蒼炎のカチュア

黒桐 涼風

文字の大きさ
上 下
174 / 321
第十二章 私の名は

12-7 ナギサイド

しおりを挟む
 カチュアと思考が狂ったキルとの一騎打ちが始まる。完全にカチュアの意思を無視しているが。

「ぎゃは! は! は! さあ! 始めようぜ!」
「早く終わらせたいわ~」

 目の前に、殺気を纏った輩がいるにも、関わらず、やる気のない態度を出すカチュア。逆に余裕ありそうに見えるな。
 
「行くぜ!! ぎゃっは!!!」

 キルが武器である短剣を左右に振るうたび、刃から、黒色の真空波が放たれる。

 しかし、まあ、いつものことだが、カチュアは軽々と攻撃を躱していく。この怒涛の攻撃は、未来でも、見えなければ避けられそうもない攻撃だ。それでも関わらず、カチュアは攻撃を躱せるんだ。

 まあ、この避け方には、いつもの避け方ではない。いや、避け方自体違いはないだ。違いがあるとするなら、気持ちだ。それは、カチュアには、生気を感じられない程、やる気がないんだ。普段だったら、美しく綺麗に避けるんだが。

「行くわよ~」

 カチュアは大剣をキル目掛けて投げつけた。

 キルは投げつけられ大剣を躱した。カチュアにしては、当てに行っていたと思っていた。カチュアは敵だろうか、殺さないからだ。それとも、カチュアは投げた大剣を躱されるとわかっていたのか?

 ドカーーーン!!!

 投げた大剣が壁に激突して、壁に大きな穴が空いた。てか、砦の外まで、見えていないか? 相変わらずのバカ力だな。

「今度は接近戦で行かせてもらうぜ!」

 キルの両手に持っている短剣から黒い靄が出現した。アニーがいうには、殺傷力を高める魔術だっけ? 当たれば、綺麗に切断するらしい。

 そして、キルが攻撃を仕掛けてきた。

 それに対して、カチュアは蹴りだけで対抗。カチュアの靴には、仕込み刃があり、それで、キルの短剣捌きを受け止めている。仕込み刃には、魔術を反射される性質の鉱石しているから、あの殺傷力を高める魔術を弾けられるのか。

 それにしても、カチュアの体柔らかいな。足を百八十度上げられるのか。

 でも、何で、全身、蒼い炎を纏わないんだ? 蒼い炎を使うのに、リスクはあるけど、あの黒い刃に当たれば、斬れてしまうのに。

 ドーーーン!

「ぐはは!!!」

 一騎打ちの際に突如、キルの頭目掛けて、大剣が飛んできた。その剣の柄の部分が、キルの頭を直撃した。

 その大剣は、さっき、カチュアが投げつけた大剣だ。剣はカチュアの手元へ戻っていった。実は剣の柄の部分には、ワイヤーで繋がれていて、そのワイヤーを引っ張ることで、投げつけた剣が飛びながら戻ってきた。その途中でキルの頭に直撃したのだ。

 ぶつかった拍子で、倒れたキルが立ち上がった。

「つまらん、つまらん、つまらん、つまらん、つまらん、つまらん、つまらぁーーーん!!!」

 奇声をあげるキル。

「ふざけやがって!! 今ので、殺せていただろうに!!!」

 確かに、当たったところは、持ち手の部分だった。やろうと思えば、刃の部分で、キルに、当たられたはずだ。

「まだ、本気で戦ってくれねえかよおおおおおおお!!!」
「あなたと戦っている暇はないのよ~」
「ああ? テメェーは私と戦う以外、選択肢何てねぇんだよ!」

 無茶苦茶だな。

 あんな、ゲスな行為をした相手でも、命を奪わないんだなカチュアは。逆にカチュアが命奪う相手って、どういう人だっけな? 

 私の覚えだと、確か、魔物化した人や、魔物のように凶暴になった人だよね? キルはこんなんだが、それらに該当しないってことか。いや、言動だけ見れば、魔物そのものだが。

「あなたが、そういっても、彼が暴れたら、わたし達が争っている、暇はないわ~。そろそろ、逃げないといけないのに~」

 え? 彼って、他に、刺客がいるのか? いや、『暴れたら』って、言っていたよね。もしかして、その彼は魔物っということになるよね。でも、その魔物らしい、咆哮は今だに聞こえない……。

「ぐっ! ぐおおおおお!!!」

 突然、奇声のようなものが聞こえてきた。男性の声だけど、どこから?

「あれ見て」

 それはババリーが苦しみもがいていた。というか、生きていたのか? 待てよ、この展開。

「ぐおおおおお!!!」

  ババリーは奇声をあげながら、全身、黒い靄に包まれていった。

 黒い靄がなくなると、現れたのは、人型ではなく頭が三つある、四足歩行のドラゴンだった。

「ぐおおおおお!!!」

 三頭竜は一斉にカチュアとキル目掛けて、ブレスを吐いた。

 二人は軽々と躱した。

「邪魔するんじゃねぇ!!!」

 キルは三頭竜に向かっていった。

 しかし。

 ドーーーン!!!

「ぐおおおおお!!!」

 キルは三頭竜の尻尾によって叩きつけられ、壁を破壊しながら砦外まで吹き飛ばされていった。
しおりを挟む
1 / 2

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!


処理中です...