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第二章

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 公民館の外には男の子が立っていた。
 事故にあった子と一緒に遊んでいた子だ。

「僕、 弘樹ひろきって言います。あの、何か聞かれましたか?」

 唐突な質問だが、町内会長に、ということだろうか。
 どうして弘樹は、私と直人が公民館に呼ばれたことを知っているのだろう。

「あれ、お前」

 外に出てきた直人も、弘樹のことを覚えていたみたいだ。

「こんなとこで何してんだ?」
「何か聞かれましたか?」

 弘樹は直人を無視して、また同じ質問を繰り返す。
 どこか切羽詰まった様子で、私と直人は顔を見合わせた。
 直人が軽くうなずいたので、私はできるだけ優しく答える。

「事故の様子を、見てないかって」

 弘樹の顔がパッと明るくなり、期待を込めたまなざしでこちらを見る。

「それで、なんて答えたんですか?」
「何も見てないから」

 私が答えると、弘樹はしゅんとしてうつむいてしまう。

「……そう、ですか」
「んだよ? なんか見てなきゃいけねーのか?」

 直人がしゃがんで、弘樹の顔をのぞき込むと、彼はヒッと叫んで後ろに飛び退く。 

「ちょっと、怖がってるでしょ」
「別に怖がらせるつもりじゃ」

 口をとがらせる直人を押しのけ、私は弘樹に質問した。

「あの事故、ただの不注意じゃないの?」

 弘樹は強く首を左右に振って答える。

「サッカーボールが、悪いんです。まっすぐ蹴っても、まっすぐ飛ばなくて、ヘンな方向に曲がっちゃって」

 怒られるから、サッカーボールのせいにしようとしている?
 私は少し疑いながら、注意深く尋ねた。

「気のせい、じゃない?」
「絶対違います!」

 弘樹はきっぱりと言って、一生懸命に続ける。

「いつも遊ぶときは、外の道路に出ないようにすごく気をつけてたし。ママが集会に行くって言ったから、サッカーボールのこと話しておいてって頼んだんです」
「もしかして、それでオレたち公民館に呼ばれたのか?」
「多分そうだよ」

 弘樹の言葉だけでは、本当かどうかわからないから、私たちにも意見が聞きたかったのだろう。

「お姉ちゃんたちが見てるかもって、思ったのに……」

 しょんぼりする弘樹を見て、私は胸が痛んだ。
 そんな重要な立場だっだとは知らず、何も見ていなかったことが、なんだか申し訳なくなってしまう。

「そのサッカーボールは?」

 話を聞いていた直人が、真剣な顔で尋ねる。

龍星りゅうせいが、持ってます」

 龍星というのは、事故にあった男の子のことだろう。

「んじゃ、今から龍星の家に行こう。サッカーボールを調べりゃ、何かわかるかもしれない」
「今日はダメですよ。念のために、病院で検査してるから」
「わかった、じゃあ明日な。約束だ」

 直人が弘樹の肩を叩くと、彼は少し安心したようで、にこっと笑ってうなずいたのだった。
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