46 / 89
運転者にはノンアルコールのカクテルを。
パーティーの夜に 2
しおりを挟む
殺人、と言う言葉に紗川は眉を寄せた。
犯人当てと言う軽い言い方からは思い至らなかった言葉だ。
女性は面白そうな顔で微笑んでいる。
「女優が殺されたとなれば、大騒ぎになっていそうですが……未だ、そう行った報道は耳にしていません」
「情報が出ないようにしてるみたいだから。まあ、嘘だって思ってもいいけど」
「では、創作だと思って聞くことにします」
「あはは、そうして」
「それで、四名のうちの一名が殺されたと言うことは、残りの三名が発見したと言うことでしょうか」
「それがさ。みんな酔いつぶれて寝ちゃったから、朝になって警察が来て、はじめて知ったんだよね。女優が殺されたって」
「警官に起こされた?」
「そう」
「じゃあ、死体はパーティーをしたマンションの一室ではなく、別の場所で発見されたのでしょうか」
共に飲んでいた友人達ではなく、別の誰かが遺体を発見したのでなければ、警察が知らせにくるはずがない。
紗川の問いに、彼女は頷いた。
「そう。みんなびっくりよ。前の日、結構飲んでたし。みんなぼんやりしてたところへ、警察が来てさ? 何が起きたか分からないでいるうちに、ADの子が捕まっちゃったんだよね」
「理由は?」
「ほらADは女優と付き合ってたって言ったでしょ? どうも別れ話が出てたみたいでさ。でも、男のほうは別れたくなかったらしくて」
なるほど、よく聞く痴情の縺れと判断したのだろうと、紗川は内心で頷いた。
「となると、別れるの別れないのが動機の殺人だって思うでしょ? でもそんな簡単な事件じゃないんだな」
「だからこその犯人当てですね。ところで、警察がADを犯人としたのは動機以外では何があったのでしょうか」
「目撃者がいるわけよ、サンタのカッコした奴が怪しいって。彼はさ、サンタクロースのカッコしてたのよね。だから捕まっちゃった」
そう言って、あごひげをたくわえ荷物を背負うサンタクロースを連想させる仕草をした。
「彼だけサンタクロースの服を着ていた……それが決定打になったと言うことは、目撃情報があったのですか?」
彼女はうなずく。
「マンションのすぐ前に中学校があるんだけどね、そこ、午前一時に警備の人が見回りにくるらしくてさ。その警備員がサンタクロースのカッコをした男が大きな荷物を背負ってマンションから出て行くのを見てたんだって」
「遺体はマンションの外で発見されている……他のメンバーは被害者が外に出て行くのを見てはいないのですよね?」
「そう」
「では、サンタクロースのプレゼントに見せかけて死体を運び出したと警察は考えていたのでしょうか」
「正解。さすが探偵。話が早いなあ」
「しかし、ADだけが怪しいとは言い切れません。あらかじめ用意しておけば誰にでもサンタクロースの格好はできますよ」
「まあねー。クリスマスだし。衣装だけなら簡単かも」
「ですから、それだけが理由とは思えないのですが……」
「マネージャーはすごくマッチョで大きいんだよね。昔プロレスやってたらしくって。警備の人が見た姿と明らかに違ってたんだって。だから、マネージャーじゃない」
「サンタクロースの衣装を着て荷物を背負っていたなら、ごまかせてしまいそうですが?」
「マネージャー、2メートル近い大男だからさ。体重も100キロ超えてるし」
なるほど、それ程の大男となれば、サンタクロースの衣装を着ていても特徴を隠せない。
紗川は頷き、「では貴女の同僚は?」と尋ねた。
「女だからね。スタントと言っても、車だから。そんなに筋肉があるわけじゃないしね。参考までに見てみる? カースタントの筋肉」
彼女は二頭筋を膨らませるように拳を作ったが、特に筋肉質と言う印象は受けない。
「同僚もこんなもん。女の子をかついで歩いたらよたよたしちゃう。警備の人が見た時は、そんなによたよたしてなかったって話だし。同僚には無理だわ」
言いながら荷物を背負ってふらつく動きをする。
紗川は頷いてから、ならば警察の判断は正しいのでは? と答えた。
様々な意見があるが、日本の警察は優秀だ。特に殺人事件ともなれば、刑事課が動く。激務と分かっていて刑事になるのはそれなりの意欲がある者だけだ。
しかし彼女は首を振った。
「でも、ADが犯人だと、おかしいんだよね」
犯人当てと言う軽い言い方からは思い至らなかった言葉だ。
女性は面白そうな顔で微笑んでいる。
「女優が殺されたとなれば、大騒ぎになっていそうですが……未だ、そう行った報道は耳にしていません」
「情報が出ないようにしてるみたいだから。まあ、嘘だって思ってもいいけど」
「では、創作だと思って聞くことにします」
「あはは、そうして」
「それで、四名のうちの一名が殺されたと言うことは、残りの三名が発見したと言うことでしょうか」
「それがさ。みんな酔いつぶれて寝ちゃったから、朝になって警察が来て、はじめて知ったんだよね。女優が殺されたって」
「警官に起こされた?」
「そう」
「じゃあ、死体はパーティーをしたマンションの一室ではなく、別の場所で発見されたのでしょうか」
共に飲んでいた友人達ではなく、別の誰かが遺体を発見したのでなければ、警察が知らせにくるはずがない。
紗川の問いに、彼女は頷いた。
「そう。みんなびっくりよ。前の日、結構飲んでたし。みんなぼんやりしてたところへ、警察が来てさ? 何が起きたか分からないでいるうちに、ADの子が捕まっちゃったんだよね」
「理由は?」
「ほらADは女優と付き合ってたって言ったでしょ? どうも別れ話が出てたみたいでさ。でも、男のほうは別れたくなかったらしくて」
なるほど、よく聞く痴情の縺れと判断したのだろうと、紗川は内心で頷いた。
「となると、別れるの別れないのが動機の殺人だって思うでしょ? でもそんな簡単な事件じゃないんだな」
「だからこその犯人当てですね。ところで、警察がADを犯人としたのは動機以外では何があったのでしょうか」
「目撃者がいるわけよ、サンタのカッコした奴が怪しいって。彼はさ、サンタクロースのカッコしてたのよね。だから捕まっちゃった」
そう言って、あごひげをたくわえ荷物を背負うサンタクロースを連想させる仕草をした。
「彼だけサンタクロースの服を着ていた……それが決定打になったと言うことは、目撃情報があったのですか?」
彼女はうなずく。
「マンションのすぐ前に中学校があるんだけどね、そこ、午前一時に警備の人が見回りにくるらしくてさ。その警備員がサンタクロースのカッコをした男が大きな荷物を背負ってマンションから出て行くのを見てたんだって」
「遺体はマンションの外で発見されている……他のメンバーは被害者が外に出て行くのを見てはいないのですよね?」
「そう」
「では、サンタクロースのプレゼントに見せかけて死体を運び出したと警察は考えていたのでしょうか」
「正解。さすが探偵。話が早いなあ」
「しかし、ADだけが怪しいとは言い切れません。あらかじめ用意しておけば誰にでもサンタクロースの格好はできますよ」
「まあねー。クリスマスだし。衣装だけなら簡単かも」
「ですから、それだけが理由とは思えないのですが……」
「マネージャーはすごくマッチョで大きいんだよね。昔プロレスやってたらしくって。警備の人が見た姿と明らかに違ってたんだって。だから、マネージャーじゃない」
「サンタクロースの衣装を着て荷物を背負っていたなら、ごまかせてしまいそうですが?」
「マネージャー、2メートル近い大男だからさ。体重も100キロ超えてるし」
なるほど、それ程の大男となれば、サンタクロースの衣装を着ていても特徴を隠せない。
紗川は頷き、「では貴女の同僚は?」と尋ねた。
「女だからね。スタントと言っても、車だから。そんなに筋肉があるわけじゃないしね。参考までに見てみる? カースタントの筋肉」
彼女は二頭筋を膨らませるように拳を作ったが、特に筋肉質と言う印象は受けない。
「同僚もこんなもん。女の子をかついで歩いたらよたよたしちゃう。警備の人が見た時は、そんなによたよたしてなかったって話だし。同僚には無理だわ」
言いながら荷物を背負ってふらつく動きをする。
紗川は頷いてから、ならば警察の判断は正しいのでは? と答えた。
様々な意見があるが、日本の警察は優秀だ。特に殺人事件ともなれば、刑事課が動く。激務と分かっていて刑事になるのはそれなりの意欲がある者だけだ。
しかし彼女は首を振った。
「でも、ADが犯人だと、おかしいんだよね」
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!
オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ランの父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリーだった。
ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。
学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。
当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。
同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。
ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。
そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。
まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。
その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。
こうしてジュリーとの同居が決まった。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
私の優しいお父さん
有箱
ミステリー
昔、何かがあって、目の見えなくなった私。そんな私を、お父さんは守ってくれる。
少し過保護だと思うこともあるけれど、全部、私の為なんだって。
昔、私に何があったんだろう。
お母さんは、どうしちゃったんだろう。
お父さんは教えてくれない。でも、それも私の為だって言う。
いつか、思い出す日が来るのかな。
思い出したら、私はどうなっちゃうのかな。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる