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プロローグ
「時は来た。汝の封を解き、真の姿を開放する。我は時を進めし者、ラッセルオーリー・ラスト!」
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ラスは大物を前にして諦めるような男ではない。
脳内で金貨の枚数を数えつつ、もう一度、解除を試みようとしたその時だ。轟々と唸るような風の音の中から、声が聞こえてきた。
──ふふふっ。
愉快そうに笑う、女の声。
「やっぱり、封じられているのは、人間か!」
音が聞こえるということは、封印に綻びが出来たということだ。
望みはまだある。そう思えば、俄然やる気が出るというものだろう。
にやりと笑ったラスは杖を握る手に力を込めた。
「ちーっとばかし、手荒に行くぜ!」
ガツンっと杖で床を叩き、その先を魔法陣に突き立てる。
「時に抗うなかれ。扉は開かれる!」
まるで錠前に差し込むように、杖の先は魔法陣が描かれた床に、ずぶずぶと入っていった。
ガチャッと音が響いた瞬間だ。
爆音とともに、菫色の風がはじけ飛んだ。照明器具も全て割れ、部屋中の物が一瞬、舞い上がると床に散乱した。
強烈な爆風に飛ばされたラスは、壁に叩きつけられる直前で防御魔法を発動した。おかげで大きな衝撃を受けることはなかったが、それでもいたる所に切り傷を作っていた。
切れた口の中に広がる血をツバとともに吐きだし、足元に散らかったものを蹴ってどかす。
明かりを失った部屋の様子を探るように、ラスは菫色の瞳を細めた。
「解除、出来た……のか?」
外から差し込む夜明け前の薄明かりの中、魔法陣を描いた辺りを見るが、すでに白銀の輝きは消えていた。よく見れば、そこに人影が一つ。
窓ガラスは粉々に砕け、外から吹き込んだ風を孕んだカーテンがバサバサと音を立てた。
「ふふっ……ふふふっ」
艶のある笑い声が響き、ゆらりと影が動いた。
薄暗い中でも分かる赤いドレスがふわりと揺れた。
「……女?」
外から差し込むわずかな薄明かりの中、こぼれんばかりの白いふくらみがたゆんと揺れた。くびれた腰の下で形の良い臀部が左右に揺れれば、ドレスの裾が風に揺れる花弁のように広がった。
白魚のような細い指に握られる銀の手鏡が鈍く光ると、笑い声がぴたりと止んだ。
何かがおかしい。
異様な威圧感を感じたラスは、とっさに身構えた。
「妾をこのようなものに封じるとは……あの男、許しはせぬ」
憤りを滲ませる冷ややかな声が響く。
影がゆっくりと振り返ると、長いハニーブロンドの髪がふわりと揺れた。
ラスの背筋を冷たいものが滴った。
(……マズい!)
今まで感じたことのない威圧感と魔力の波が向けられ、ラスは息を飲んだ。
薄暗い部屋でも分かるほど、女の赤い瞳が鋭い光を放った。
「お前が、妾の封印を解いたのか? ご苦労であった」
ラスを指さした爪の先に、星の瞬きを思わせる白い光が灯った。
「褒美として、その魔力、妾の糧としてもらってやろう」
赤い唇がつり上がった瞬間、ラスは床に突き刺したままの杖に向かって駆けだした。
ここまで来て、報酬を得ずに死んでたまるか。そう独り言ちる間もなく手を伸ばし、それを掴み取ろうとした。
朝日が差し込み、強烈な衝撃が再び部屋とラスの体を吹き飛ばした。
脳内で金貨の枚数を数えつつ、もう一度、解除を試みようとしたその時だ。轟々と唸るような風の音の中から、声が聞こえてきた。
──ふふふっ。
愉快そうに笑う、女の声。
「やっぱり、封じられているのは、人間か!」
音が聞こえるということは、封印に綻びが出来たということだ。
望みはまだある。そう思えば、俄然やる気が出るというものだろう。
にやりと笑ったラスは杖を握る手に力を込めた。
「ちーっとばかし、手荒に行くぜ!」
ガツンっと杖で床を叩き、その先を魔法陣に突き立てる。
「時に抗うなかれ。扉は開かれる!」
まるで錠前に差し込むように、杖の先は魔法陣が描かれた床に、ずぶずぶと入っていった。
ガチャッと音が響いた瞬間だ。
爆音とともに、菫色の風がはじけ飛んだ。照明器具も全て割れ、部屋中の物が一瞬、舞い上がると床に散乱した。
強烈な爆風に飛ばされたラスは、壁に叩きつけられる直前で防御魔法を発動した。おかげで大きな衝撃を受けることはなかったが、それでもいたる所に切り傷を作っていた。
切れた口の中に広がる血をツバとともに吐きだし、足元に散らかったものを蹴ってどかす。
明かりを失った部屋の様子を探るように、ラスは菫色の瞳を細めた。
「解除、出来た……のか?」
外から差し込む夜明け前の薄明かりの中、魔法陣を描いた辺りを見るが、すでに白銀の輝きは消えていた。よく見れば、そこに人影が一つ。
窓ガラスは粉々に砕け、外から吹き込んだ風を孕んだカーテンがバサバサと音を立てた。
「ふふっ……ふふふっ」
艶のある笑い声が響き、ゆらりと影が動いた。
薄暗い中でも分かる赤いドレスがふわりと揺れた。
「……女?」
外から差し込むわずかな薄明かりの中、こぼれんばかりの白いふくらみがたゆんと揺れた。くびれた腰の下で形の良い臀部が左右に揺れれば、ドレスの裾が風に揺れる花弁のように広がった。
白魚のような細い指に握られる銀の手鏡が鈍く光ると、笑い声がぴたりと止んだ。
何かがおかしい。
異様な威圧感を感じたラスは、とっさに身構えた。
「妾をこのようなものに封じるとは……あの男、許しはせぬ」
憤りを滲ませる冷ややかな声が響く。
影がゆっくりと振り返ると、長いハニーブロンドの髪がふわりと揺れた。
ラスの背筋を冷たいものが滴った。
(……マズい!)
今まで感じたことのない威圧感と魔力の波が向けられ、ラスは息を飲んだ。
薄暗い部屋でも分かるほど、女の赤い瞳が鋭い光を放った。
「お前が、妾の封印を解いたのか? ご苦労であった」
ラスを指さした爪の先に、星の瞬きを思わせる白い光が灯った。
「褒美として、その魔力、妾の糧としてもらってやろう」
赤い唇がつり上がった瞬間、ラスは床に突き刺したままの杖に向かって駆けだした。
ここまで来て、報酬を得ずに死んでたまるか。そう独り言ちる間もなく手を伸ばし、それを掴み取ろうとした。
朝日が差し込み、強烈な衝撃が再び部屋とラスの体を吹き飛ばした。
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