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第4章 たいせつな人を守りたい
142 やりたい、やらせて ※
しおりを挟むブランケット越しにそっと触れただけなのに、ヴァンは「ふ……」と苦し気に息を漏らした。
大結界再構築の儀式の間は、魔力を最大限に高めた状態を維持していなければならない。魔法酔いの状態を耐えながら、意図的に魔力を暴走させる行為だ。だから体内の循環を調整して、肉体にかかる負担をできるだけ抑えていた……。
調節が上手くいっていないんだ。
ジャスパーが担当していた時は、こんな状態になんかならなかった。
単に治癒術者の技術だけじゃなく相性の問題もある。だからこの儀式を終えるかジャスパーが戻って調整をかけないかぎり、この状態が続く……のだろう。
「ヴァン……辛い?」
耳元で囁く。
熱にうかされた潤む緑の瞳が俺を見つめ、強がるように瞼を閉じた。
大丈夫。このぐらい耐えられる。
そう答えるように唇が動いて息を吸う。俺に心配かけまいと……負担をかけないようにとして、苦しいのを我慢しているんだってわかる。
俺は……たまらない気持ちになって、ヴァンの胸に額を押し付けた。
思えば以前、ベネルクの街の地下にいる魔物を狩りに行った時も、戻ったヴァンはこんなふうに猛っていた。
街の地下に出現する魔物なんか、ヴァンにしてみたら大したこと無いヤツばかりだ。それでも緊張と興奮でこんな風になってしまうこともあると言っていた。
あの晩は、互いのものを一緒にこすり合って、吐き出して……。
ナジームさんが「抜いてやれ」と言っていたのは、そういう意味だったんだ。
「ヴァン、辛いよね。今……俺が楽にするから……」
「リク……」
「大丈夫、やり方は教えてくれただろ?」
「このため、じゃ……ない」
「分かっている」
ヴァンにそんな意図があったわけじゃないだろうけれど、お披露目会の夜、しゃぶって抜いた。あの方法が一番、ヴァンの負担が少ないはずだ。
「俺がやりたいんだ。好きだから、力になりたい。癒したい」
形を確かめるように、さわさわとブランケット越しに撫でさする。それだけでヴァンは喘ぎに似た吐息を漏らした。
「無理……しなくて、いい」
「無理なんかじゃない」
俺はジャスパーのように魔力の調整や治癒はできないが、慰めることはできる。
「やりたい。やらせて。……ね、任せて」
絶対嫌ならどんな状態だろうと、「やめろ」言う。
けれどヴァンは切なそうに眉根を歪めただけで、荒い呼吸を繰り返した。
「俺なんかじゃどうしても嫌だったら、言って」
「……嫌な、わけが、ない……」
「うん」
俺は微笑みながらブランケットをはぎ取る。ヴァンの寝間着のシャツの前を広げ、下着ごと下履きも取り去ると、そこには血管が浮き上がるほどにガチガチに猛る陰茎があった。
いつもより太いんじゃないだろうか。
熱をもって、これじゃあ辛いはずだ。
そう思いながら指を這わせると、びくり、と苦し気に反応した。ヴァンから熱い吐息が漏れる。
朝日が、カーテンの隙間から、薄く射しこんでいる。
ぼんやりと明るい部屋のベッドの上で、ヴァンの股の間に移動した俺は、そっと両手で包み込んだ。そのまま……舌先を伸ばしてつるりとしたカリに這わせる。
「ふ……」
ヴァンが息を吐いて、汗ばむ白い喉をのけ反らした。
辛いからだと分かっていても、喘ぎに似た吐息と共に喉ぼとけが上下するのを見て、俺の背筋がぞくぞくしてくる。
気持ちよくさせたい。
感じて、イかせたい。
「んんっ……ん、いつでも……イっていい、から、ね……」
先端に舌を這わせ、軽くほじるようにしてから、またその周囲をゆっくりと舐めねぶる。片手で袋を包み、もう片手で根元からそっと指を這わせていく。
あまり強くしたら痛いだろうか。
でも、軽すぎる触れ方では感じないだろうか。
俺は前髪の隙間から、ヴァンの表情へと視線を向けた。
頬を赤くした艶っぽいヴァンが、潤む瞳で俺を見つめている。
「ヴァ、ン……んんっ……」
「……リク……」
片手の指が、俺の髪に挿し込まれていった。
そのまま愛撫するみたい頭を撫でる。喘ぎを漏らしながら、ヴァンは後頭部を枕に押し付ける。
気持ちいのかな。
感じて、くれているのかな……。
先端から透明な汁が、じわり、と溢れ出る。
それを舌で舐め、すくい、俺は頭の角度を変えながら、丹念に愛撫していく。ヴァンの声が漏れる。
「は……っあ……」
「ここ? ひもち、いい……?」
裏筋を舐め上げ、くびれにそうように丹念に舌を這わせた。
俺の唾液でてらてらになった陰茎はガチガチで、狂暴なくらいに張り詰めて熱い。本当は口の中に全部収めたいのに、俺では先端から半分も入らないんじゃないだろうか。
それでも、少しでも広く包み込みたくて、口の中に含んだ。
歯を引っかけないように注意して、頭を上下させながら抜き差しする。飲み込めない涎が、糸を引きながら根元の方へと流れ落ちていく。
「うっ……く……」
「……んんっ、ん、ぅ……ヴァ、ン」
喉の奥まで入れて、扱いてあげたいのにどうしてもできない。
辛そう。
早く、早く、イかせてあげたい。
唇を閉じるようにして吸い上げる。けど……タイミングが合わないのか、俺の吸う力が弱いのか、ヴァンが達しそうな気配はない。
ただ……苦しそうな喘ぎが漏れるだけ、だ。
「ヴァ、ン……イ、けない?」
一度でも抜けば楽になる。
そう思うのに、俺が下手すぎるせいで逆にヴァンを苦しめているんじゃないだろうか。
「ごめんね、ごめんね……ヴァン」
「リク……」
辛そうに眉根をよせる。
そして首を軽く横に振って、俺に微笑みかけた。
「リク……の、……で…………たい」
「なに? もう一度、言って?」
「リクのなか……で……」
はぁ……、と熱い息が溢れて、続く言葉は喘ぎに溶けた。けど、ヴァンの願いは伝わった。
「俺のナカで、イキたいんだね?」
そうだ、と言うようにヴァンの瞼が閉じられた。
自分の下腹部に片手を添える。
その更に下では、俺の男性器も熱いぐらいに充血していた。
俺は微笑みながら身を乗り出して、胸から鎖骨、首筋に耳の裏へと唇を這わせる。
ヴァンの形のいい耳たぶを軽く噛みながら、そっと囁く。
「うん……いいよ……」
この身体の中になら、ヴァンのすべてを包み込むことができる。そのための方法も、わかる……。
「……準備する……から、待っていて……」
その耳元で囁いて軽く口づけすると、俺は身体を起こした。
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