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54お茶会の後
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「楽しそうな顔してるな」
買い物から帰ってきたフィーが、私の顔を見るなり嬉しそうに言ってくれた。
最近よく私の事を気にかけてくれている、と自惚れじゃなくてそう思う。私の名を呼ぶ声が心地よかった。
カレンはクルリが作ってくれた、真っ赤な服を着ていった。赤1色だが、ドレープの使い方がとても上手く、カレンの高貴さを引きたてていた。
只残念ながらフィーのはもう少し、と言われまだ出来ていない。
「おかえり、フィー、カレン。とても楽しかったわ。初めてかもしれない?そう思えるお茶会だったわ」
「ええ!?それは残念です。やっぱり私も参加したかっです!」
クルリが残念そうに言い、カレンとフィーをソファに促し、お茶の準備を始めた。
少し恥ずかしそうに、フィーが私の横に座ってきた。
これも、最近当然のようになった。
先に帰宅したのは私だった。それでも、17時過ぎていて、お母様が心配していたわ、と言われたのだけれど、カレン達がまだ帰っていなかったが、少ししたら帰ってきた。
カレン達はザンやヴェンツェル公爵家からの護衛がしっかりついていたから、お母様はあまり心配していなかったみたい。
部屋で着替え寛いでいると、皆が入ってきたのだ。
「それで、何の話をしたんだ?」
フィーのその言葉から、今日のお茶会の説明をした。
誰が来ていたか、
その方々に頼み事をした内容、
クレス様とコリュ様の婚約。
そうして、私がこれから何をしようとしているかを説明してた。
「ねえどう?この考えは?とりあえず必要な物を直ぐに準備して、水曜日には・・・あれ?どうしたの?」
皆の顔が固まっていて、凄い呆気に取られた様子で見ていた。
もしかして、考え無しだった?
そんな手じゃ情報手に入らない?
「え、と、もう少し違う考えが、いいかな?」
「違います」
すかさずザンが答えてくれて、それに同意するように皆が即座に頷いてくれて、ほっとした。
「何処からそのような突飛な考えが出てくるのですか?ワインのラベル?昨日の話ですよね?それも、今日の御婚約話で、何故そこまでの考えに行き着くのですか?」
「そう?少し考えたら思いついたの。別に突飛ではないと思うわ」
素直にそう答えると、凄い騒ぎになった。
特にカレンが、興奮気味に、
リオンだわ!
と褒めてくれたのが嬉しかったが、とても冷静な自分がいて、
皆の私を褒めてくれる言葉、
一言、
一言が、
心を満たしてはくれなかった。
素直に喜べなかった、と言った方が正しいかもしれない。
まだ、始まってもいないのだ。
王妃様を潰すには、何一つ証拠も掴んでいない今、浮かれている場合ではない。確かに、私の考えを褒めてくたのは嬉しいが、それが結果として残るかどうかも分からない。
全ては、結果。
努力しました、という徒労で終わりたくない。
そう考えれば考える程、もっと他に視えるべき何かを見落としているようで、恐怖さえ感じる。
だって、何十年も王妃様の悪事の痕跡を辿れず、いつも失敗に終わっている。
私も、そうなるの?
殿下から離れ、
私の持つ全ての神経、
直感を、
思考に回していても、
何か、
何かを、
見落としている危惧に襲われる。
まだ、足りない。
でも、何が足りないの?
そう思う自分が情けなく、暗闇に落ちていく気分になる。
そうして、卑屈になる自分のループに陥ってしまう。
でも、
「スティング様、これってやっぱり事件ですよね!?これって、これって、フィー様やカレン様は偶然来たのでは無いのですよね!?」
ほら、
「何言ってるのよ!偶然じゃないわ。全部、必然よ!!」
風は、私に吹いてるわ。
「何を得意げに言っているんだ!お前はこの国に来るのを反対していただろうが!」
だって、
「これは、中々の逸材ですね。皇太子、お目が高いですね」
私を、
「凄いです!フィー様がスティング様がよく見ていたのですね!!」
こんなにも、前向きにしてくれる。
「ふっふふ、それは」
得意げに立ち上がった。
「待てカレン!また何を言おうとしているんだ!?」
不安げにフィーは立ち上がった。
「そうですね、それは口に出すべきではありませんね」
「何ですか?え?何をですか?」
賑やかな声が、私を安心させ、精神を安定させてくれる。
私が言葉を発しなくても、
この空間に私という存在を認めてくれている。
言葉を紡いでも、聞こえなかったように無視され、冷たい空間の中必死でもがき、私という存在を少しでも見て欲しかった、あの時とは違う。
「じゃあ、スティング、卒業後は帝国大学に来なさいよ!」
「ああ、なんだ、それか。うん、それならいい考えだな。たまにはいいこと言うな」
「たま、ですって!?あんたが元々うじうじしていたのが悪いんでしょう!?もっと違うこと言ってやりましょうか!?」
「や、やめろよ!!いつもお前が考え無しだかだろうが!!」
「はあ!?グジグジして言えない奴よりずっといいわよ!!」
「その後の尻拭いを考えろよ!!」
また、ケンカが始まっちゃったな。
クルリのオロオロした顔と、
ザンの無表情の顔。
そして2人の言い合い。
それを見ていると穏やかな気持ちと、幸福な気持ちが、心を満たしていく。
「スティング?」
楽しくてくすくす笑う私に、フィーがバツが悪そうな顔になり、座ると私に微笑んだ。
元気づけられる。
「そうね、それも考えておくわ。それなら、早く事件を解決しないとね」
そうよ。
失敗したら、また、違う策を講じればいい。
「皆がいれば、私は、負けないわ」
「いえ、それはそうですが、スティング様、本当に、帝国大学に行くつもりですか?」
「スティング、それは俺はどう考えたらいいんだ!?」
「スティング、それは前向きに考えたらいいの!?」
「公爵令嬢様、私は帝国への報告はどのようにすればよろしいですか?」
えーと。
なんか、
私の帝国行きはそういう思惑がある訳ね。
という事は、
とりあえず、
「色々な国のことを知るのは必要なだものね」
と、しておこうかな。
「あざとい!!」
カレンの憮然とした一声に、隣に座るフィーがとても嬉しそうに笑っていたのは、あえて突っ込むことはやめておいた。
買い物から帰ってきたフィーが、私の顔を見るなり嬉しそうに言ってくれた。
最近よく私の事を気にかけてくれている、と自惚れじゃなくてそう思う。私の名を呼ぶ声が心地よかった。
カレンはクルリが作ってくれた、真っ赤な服を着ていった。赤1色だが、ドレープの使い方がとても上手く、カレンの高貴さを引きたてていた。
只残念ながらフィーのはもう少し、と言われまだ出来ていない。
「おかえり、フィー、カレン。とても楽しかったわ。初めてかもしれない?そう思えるお茶会だったわ」
「ええ!?それは残念です。やっぱり私も参加したかっです!」
クルリが残念そうに言い、カレンとフィーをソファに促し、お茶の準備を始めた。
少し恥ずかしそうに、フィーが私の横に座ってきた。
これも、最近当然のようになった。
先に帰宅したのは私だった。それでも、17時過ぎていて、お母様が心配していたわ、と言われたのだけれど、カレン達がまだ帰っていなかったが、少ししたら帰ってきた。
カレン達はザンやヴェンツェル公爵家からの護衛がしっかりついていたから、お母様はあまり心配していなかったみたい。
部屋で着替え寛いでいると、皆が入ってきたのだ。
「それで、何の話をしたんだ?」
フィーのその言葉から、今日のお茶会の説明をした。
誰が来ていたか、
その方々に頼み事をした内容、
クレス様とコリュ様の婚約。
そうして、私がこれから何をしようとしているかを説明してた。
「ねえどう?この考えは?とりあえず必要な物を直ぐに準備して、水曜日には・・・あれ?どうしたの?」
皆の顔が固まっていて、凄い呆気に取られた様子で見ていた。
もしかして、考え無しだった?
そんな手じゃ情報手に入らない?
「え、と、もう少し違う考えが、いいかな?」
「違います」
すかさずザンが答えてくれて、それに同意するように皆が即座に頷いてくれて、ほっとした。
「何処からそのような突飛な考えが出てくるのですか?ワインのラベル?昨日の話ですよね?それも、今日の御婚約話で、何故そこまでの考えに行き着くのですか?」
「そう?少し考えたら思いついたの。別に突飛ではないと思うわ」
素直にそう答えると、凄い騒ぎになった。
特にカレンが、興奮気味に、
リオンだわ!
と褒めてくれたのが嬉しかったが、とても冷静な自分がいて、
皆の私を褒めてくれる言葉、
一言、
一言が、
心を満たしてはくれなかった。
素直に喜べなかった、と言った方が正しいかもしれない。
まだ、始まってもいないのだ。
王妃様を潰すには、何一つ証拠も掴んでいない今、浮かれている場合ではない。確かに、私の考えを褒めてくたのは嬉しいが、それが結果として残るかどうかも分からない。
全ては、結果。
努力しました、という徒労で終わりたくない。
そう考えれば考える程、もっと他に視えるべき何かを見落としているようで、恐怖さえ感じる。
だって、何十年も王妃様の悪事の痕跡を辿れず、いつも失敗に終わっている。
私も、そうなるの?
殿下から離れ、
私の持つ全ての神経、
直感を、
思考に回していても、
何か、
何かを、
見落としている危惧に襲われる。
まだ、足りない。
でも、何が足りないの?
そう思う自分が情けなく、暗闇に落ちていく気分になる。
そうして、卑屈になる自分のループに陥ってしまう。
でも、
「スティング様、これってやっぱり事件ですよね!?これって、これって、フィー様やカレン様は偶然来たのでは無いのですよね!?」
ほら、
「何言ってるのよ!偶然じゃないわ。全部、必然よ!!」
風は、私に吹いてるわ。
「何を得意げに言っているんだ!お前はこの国に来るのを反対していただろうが!」
だって、
「これは、中々の逸材ですね。皇太子、お目が高いですね」
私を、
「凄いです!フィー様がスティング様がよく見ていたのですね!!」
こんなにも、前向きにしてくれる。
「ふっふふ、それは」
得意げに立ち上がった。
「待てカレン!また何を言おうとしているんだ!?」
不安げにフィーは立ち上がった。
「そうですね、それは口に出すべきではありませんね」
「何ですか?え?何をですか?」
賑やかな声が、私を安心させ、精神を安定させてくれる。
私が言葉を発しなくても、
この空間に私という存在を認めてくれている。
言葉を紡いでも、聞こえなかったように無視され、冷たい空間の中必死でもがき、私という存在を少しでも見て欲しかった、あの時とは違う。
「じゃあ、スティング、卒業後は帝国大学に来なさいよ!」
「ああ、なんだ、それか。うん、それならいい考えだな。たまにはいいこと言うな」
「たま、ですって!?あんたが元々うじうじしていたのが悪いんでしょう!?もっと違うこと言ってやりましょうか!?」
「や、やめろよ!!いつもお前が考え無しだかだろうが!!」
「はあ!?グジグジして言えない奴よりずっといいわよ!!」
「その後の尻拭いを考えろよ!!」
また、ケンカが始まっちゃったな。
クルリのオロオロした顔と、
ザンの無表情の顔。
そして2人の言い合い。
それを見ていると穏やかな気持ちと、幸福な気持ちが、心を満たしていく。
「スティング?」
楽しくてくすくす笑う私に、フィーがバツが悪そうな顔になり、座ると私に微笑んだ。
元気づけられる。
「そうね、それも考えておくわ。それなら、早く事件を解決しないとね」
そうよ。
失敗したら、また、違う策を講じればいい。
「皆がいれば、私は、負けないわ」
「いえ、それはそうですが、スティング様、本当に、帝国大学に行くつもりですか?」
「スティング、それは俺はどう考えたらいいんだ!?」
「スティング、それは前向きに考えたらいいの!?」
「公爵令嬢様、私は帝国への報告はどのようにすればよろしいですか?」
えーと。
なんか、
私の帝国行きはそういう思惑がある訳ね。
という事は、
とりあえず、
「色々な国のことを知るのは必要なだものね」
と、しておこうかな。
「あざとい!!」
カレンの憮然とした一声に、隣に座るフィーがとても嬉しそうに笑っていたのは、あえて突っ込むことはやめておいた。
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