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エピローグ
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前半部の完結です。けど、まだ続きます
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「これにて入隊式は閉会する。一同起立!敬礼!」
椅子に座っているの全ての人間が一斉に立ち上がり、姿勢を正して、敬礼する。その姿は圧巻の一言である。
そうして入隊式が終わり、新隊員達は一同、所定の場所に集まって話を聞いていく。
「それでは長谷部室長、部屋で会いましょう。俺は新人を迎えに行ってきます」
「あぁ、頼む。寄り道はするなよ」
七海は白手袋をはめた手を振って会場を後にする。
集合場所は衛生部や司令部など、所属する所によってバラバラで、七海達のように討伐を主な活動とする、人間は総合道場に集められていた。
七海中将が説明をしていくのを隅の方で他の隊長達と眺めながら待ち、やがて終わると新人達がそれぞれの隊長の所にやってくる。
「おまたせしてすみません。七海中佐」
「よう、第一室所属おめでとう。青年が満場一致で選ばれたんだぜ」
顎を撫でながら七海は笑って庵を見る。
正装用の軍服に一番の下の階級である、二等兵の肩の階級章が真新しい庵は、軍帽を脇に抱えて七海を見る。
「自分の他にもいたのですか?」
「二人ほどな・・・・けど、皆して「庵がいい」で決まったよ。第一に新人隊員は久しぶりだよ。誰が庵青年の隊長になるかは部屋に行ってからな」
よし、ついてこい!と、指をクイクイとしながら、道場を出ていく。庵は七海の後を付いていく。目的の場所である「第一室」に。
第一室と書かれた扉の前で直立不動になる。
一年前の四月、学生だった庵はこの扉の前で固まっていた。
何かの間違い?運命の悪戯?と、頭の中に沢山の「?」で埋もれていた。
テストで十位。十一位とは一点差。そして異例のくじで決まった挨拶回り。すべてがあり得なくて固まっていた。
意を決して扉を開けると、そこには学生も軍人も憧れる、日本軍で最強の「夜神凪大佐」と精鋭揃いの「第一室の隊長達」が待っていた。
挨拶が終わり、「教育係」を誰にするかでも、異例が起こった。
それは付き添いで来ていた先生も、部屋の隊長達も、室長さえも驚いたのだ。学生の庵はもっと驚いていたと、今更ながら思う。
それからは、自分がどんな風に見られているか知らない夜神大佐に、振り回されながら戸惑いの連続だった。
私生活では、しっかりしているように見えて、抜けている大佐だが、一度討伐任務になると人が変わる。
苛烈で冷酷、そして華麗。その太刀筋は剣舞のような優雅さを持ち合わせていた。
そんな大佐が、帝國によって拉致された時は、自分の弱さを嘆いた。力があったなら変わっていたかもしれないと思い悩んだ。
そして、無事に見つかり、目を覚ました時の酷く怯えた顔を見た時に、皇帝に憤りを覚えてしまった。
それと同時に「守りたい」と思い、己の思いを伝えて、そしてここまで来た。
庵は意を決して、扉をノックする。そして、部屋に一歩踏み入れる
ここからが、これからの本当のスタートだ。これはそのための第一歩だ。
扉の前で動かない人物に懐かしさを覚えた。
一年前も扉の前で固まり、戸惑い、躊躇っていた。
意を決して入室するが、場違いだと自分に自信がなく、今にも逃げ出しそうな雰囲気だったのは、今では笑い話だ。
そんなことはない。自分に自信を持って欲しい。そう願って「教育係」に挙手した。周りの人間は驚いていたが(長谷部室長も大学の先生も驚いていたのは心外だったが)資格はあるのだから、文句は言わせなかった。
ただ、先生と同じやり方は駄目なんだと周りから言われ、それしか知らない私は時々悩んでしまっていた。
それからは周りを参考にしながら頑張ったが、きっと本人は大変だったと思うし、これからも度々迷惑をかけるかもしれない。
そんな毎日だったが、帝國に拉致されて、思い出したくもない毎日をおくり、心身共に駄目になっていった日々に、思い出すのはいつも同じ人物だった。
クルクルと表情が変わっていくのが好きだった。稽古の時、真剣な眼差しになるのが好きだった。好きだから、守りたかったからおかしくなっても、何とかして過ごしてきた。
そして気がついたら病室で、怯えるわたしを抱きしめて安心させてくれた。何度も何度も転んだわたしに、手を差し伸べてくれた。
・・・・・そして「好き」だと伝えてくれた。
今でも誰かを「好き」になることに恐怖がある。けど、それでは駄目だと教えてくれた。
なら、その恐怖を打ち消す為に私も強くなる。
ノックと共に扉が開く。そして礼装用の軍服を着た、二人の人間が入室する。
肩の階級章が二等兵を表す人物が、今年から第一室に所属する新隊員だ。その人物は長谷部室長がいる机の前まで進むと敬礼をする。
「本日より配属することになりました庵 海斗二等兵です。まだまだの新参者ですが、ご指導ご鞭撻の程よろしくお願い致します!」
「第一室の配属、心より賛辞する。第一室 室長の長谷部中将だ。これからの活躍期待する」
同じく敬礼して返答する。その顔は相変わらず無表情に見えるが、周りの隊長達はすぐにわかる。目が微かに微笑んでいる。それは心から嬉しい時の顔だと言うことが。
「隊長達は後程、挨拶をするように。これから庵二等兵の直属の隊長を伝える。夜神大佐こちらに」
「はい」
名前を呼ばれて室長の所まで行く。そして向かい合う人物の顔を見る。好きな表情の一つの、真剣な顔で見てくる。
「これから私の隊に入ってもらいます。と、言っても私と庵二等兵の二人しか居ないのだけど・・・・よろしく」
微笑んで敬礼する。それを見て庵も敬礼する。
「はい!よろしくお願いします!」
「これからもよろしくね。庵君」
ニッコリと笑って庵を見る。そして庵も笑う。
四月━━━━出会いの季節に出会った二人は、これから色々な事を経験していく。その経験は楽しいものばかりではない。時には苦い経験もあり、身を引き裂かれるような事もある。
はたしてこの出会いは、運命だったのか?それとも宿命だったのか?
それは誰の体に流る血が招き寄せたのか。わかっているのは血の記憶だけ。
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これにて前半の完結です。
これから後半になりますが、二人には色々と乗り越えないといけないものが、やってきます。
もちろんその乗り越えるものには、楽しいこともありますが、悲しい事もあります。それでも乗り越えて逞しくなっていくと思います。
拙い文章、変な表現等、色々とお見苦しいものもあったと思いますが、前半といえどここまで書けたのは、皆さんのおかげだと思います。
本当ありがとうございます。とても励みになりました。
ここからは後半になります。回収しないといけないものがありますので、回収しつつ、R-18に突入しつつ(笑)後半も頑張って仕上げていこうと思います。完結目指して頑張りますので、今暫くお付き合い頂けると、泣いて喜んで小躍りします(踊る必要ない?えっ?でも踊ります!)
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「これにて入隊式は閉会する。一同起立!敬礼!」
椅子に座っているの全ての人間が一斉に立ち上がり、姿勢を正して、敬礼する。その姿は圧巻の一言である。
そうして入隊式が終わり、新隊員達は一同、所定の場所に集まって話を聞いていく。
「それでは長谷部室長、部屋で会いましょう。俺は新人を迎えに行ってきます」
「あぁ、頼む。寄り道はするなよ」
七海は白手袋をはめた手を振って会場を後にする。
集合場所は衛生部や司令部など、所属する所によってバラバラで、七海達のように討伐を主な活動とする、人間は総合道場に集められていた。
七海中将が説明をしていくのを隅の方で他の隊長達と眺めながら待ち、やがて終わると新人達がそれぞれの隊長の所にやってくる。
「おまたせしてすみません。七海中佐」
「よう、第一室所属おめでとう。青年が満場一致で選ばれたんだぜ」
顎を撫でながら七海は笑って庵を見る。
正装用の軍服に一番の下の階級である、二等兵の肩の階級章が真新しい庵は、軍帽を脇に抱えて七海を見る。
「自分の他にもいたのですか?」
「二人ほどな・・・・けど、皆して「庵がいい」で決まったよ。第一に新人隊員は久しぶりだよ。誰が庵青年の隊長になるかは部屋に行ってからな」
よし、ついてこい!と、指をクイクイとしながら、道場を出ていく。庵は七海の後を付いていく。目的の場所である「第一室」に。
第一室と書かれた扉の前で直立不動になる。
一年前の四月、学生だった庵はこの扉の前で固まっていた。
何かの間違い?運命の悪戯?と、頭の中に沢山の「?」で埋もれていた。
テストで十位。十一位とは一点差。そして異例のくじで決まった挨拶回り。すべてがあり得なくて固まっていた。
意を決して扉を開けると、そこには学生も軍人も憧れる、日本軍で最強の「夜神凪大佐」と精鋭揃いの「第一室の隊長達」が待っていた。
挨拶が終わり、「教育係」を誰にするかでも、異例が起こった。
それは付き添いで来ていた先生も、部屋の隊長達も、室長さえも驚いたのだ。学生の庵はもっと驚いていたと、今更ながら思う。
それからは、自分がどんな風に見られているか知らない夜神大佐に、振り回されながら戸惑いの連続だった。
私生活では、しっかりしているように見えて、抜けている大佐だが、一度討伐任務になると人が変わる。
苛烈で冷酷、そして華麗。その太刀筋は剣舞のような優雅さを持ち合わせていた。
そんな大佐が、帝國によって拉致された時は、自分の弱さを嘆いた。力があったなら変わっていたかもしれないと思い悩んだ。
そして、無事に見つかり、目を覚ました時の酷く怯えた顔を見た時に、皇帝に憤りを覚えてしまった。
それと同時に「守りたい」と思い、己の思いを伝えて、そしてここまで来た。
庵は意を決して、扉をノックする。そして、部屋に一歩踏み入れる
ここからが、これからの本当のスタートだ。これはそのための第一歩だ。
扉の前で動かない人物に懐かしさを覚えた。
一年前も扉の前で固まり、戸惑い、躊躇っていた。
意を決して入室するが、場違いだと自分に自信がなく、今にも逃げ出しそうな雰囲気だったのは、今では笑い話だ。
そんなことはない。自分に自信を持って欲しい。そう願って「教育係」に挙手した。周りの人間は驚いていたが(長谷部室長も大学の先生も驚いていたのは心外だったが)資格はあるのだから、文句は言わせなかった。
ただ、先生と同じやり方は駄目なんだと周りから言われ、それしか知らない私は時々悩んでしまっていた。
それからは周りを参考にしながら頑張ったが、きっと本人は大変だったと思うし、これからも度々迷惑をかけるかもしれない。
そんな毎日だったが、帝國に拉致されて、思い出したくもない毎日をおくり、心身共に駄目になっていった日々に、思い出すのはいつも同じ人物だった。
クルクルと表情が変わっていくのが好きだった。稽古の時、真剣な眼差しになるのが好きだった。好きだから、守りたかったからおかしくなっても、何とかして過ごしてきた。
そして気がついたら病室で、怯えるわたしを抱きしめて安心させてくれた。何度も何度も転んだわたしに、手を差し伸べてくれた。
・・・・・そして「好き」だと伝えてくれた。
今でも誰かを「好き」になることに恐怖がある。けど、それでは駄目だと教えてくれた。
なら、その恐怖を打ち消す為に私も強くなる。
ノックと共に扉が開く。そして礼装用の軍服を着た、二人の人間が入室する。
肩の階級章が二等兵を表す人物が、今年から第一室に所属する新隊員だ。その人物は長谷部室長がいる机の前まで進むと敬礼をする。
「本日より配属することになりました庵 海斗二等兵です。まだまだの新参者ですが、ご指導ご鞭撻の程よろしくお願い致します!」
「第一室の配属、心より賛辞する。第一室 室長の長谷部中将だ。これからの活躍期待する」
同じく敬礼して返答する。その顔は相変わらず無表情に見えるが、周りの隊長達はすぐにわかる。目が微かに微笑んでいる。それは心から嬉しい時の顔だと言うことが。
「隊長達は後程、挨拶をするように。これから庵二等兵の直属の隊長を伝える。夜神大佐こちらに」
「はい」
名前を呼ばれて室長の所まで行く。そして向かい合う人物の顔を見る。好きな表情の一つの、真剣な顔で見てくる。
「これから私の隊に入ってもらいます。と、言っても私と庵二等兵の二人しか居ないのだけど・・・・よろしく」
微笑んで敬礼する。それを見て庵も敬礼する。
「はい!よろしくお願いします!」
「これからもよろしくね。庵君」
ニッコリと笑って庵を見る。そして庵も笑う。
四月━━━━出会いの季節に出会った二人は、これから色々な事を経験していく。その経験は楽しいものばかりではない。時には苦い経験もあり、身を引き裂かれるような事もある。
はたしてこの出会いは、運命だったのか?それとも宿命だったのか?
それは誰の体に流る血が招き寄せたのか。わかっているのは血の記憶だけ。
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これにて前半の完結です。
これから後半になりますが、二人には色々と乗り越えないといけないものが、やってきます。
もちろんその乗り越えるものには、楽しいこともありますが、悲しい事もあります。それでも乗り越えて逞しくなっていくと思います。
拙い文章、変な表現等、色々とお見苦しいものもあったと思いますが、前半といえどここまで書けたのは、皆さんのおかげだと思います。
本当ありがとうございます。とても励みになりました。
ここからは後半になります。回収しないといけないものがありますので、回収しつつ、R-18に突入しつつ(笑)後半も頑張って仕上げていこうと思います。完結目指して頑張りますので、今暫くお付き合い頂けると、泣いて喜んで小躍りします(踊る必要ない?えっ?でも踊ります!)
応援ありがとうございます!
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