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タイ軍との演習から帰国して数日が過ぎた頃、夜神と庵の二人は街に出かけていた。

庵からの誘いで来ている。特に目的もなくのんびりの街なかを散歩感覚で歩きながら、ウインドウショッピングを楽しむ。

「これ、大佐に合うと思うんですがどうですか?」
手頃な値段のアクセサリーが並ぶケースを見ていた庵が指で示すのは指輪で、細い紐をグルグルと巻き付けたようなデザインのゴールドのシンプルな指輪だか、そのシンプルさがかえって夜神の良さを引き立てる。

「シンプルで私は好きかな?」
「付けて下さいよ・・・・・いいじゃないですか。とってもあってますよ。大きさは大丈夫ですか?」
夜神の指にはめられた指輪を見て庵は声を弾ませる。
「・・・・うん。大きさは大丈夫。おかしくない?」
「凄くあってます。買いましょう。自分プレゼントしますよ!」
「えっ?いいよ!私が買うよ。自分の物だし」
庵からの突然のプレゼント発言に驚いて、「買う」と発言してしまった。
「プレゼントさせてください。はい、会計してきますね。もちろんすぐに付けていきますよね?」
指からスルリと引き抜いて、スタスタとレジに持っていく庵に、ア然としながら眺めるしかなかった。
「早すぎるよ・・・・・」

店から出る時には右手の中指に、庵からのプレゼントの指輪を付けて出て行く
「仕事中は流石に無理ですけど、自分と出掛ける時は付けて欲しいです。駄目ですか?」
少しだけ照れながら言ってくる庵に対して「嫌だ」なんて言葉は見当たらない。
「もちろん。ありがとう」
指輪をクルクルと回しながら、頭一つ高い庵を見上げて微笑んで答える。

それから右手を繋ぎながら歩く。時々指輪を優しく撫でられる。それが心地よい。
途中でコンビニに寄って、飲み物を色々と買い込んでいる庵に少しだけ不安になる。
何故なら買ってるものが酒類だからだ。桃やイチゴと味は女子ウケするものを手にとっては籠に入れてる姿に、戦々恐々する。
「お酒飲むの?」
「一緒に飲みましょう。コレとか美味しそうですよ?」
そう言って三本程パッケージの可愛いものを入れて、ハイボールを二本ほど入れると会計をする。

「公園とかで飲むのは流石に堪えるので、クーラーのある所で飲みましょう。いいですか?」
耳元で吐息混じりで熱っぽく言ってくる庵に背中がゾクゾクと粟立つ。
「っ~~~わたし、お酒飲めないの・・・・」
「昔の話ですよね?今ならイケるかもしれないですよ?」
唇を寄せている反対の耳をフェザータッチで撫でながら、首筋から鎖骨にかけてツッッ━━と指の腹を伝わせる。
「ふぅ・・・・・ん、のむから・・・・」

はずかしい、人が行き来する中でこんな煽るような事をするのを・・・・・
これでは、「はい」以外の答えはないようなもの。それ以外の事を言ったらもっとはずかしい思いしてしまう。
羞耻的な行為に、煽られて、顔を赤くして俯いて庵に全てを委ねて歩き出した。



「んっ、んん━━━っ」
部屋に入るなり、背中を扉に預けて庵との深いキスをする。
少しだけ前屈みになり、すっぽりと夜神の体を覆い、細い顎を固定して、赤い舌を吸ったり、絡めたりしていく。
口を覆われている間、鼻で呼吸するのも出来るようになってきて、長いキスを楽しむことが出来るようになった。

「舌、絡めて下さい。俺の真似して?」
合間に言われることを、少し痺れてきた頭で考える。
真似をすればいいの?庵君はいつもどうしてくれているの?

稚拙だが、何とか真似ようとしているのがわかって、庵は目を細めながら夜神の顔を見た。
瞼は閉じられているが、きっと赤くなっている瞳。
蒸気して紅くなった頬を染めて、気持ちよさそうな顔をしている。
合間合間に聞こえる、鼻にかかった声が自分の欲上を掻き立てる。

「はぁ、はぁ・・・・・」
長いキスが終わり、唇が開放される。
一人で立ってられない程気もちが良すぎて、庵君に抱きついて何とか体を地面に座らせないようにする。
すると、横抱きに抱えられて、ベッドがある部屋まで行くと、体をゆっくりとベッドに降ろされる。

ギシッ・・・・・
スプリングが効いたベッドに二人して乗り、横たわる夜神にもう一度覆いかぶさるように跨がり、荒々しくキスを繰り返す
両手は指同士を互に握り合いギュッと力を込める。
あまりの激しさに、呼吸が苦しくなり涙がポロリと一粒流れていく。
「ふん━━━ん、んっ・・・・・ふぁ・・・」
「キス好きですか?すごく蕩けた顔になってますよ?」
耳元で少し掠れた声で聞いてくる。

「ひゃぁ・・・・そこで、喋らないで」
くすぐったさに、身をよじる。けど庵君はしつこく聞いてくる。答えを言わないといつまでも、このくすぐったさが続くのかもしれない。
「教えて下さい?好きですか?」
コクコクと頷いて返事をする。けどそれでは許して貰えなかった。
それどころか、まるで罰せられるように舌を耳に這わせていく。
クチュ・・・・・

「ふぅっ・・・・ぁ、」
「声が出せるなら、ちゃんと口で言わないと・・・・次はないですよ?ん・・・キス好きですか?」
喋る合間合間に舌を、耳朶に沿って這わしたり、耳の穴に窄めてねじ込んだりしていく。
背中をゾクゾクさせながら、今度は声を出して答える。
「すきです・・・・・キ、スすきなの・・・・・んん━━━っ」

答えた事を褒めるようにもう一度キスされる。
口内を撫で上げて、舌裏を伝い絡めて、離れていく
「ちゃんと言えるじゃないですか凪さん。ねぇ、シャワー浴びますよね?」
熱を帯びて欲上の色がチラチラと見える瞳を夜神に向ける。
蠱惑的に上がった唇が紡ぎ出す言葉は、追い詰めている訳ではないのに、なぜか追い詰められた気分になってしまう。

さっきから心臓が壊れるのではと思うほど、ドキドキと脈打つ。
体はうずき、奥から泉のように湧き出て、下着を濡らしているのが分かり、余計に恥ずかしくなる。
下腹部がチクチクと甘く痛みだす。

「浴びるよ・・・・・・」
目を見て話せない。今、私の顔はきっと恥ずかしい顔をしているから
「一緒に入りましょう。綺麗に洗いますよ」
そう言って返事を聞かず、夜神を横抱きにして脱衣場に向かう。
突然の事に声は出なく、不安定な状態になった事で庵に縋り付く。
「・・・・・・」

その様子に庵はますます嬉しくなると同時に、演習で話した内容を思い出す。
これも全て七海中佐のせいだと思うようにする。
がなければ、今から行うことが生死を決めるのだ。その為にはできるだけ夜神の体力を削りたい。

大人しく体を預ける夜神を見て、微笑んだ。
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