたが……狗さん達との協議により編み出させていただきました」
『そうさ!』
それが先のエイプリルの影の展開。能力によるセンサーである。
周囲に影を出し先行させることにより、どのあたりにガスが存在しているのかを認識。狗が伝える事により毒の危険領域を避けつつの戦闘を可能にしたのである。
『俺達は将軍の忠実な駒を自称しているが、言ってみればただの一能力。将軍が能力を解けば引っ込み回復する。身体を張っての見えない地雷に突っ込んでいく役としてこれ以上いねぇわな!!』
「うぃ、皆様をそのように使うのには少々気が引けますが……皆様がそのように仰っていただけたんです。でしたら皆様の心意気ありがたく使わせていただきます!」
『しかし、コイツでお前のとっておきは封じたぜ。前みたいに体術でゴリ押せない。肝心の毒はこの有様だ……さあ、どうする?』
そう問いかけた狗。フッドは一瞬目を見開いたかと思うと「ふぅ…」と長い息を吐いた。
「成る程…丁度お前とは能力的な相性はお前が天敵だったか……」
「そうかそうか…」と聞こえない声量で呟いたフッド。
そこで拳を挙げた。
「ッ!?」
「いや、単なる説明だよ。お前に言いたいことが幾つかあってな…」
指を一つ上げる。
「まず一つ、俺が毒ガス内でガスマスクも無しに自由に動けるのは…抗体や解毒剤がある訳でなく。この毒自体俺の体内で作りだしたものだからだ…能力的と言ったのは、それだ…」
「では貴方は毒を生み出す能力を持つ【星】というわけですか?」
「それほど全般で万能じゃあない。この神経毒のみの限定的なモノだ……この神経毒のみを生み出せる能力。だが、色や臭気等様々なバリエーションとそして動きを操作することが出来る事。それが二つ目」
二つ目の指を立てたフッド。
そして三つ目もすぐさまに立てた。
「そして三つ目。こんなお粗末な毒ガスが俺のとっておきなわけないだろ?」
「ッツ!!?」
増した殺意を感じ警戒をさらに高めたエイプリル。フッドの言葉と同時に大気が動いたのも感じた。
よく見るとフッドの周囲に何かが集まってきているのが見える。
アレが周囲に撒かれた毒ガスなのであろう。無色故に感知が難しかったが集まった密度により視認が可能になったのか蒸気のようなモヤとなっている。
「魅せてやる。俺の本当のとっておきを」
そしてうねり始めたモヤ。徐々に何かを形作っていく。
「最後に四つ目。能力的な相性は天敵だが……能力の方向性は似通っているらしい」
【演目】『樹海狩人 獣の猟群』
【演目】の開演と共に現れたのは幾つもの獣達であった。
フッドもそれに応じた。
交差する杖とクロスボウ。武器の性質上、接近戦を仕掛けて来たフッドに初戦は驚いたエイプリルだったが、今は違う…これがフッドの戦闘スタイルである。
(見える。対応できます!)
互いに打ち合うエイプリルとフッド。
三笠との訓練。それにより向上した身体能力と基礎体術により以前では対応出来なかったフッドの動きに付いて行くことが出来る。
故に死角から放たれた毒矢も弾き飛ばすことが出来た。
「ッ!?」
「やあッ!」
蹴りを撃ち込んだエイプリル。防がれはしたがフッドを吹き飛ばした。
「マシになった……と上からで言っていたが撤回してやる。お前本当に10日前に這い蹲っていた奴か!?見違えたぜ!!」
「うぃ。全ては貴方を斃し超える為です!」
「良いね…狩り甲斐があるッ!!」
短剣を取り出したフッド。クロスボウとの二刀流で一気にエイプリルに距離を詰める。
そこで何かを察したエイプリル。足元に影達を展開させた。
「?」
『……将軍ッ、7時方向に半歩後退!そのまま左方向!』
「うぃ!」
狗の言葉通りに動くエイプリル。少々大仰と言えるほどの動作でフッドの攻撃を躱す。
更に躱しざまに影での反撃を与えた。
「!?」
『次ッ、屈みつつ数歩後退!』
また言葉通りに動くエイプリル。フッドの毒矢を後ろに跳ねる形で躱しつつ、反動の様に頭突きを見舞った。
『次ッ、その場から動かず軸だけずらしつつ反撃!きっとコイツは…』
「うぃ!クロスボウによる牽制ですね!」
「……っ!ああ……」
体軸をずらす形で矢を躱すエイプリル。
「そうか、成程な…」
そこで何かを察したフッドの言葉。エイプリルは用心し距離を取る。
「どうやって感じ取っていたのか?と少々首を捻ったが、ネタが分かればそれ程驚くことでは無いな…」
「……………」
「影を使って検知していたんだな。炭鉱のカナリアの様に…」
「うぃ、その通りです。貴方の見えない刃。無色無臭の毒ガスに対応する為には…」
「へぇ、気付いたか…」
それが不可解ともいえる挙動にて回避行動をとっていたエイプリルの理由であった。
先の白兵戦の折、密かに毒ガスをばら撒いていたフッド。
矢や短剣に塗られていたモノと同じく、少しでも人体に侵入させれば、行動不能になる神経毒。大和に使用した煙幕とは異なり見る事も嗅ぐことも出来ないそれを知らずの内に吸引させる事で斃す。
文字通りの初見殺しの一手である。
「先の戦いでの経験。そして数日前にお婆様と師匠の襲撃によりようやく理解出来た貴方の攻撃。理解は出来ましたがどうやって対応するかには苦労しましたが……狗さん達との協議により編み出させていただきました」
『そうさ!』
それが先のエイプリルの影の展開。能力によるセンサーである。
周囲に影を出し先行させることにより、どのあたりにガスが存在しているのかを認識。狗が伝える事により毒の危険領域を避けつつの戦闘を可能にしたのである。
『俺達は将軍の忠実な駒を自称しているが、言ってみればただの一能力。将軍が能力を解けば引っ込み回復する。身体を張っての見えない地雷に突っ込んでいく役としてこれ以上いねぇわな!!』
「うぃ、皆様をそのように使うのには少々気が引けますが……皆様がそのように仰っていただけたんです。でしたら皆様の心意気ありがたく使わせていただきます!」
『しかし、コイツでお前のとっておきは封じたぜ。前みたいに体術でゴリ押せない。肝心の毒はこの有様だ……さあ、どうする?』
そう問いかけた狗。フッドは一瞬目を見開いたかと思うと「ふぅ…」と長い息を吐いた。
「成る程…丁度お前とは能力的な相性はお前が天敵だったか……」
「そうかそうか…」と聞こえない声量で呟いたフッド。
そこで拳を挙げた。
「ッ!?」
「いや、単なる説明だよ。お前に言いたいことが幾つかあってな…」
指を一つ上げる。
「まず一つ、俺が毒ガス内でガスマスクも無しに自由に動けるのは…抗体や解毒剤がある訳でなく。この毒自体俺の体内で作りだしたものだからだ…能力的と言ったのは、それだ…」
「では貴方は毒を生み出す能力を持つ【星】というわけですか?」
「それほど全般で万能じゃあない。この神経毒のみの限定的なモノだ……この神経毒のみを生み出せる能力。だが、色や臭気等様々なバリエーションとそして動きを操作することが出来る事。それが二つ目」
二つ目の指を立てたフッド。
そして三つ目もすぐさまに立てた。
「そして三つ目。こんなお粗末な毒ガスが俺のとっておきなわけないだろ?」
「ッツ!!?」
増した殺意を感じ警戒をさらに高めたエイプリル。フッドの言葉と同時に大気が動いたのも感じた。
よく見るとフッドの周囲に何かが集まってきているのが見える。
アレが周囲に撒かれた毒ガスなのであろう。無色故に感知が難しかったが集まった密度により視認が可能になったのか蒸気のようなモヤとなっている。
「魅せてやる。俺の本当のとっておきを」
そしてうねり始めたモヤ。徐々に何かを形作っていく。
「最後に四つ目。能力的な相性は天敵だが……能力の方向性は似通っているらしい」
【演目】『樹海狩人 獣の猟群』
【演目】の開演と共に現れたのは幾つもの獣達であった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
家に住み着いている妖精に愚痴ったら、国が滅びました
猿喰 森繁
ファンタジー
【書籍化決定しました!】
11月中旬刊行予定です。
これも多くの方が、お気に入り登録してくださったおかげです
ありがとうございます。
【あらすじ】
精霊の加護なくして魔法は使えない。
私は、生まれながらにして、加護を受けることが出来なかった。
加護なしは、周りに不幸をもたらすと言われ、家族だけでなく、使用人たちからも虐げられていた。
王子からも婚約を破棄されてしまい、これからどうしたらいいのか、友人の屋敷妖精に愚痴ったら、隣の国に知り合いがいるということで、私は夜逃げをすることにした。
まさか、屋敷妖精の一声で、精霊の信頼がなくなり、国が滅ぶことになるとは、思いもしなかった。
異世界二度目のおっさん、どう考えても高校生勇者より強い
八神 凪
ファンタジー
旧題:久しぶりに異世界召喚に巻き込まれたおっさんの俺は、どう考えても一緒に召喚された勇者候補よりも強い
【第二回ファンタジーカップ大賞 編集部賞受賞! 書籍化します!】
高柳 陸はどこにでもいるサラリーマン。
満員電車に揺られて上司にどやされ、取引先には愛想笑い。
彼女も居ないごく普通の男である。
そんな彼が定時で帰宅しているある日、どこかの飲み屋で一杯飲むかと考えていた。
繁華街へ繰り出す陸。
まだ時間が早いので学生が賑わっているなと懐かしさに目を細めている時、それは起きた。
陸の前を歩いていた男女の高校生の足元に紫色の魔法陣が出現した。
まずい、と思ったが少し足が入っていた陸は魔法陣に吸い込まれるように引きずられていく。
魔法陣の中心で困惑する男女の高校生と陸。そして眼鏡をかけた女子高生が中心へ近づいた瞬間、目の前が真っ白に包まれる。
次に目が覚めた時、男女の高校生と眼鏡の女子高生、そして陸の目の前には中世のお姫様のような恰好をした女性が両手を組んで声を上げる。
「異世界の勇者様、どうかこの国を助けてください」と。
困惑する高校生に自分はこの国の姫でここが剣と魔法の世界であること、魔王と呼ばれる存在が世界を闇に包もうとしていて隣国がそれに乗じて我が国に攻めてこようとしていると説明をする。
元の世界に戻る方法は魔王を倒すしかないといい、高校生二人は渋々了承。
なにがなんだか分からない眼鏡の女子高生と陸を見た姫はにこやかに口を開く。
『あなた達はなんですか? 自分が召喚したのは二人だけなのに』
そう言い放つと城から追い出そうとする姫。
そこで男女の高校生は残った女生徒は幼馴染だと言い、自分と一緒に行こうと提案。
残された陸は慣れた感じで城を出て行くことに決めた。
「さて、久しぶりの異世界だが……前と違う世界みたいだな」
陸はしがないただのサラリーマン。
しかしその実態は過去に異世界へ旅立ったことのある経歴を持つ男だった。
今度も魔王がいるのかとため息を吐きながら、陸は以前手に入れた力を駆使し異世界へと足を踏み出す――
異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました
ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが……
なろう、カクヨムでも投稿しています。
パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
異世界でネットショッピングをして商いをしました。
ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。
それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。
これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ)
よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m
hotランキング23位(18日11時時点)
本当にありがとうございます
誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
ある日、近所の少年と異世界に飛ばされて保護者になりました。
トロ猫
ファンタジー
仕事をやめ、なんとなく稼ぎながら暮らしていた白川エマ(39)は、買い物帰りに偶然道端で出会った虐待された少年と共に異世界に飛ばされてしまう。
謎の光に囲まれ、目を開けたら周りは銀世界。
「え?ここどこ?」
コスプレ外国人に急に向けられた剣に戸惑うも一緒に飛ばされた少年を守ろうと走り出すと、ズボンが踝まで落ちてしまう。
――え? どうして
カクヨムにて先行しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる