蒼炎のカチュア

黒桐 涼風

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第五章 蒼炎の再現

5ー1 エドナサイド

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 あたし達は、アヴァルの街に戻って来たんだよ。取り敢えず、宿屋へ向かったんだよ。

 そう、戻ってきたんだよ。

 ただ、あたしは今、宿屋の床で、うつ伏せになって、倒れているんだよ。

「戻ってきて、そうそう、何やっているんですか?」

 カチュアさんの声だけど、口調はカチュアさんでは、ないんだよ。多分、ナギさんなんだよ。

「はうう……」

 宿屋へ入ろうとしたら、転んで扉を破いちゃったんだよ。

「大丈夫ですか」
「はうう、ごめんなんだよ。モニカさん」

 顔を上げると、アヴァルの街で、この宿屋を経営を行なっているモニカさんが立っていたんだよ。

「うちは大丈夫ですよ」
「でも、破損金額がとんでもないことに……」

 以前、宿屋に泊まっている間も、この入り口の扉だけでなく、壁や床も転んだ拍子に壊しているんだよ。

「寧ろ、エドナちゃんに、報酬をあげたいぐらいよ。エドナちゃんのおかげで店が繁盛しているんです」
「あたしが? 何でなんですか?」
「これを見て!」
「って! これ、エドナさんの像ですよね」

 宿屋のフロント真ん中辺りには、あたしの型をした、石の像が立っていたんだよ。
 
「エドナはこの街で人気が出ているんですよ。可憐なロリ巨乳ちゃんが幼い女の子に襲い掛かる男を踵落としで撃退した話なんか有名ですね」

 それって、酒場でミカンちゃんが大きな男の人に絡まれた時だよね? そう言えば、その時、あたしは転んだ拍子で踵が大きな男の人の頭の上に落としたんだよ。

「エドナさん、そんなことを!!!」

 ユミルさんが何故か、体を震わせているんだよ。

「それ以外にも、服屋で試着した服の前ボタンが飛んで、壁に穴が開けちゃったんです。今では人気スポットになっているんです」

 それは、セシル王国に行く前の話なんだよ。カチュアさんのお洋服作るのに、あたしもお店のお洋服を試着していたんだよ。だけど、試着したお洋服のサイズが合わなくって、胸元に辺りの服のボタンが弾け飛んじゃったんだよ。

「はうう。そんな、スポットいらないんだよ」
「あれ~。ここに何か書いているわね~」

  カチュアさんが、あたしの銅像の下にある土台に書かれている文字を見つめたんだよ。

「えーと……推定百三十センチの美少女?」
「あたし、百四十はあるんだよー! もー!」

 大きな声を出した瞬間だよ。

 ビリ!

 何か、破れる音がしたんだよ!

「エドナさん! 前の方が……」

  ユミルさんがそういうと、下の方を見ると。

「あっ!! いやーーーー!!」

 あたしの、服のボタンが全部外れていだけでなく、服の袖や襟から下まで破れていき、さらに胸周りに巻いていたサラシも破れたんだよ。



「はうう。せっかく、ドアさんから貰ったのに、数ヶ月でダメになったんだよ」
「何で、あちこち、破れているのでしょう。それに胸元だけでなく、上から下までの全ボタンが外れるの?」
「ソフィアさん、エドナさんは頻繁に転びますから。転ぶたびに生地がダメになったでしょ」
「もう! あたし、頻繁にが付くほど、転んでないんだよ!」

 確かに、転びはするんだよ。時々、転んだ拍子に何メートルかは滑ってしまうことはあるんだよ。

「あの~。せっかくだし、新しい服でも買いましょう」

 間に入ったユミルさんが提案してくれたんだよ。

「そうね~、じゃあ~、行きましょうか~」

 ルナちゃんがカチュアさんの腕を掴む。

「それはいいですけど、カチュアさんは武器を買いましょう。いつでも、戦えるように」
「あ! そっか~! ごめんね~。エドナちゃん」
「エドナさんの買い出しはわたくしとソフィアさんで行きますわ」
「それじゃあ、出発なんだよ!」

 あたしは駆け足で宿屋から出るんだよ。

「エドナさん! 前! 丸見えですよ!」
「え!? いやーーー!!!」
「おおおお! ナイスボイン」
「あああ、生きていてよかった!」
「ああ、ありがたや、ありがたや」

 宿屋からでると男女関係なく、注目されちゃったんだよ。

「こちらに男性用の服がありますので、応急処置ですが、これをエドナちゃんのサイズに合わせて塗っておきますね」
「お願いします」



 モニカさんに、仮の服を塗ってもらい、何とか、着れたんだよ。でも、元は男物の服であたしのサイズに合わせて、塗って貰ったから、継ぎ接ぎだらけなんだよ。

 あたしと、ユミルさんとソフィアさんで服屋へ目指すことに。街を歩いていると。

「あ! 小さい方のお姉ちゃんだ!」

 見覚えのある女の子が駆けつけてきた。

「あれ? ミカンちゃんだ!」
「ありがとうね。お薬届けてくれて」

 以前、ロプ村へ薬を届けて欲しいと、お願いされたから引き受けたことがあったんだよ。

 はうう。走って向かってきたのに、転んでいないんだよ。あたしだったら、転ぶのに……。

「丁度、よかった! お姉ちゃんに聞きたいことがあるんだ」
「え~と~、何?」

 すると、ミカンちゃんがあたしに、と言うよりもあたしの胸かな? それに向かって、指を刺したんだよ。

「どうすれば、お姉ちゃんのようなオッパイに育つの?」
「え!? あたしのオッパイって!?」
「わたし、将来不安なの。お母さんはお姉ちゃんより、背は高いけど、オッパイ小さいんだ。だから、オッパイ育つか心配なの」
「そうは、言っても、あたしには分からないんだよ!」

 あたしは十ニか三の時から、身長が伸びなくなったと引き換えに、胸が大きくなったことは覚えているんだよ。

「じゃあ、お姉ちゃんは普段何食べていたの?」
「ん~、色々、食べていたんだよ。あたし、毒が入っていなければ好き嫌いないから」
「あの~、好きで毒を食べる人なんていないですわよ」

 あ! ユミルちゃんの言う通りなんだよ。

「小さいお姉ちゃん、天然ですね」
「よく言われるんだよ。……そう言えば、あたしが食事作ると偏るんだよ。殆ど、肉料理になるんだよ。よく、村長さんから、野菜を食べなさいって、言われていたんだよ」
「お姉ちゃんはお肉が好きなの?」
「大好きなんだよ」

  村にいた頃、狩をしていたから、自分で狩ったお肉をよく食べていたんだよ。そう言えば、村の人たちから、「エドナが狩に行くたびに骨が増えていく」って、言われていたんだけど、どう言う意味だったのかな。

「後はよく食べていたのは、豆類かな? それと、ミルクだよ! 朝に飲むミルクは格別なんだよ」
「そっか! お肉と豆にミルクか! わかった! ありがとうね! じゃあ、わたしはもう行くね」
「うん、またね!」

 ミカンちゃんはどこかへ行ったんだよ。

「ちなみに、エドナさんは週にどれくらいお肉を食べられるんですか」

 ユミルさんにそう聞かれると。

「毎日、毎食なんだよ。一食、デブボア肉、丸ごと食べることがあるんだよ」
「セシル王国に滞在していた時は、結構食べていた記憶はありましたが、以外と食べるんですね」
「でも、カチュアさんの方が食欲あるんだよ。ギガンドベアの肉を一人で食べていたことがあるんだよ」

 二人で旅していた時の話しなんだよ。

「うん、わたくしも、お二人が食べているところは見ていましたから。二人で一週間分の食料を一日で食べ尽くしていましたから」

 あれ? あたしって、そんなに食べていたの?

「セシル王国のお料理美味しかったんだよ。お肉は少なかったのは残念だったけど、豆を使った料理は美味しかったよ」
「二人の食べっぶりを見ていると納得するのですわ」
「何が?」
「あそこまで、育つのを」
「え? 育つって、あたし、背は低いよ。カチュアさんも、あたしがいた村の女性人と比べると、低い方いんだよ。男性の方だと、アルヴスさんぐらいはありましたし、女性人は皆、ソフィアさん以上はあったんだよ」

 アヴァルの街に、着いた時は驚いたんだよ。ライム村の皆んなって、背が高かったんだよ。寧ろ、街の皆んなが小さく見えたんだよ。そんな、村に育ったのになんで、あたしだけ、背が低いんだよ。

 村長さんが、今のあたしぐらいの歳で、既に今ぐらいの背丈だったそうなんだよ。でも、若い時と比べれば、十センチくらいは縮んだとも、いっていたんだよ。でも、それでも、アルヴスさんくらいはあるんだよ。

「そこは巨人族の村だったのでしょうか? それに私は……」
「でも、そんなあたしが、あそこまで育つって、どういう……まさか、いっぱい食べなかったら、あたし今以上に小さかったんだね。よかった~、いっぱい食べて」
「身長の話しではないのですが……」

 ユミルさんがボソッと何か、言っていたような。気のせいかな?

「わたくしもお肉を食べれば育つのでしょうか?」
「姫様! お二人の影響で、感覚が麻痺をしているかもしれませんが姫様も大きい分類ですから」
「そうだったのですか?」

  よくわからないけど、褒められてはいない気がするんだよ。気のせいかな?
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