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第三章 初仕事は蒼へと向かって
悲しき罠に引き込まれ
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「ーーいーーーばれーーー」
「ーーーろーーーがーーー」
遠くで声が聞こえる。深い眠りの中から、薫は微かに意識を浮上させる。
幾重にも重なる男達の声だ。目蓋越しに照らす明かりはユラユラと揺れて、複数人が薫のすぐ近くで何かを話しているようだが、まだ夢の中に片足を突っ込んでいる頭では上手く聞き取ることが出来なかった。
ぶるり、薫は身震いする。肌寒い。アルトのフカフカな毛並みに包まれて心地良く眠りについたところまでは覚えているのだが、今となってはその温もりは一切感じられない。なんだか蒸し暑くて、言うなれば男臭くて獣臭い。そんな居心地の悪さもあって、緩やかに意識を覚醒させた薫は瞳を開いた。
「あ、え……?」
就寝時とは異なる景色に困惑する薫。真っ先に見えたのは小汚い幌馬車の天井。そして、薫をぐるりと取り囲んで見下ろしてくる運び人の男達の姿であった。
「うわっ、起きちまいましたよダリウスさん。どうします?」
「構いやしねぇよ。寝てる奴を嬲ったところで面白くねぇだろうが。せめて、見張りの奴らにも声くらい聞かせてやらねぇとな」
「な、なんですかコレ!?一体どういうつもりなんですか!?」
仲間内で笑うダリウス達を追求するべく立ち上がろうとした薫だったが、両手を使えずに失敗した。気付けば薫の両腕は後ろ手に縛られており、それだけでなく一糸纏わぬ姿のまま馬車の床に転がされていることに気付いた。
事態が全く呑み込めない。一体どうなっているのか、ヴァルツとアルトはどうしたのか。混乱しすぎて頭の上に疑問符を浮かべるばかりの薫に気付いたように、ダリウスがニヤついた顔を向けてきた。
「まだわかんねぇか?テメェらには港町までの護衛にしちゃ高い金を支払ってんだ。コッチでも働いてもらわなきゃ採算が取れねぇだろ?」
「あ、ああ……っ」
ようやく薫の頭も理解した。自分は今まさに、ダリウス達の慰み者にされようとしているのだと。自分を取り囲んでいる獣人達は六人。気付いてみれば全員が服を脱いでおり、その股座には巨体に見合うみっちりと詰まっていそうな玉袋と人間のそれとは少し形状の異なる太くて長いモノが鎮座している。
まさか、これから全員を相手にさせられてしまうのか。薫の恐怖のボルテージは一気に臨界点を突破した。
「あ、アルトさんっ!ヴァルツさーーーむぐっ!?」
「おっと、あまり騒ぐんじゃねぇよ。せっかく綺麗に生え揃ってんだ。パンも齧れねぇ口になりたくねぇだろ?」
助けを呼ぼうとした薫の口にダリウスの人差し指と中指が押し込まれる。ダリウスは恐怖に震える薫の反応を楽しみながら、舌の表面を擽るように指を躍らせる。
「それに、奴らを呼んでも無駄だぜ。テメェらには、たっぷりと眠り薬を仕込んだ酒を飲ませたからな。テメェは飲む量が少なかったみてぇだが、他の奴らはまだ夢の中だろうぜ」
「…………っ」
まさか、飲まされた酒にそんなものが入れられていようとは。だが、薫がショックを受けたのは薬が盛られていたという事実ではなく、もう一つの事柄であった。
「おい、何を下がってんだ。テメェが一番の功労者だろうが。ちゃんとツラを見せてやれよ」
「い、いやっ……俺は……っ」
「テクト、さん……」
周りから押し出されるように薫の前に姿を見せたのは、テクトであった。彼の登場によって明らかにされたのは、この異世界で初めて友人になれたと思っていた人物からの裏切り。悲しげな薫の眼差しから逃れるように、彼は馬車の床を見下ろしている。
「そう責めてやるなって。コイツにも深い事情があるんだよ」
「コイツはなぁ、前に運んでた積荷から金細工の装飾品を一つ失くしちまって、デカい損失を出しちまったんだ。その損失をダリウスさんが肩代わりしてやったから、コイツはダリウスさんに逆らえねぇのさ」
「ち、違うっ!俺はちゃんと運んでる時はずっと積荷を見てたんだ!だから、途中で積荷の点検をした誰かがちょろまかしたはずなんだって!」
「もういいだろ。失くしちまったことに変わりはねぇよ。これで事情がわかったか?」
歯を食いしばり、震えるほど拳を握りしめるテクトの反応が、彼らの言葉が真実であるのだと証明していた。そんな事情を抱えた彼を、責めることは出来ない。薫はテクトから視線を逸らし、ダリウスを睨み付ける。
「いいねぇ……そのツラがどう歪んでくのか、想像するだけでそそられちまう。あまり時間も無ぇ。さっさと始めようじゃねぇか」
「ひっ……や、やめ、……んんぅっ!?」
ダリウスが薫へと覆い被さり、指を引き抜いた薫の唇に口元全体を覆うようにむしゃぶりついてきた。頭を両サイドからガッチリと固定し、薫の小さく柔らかな唇の感触を愉しむかのように口元を押し付け、もにゅもにゅと咀嚼するかのように吸い上げながら口元を動かす。
キスをするのはギラン以来の二度目。だが、今回は媚薬の効果は無い。素面の状態で、しかも拘束されたまま圧倒的体格差のある相手から貪られる恐怖は、薫から早くも抵抗の二文字を奪い去ってしまった。
「んむ、…じゅるるっ、ああ、美味ぇ……じゅる、じゅぞぞ…っ」
「はぁ…、っ…んうう……っ!」
すぐに薫の舌を割って、ダリウスの厚く長い舌が侵入を果たす。それは逃れようと端へと逃げる薫の舌を絡め取り、夢中になってぐちゅぐちゅと唾液を混ぜ合わせては絡め取った薫の舌ごと吸い上げた。互いに快感を得るためではなく、一方的に興奮を味わう独りよがりのキスである。ごくり、ごくりとダリウスの喉を波打つたびに、薫は自身の何かを吸い取られているかのような感覚を覚えた。
「だ、ダリウスさん、俺達も……っ」
「ん、む……まぁ待て、今はまだ堪能させろ。お前らにも後でくれてやるからよ。見ろよ、この女みてぇな顔に白い身体をよ。コイツを好きに出来るなんざ、高級娼館に金を積んでもなかなか出来ることじゃねぇぞ……!」
「や、めぇ……ひ、ぁぁ……っ」
じゅるりとダリウスの舌が薫の無防備な首筋を舐め上げ、ぐにぐにと柔らかな尻を揉みしだかれる。早く終わって欲しいと願う薫だが、宴は未だ始まったばかり。複数人から肉欲の籠った瞳で見下ろされ、薫は恐怖に小さな身体を震わせた。
「ーーーろーーーがーーー」
遠くで声が聞こえる。深い眠りの中から、薫は微かに意識を浮上させる。
幾重にも重なる男達の声だ。目蓋越しに照らす明かりはユラユラと揺れて、複数人が薫のすぐ近くで何かを話しているようだが、まだ夢の中に片足を突っ込んでいる頭では上手く聞き取ることが出来なかった。
ぶるり、薫は身震いする。肌寒い。アルトのフカフカな毛並みに包まれて心地良く眠りについたところまでは覚えているのだが、今となってはその温もりは一切感じられない。なんだか蒸し暑くて、言うなれば男臭くて獣臭い。そんな居心地の悪さもあって、緩やかに意識を覚醒させた薫は瞳を開いた。
「あ、え……?」
就寝時とは異なる景色に困惑する薫。真っ先に見えたのは小汚い幌馬車の天井。そして、薫をぐるりと取り囲んで見下ろしてくる運び人の男達の姿であった。
「うわっ、起きちまいましたよダリウスさん。どうします?」
「構いやしねぇよ。寝てる奴を嬲ったところで面白くねぇだろうが。せめて、見張りの奴らにも声くらい聞かせてやらねぇとな」
「な、なんですかコレ!?一体どういうつもりなんですか!?」
仲間内で笑うダリウス達を追求するべく立ち上がろうとした薫だったが、両手を使えずに失敗した。気付けば薫の両腕は後ろ手に縛られており、それだけでなく一糸纏わぬ姿のまま馬車の床に転がされていることに気付いた。
事態が全く呑み込めない。一体どうなっているのか、ヴァルツとアルトはどうしたのか。混乱しすぎて頭の上に疑問符を浮かべるばかりの薫に気付いたように、ダリウスがニヤついた顔を向けてきた。
「まだわかんねぇか?テメェらには港町までの護衛にしちゃ高い金を支払ってんだ。コッチでも働いてもらわなきゃ採算が取れねぇだろ?」
「あ、ああ……っ」
ようやく薫の頭も理解した。自分は今まさに、ダリウス達の慰み者にされようとしているのだと。自分を取り囲んでいる獣人達は六人。気付いてみれば全員が服を脱いでおり、その股座には巨体に見合うみっちりと詰まっていそうな玉袋と人間のそれとは少し形状の異なる太くて長いモノが鎮座している。
まさか、これから全員を相手にさせられてしまうのか。薫の恐怖のボルテージは一気に臨界点を突破した。
「あ、アルトさんっ!ヴァルツさーーーむぐっ!?」
「おっと、あまり騒ぐんじゃねぇよ。せっかく綺麗に生え揃ってんだ。パンも齧れねぇ口になりたくねぇだろ?」
助けを呼ぼうとした薫の口にダリウスの人差し指と中指が押し込まれる。ダリウスは恐怖に震える薫の反応を楽しみながら、舌の表面を擽るように指を躍らせる。
「それに、奴らを呼んでも無駄だぜ。テメェらには、たっぷりと眠り薬を仕込んだ酒を飲ませたからな。テメェは飲む量が少なかったみてぇだが、他の奴らはまだ夢の中だろうぜ」
「…………っ」
まさか、飲まされた酒にそんなものが入れられていようとは。だが、薫がショックを受けたのは薬が盛られていたという事実ではなく、もう一つの事柄であった。
「おい、何を下がってんだ。テメェが一番の功労者だろうが。ちゃんとツラを見せてやれよ」
「い、いやっ……俺は……っ」
「テクト、さん……」
周りから押し出されるように薫の前に姿を見せたのは、テクトであった。彼の登場によって明らかにされたのは、この異世界で初めて友人になれたと思っていた人物からの裏切り。悲しげな薫の眼差しから逃れるように、彼は馬車の床を見下ろしている。
「そう責めてやるなって。コイツにも深い事情があるんだよ」
「コイツはなぁ、前に運んでた積荷から金細工の装飾品を一つ失くしちまって、デカい損失を出しちまったんだ。その損失をダリウスさんが肩代わりしてやったから、コイツはダリウスさんに逆らえねぇのさ」
「ち、違うっ!俺はちゃんと運んでる時はずっと積荷を見てたんだ!だから、途中で積荷の点検をした誰かがちょろまかしたはずなんだって!」
「もういいだろ。失くしちまったことに変わりはねぇよ。これで事情がわかったか?」
歯を食いしばり、震えるほど拳を握りしめるテクトの反応が、彼らの言葉が真実であるのだと証明していた。そんな事情を抱えた彼を、責めることは出来ない。薫はテクトから視線を逸らし、ダリウスを睨み付ける。
「いいねぇ……そのツラがどう歪んでくのか、想像するだけでそそられちまう。あまり時間も無ぇ。さっさと始めようじゃねぇか」
「ひっ……や、やめ、……んんぅっ!?」
ダリウスが薫へと覆い被さり、指を引き抜いた薫の唇に口元全体を覆うようにむしゃぶりついてきた。頭を両サイドからガッチリと固定し、薫の小さく柔らかな唇の感触を愉しむかのように口元を押し付け、もにゅもにゅと咀嚼するかのように吸い上げながら口元を動かす。
キスをするのはギラン以来の二度目。だが、今回は媚薬の効果は無い。素面の状態で、しかも拘束されたまま圧倒的体格差のある相手から貪られる恐怖は、薫から早くも抵抗の二文字を奪い去ってしまった。
「んむ、…じゅるるっ、ああ、美味ぇ……じゅる、じゅぞぞ…っ」
「はぁ…、っ…んうう……っ!」
すぐに薫の舌を割って、ダリウスの厚く長い舌が侵入を果たす。それは逃れようと端へと逃げる薫の舌を絡め取り、夢中になってぐちゅぐちゅと唾液を混ぜ合わせては絡め取った薫の舌ごと吸い上げた。互いに快感を得るためではなく、一方的に興奮を味わう独りよがりのキスである。ごくり、ごくりとダリウスの喉を波打つたびに、薫は自身の何かを吸い取られているかのような感覚を覚えた。
「だ、ダリウスさん、俺達も……っ」
「ん、む……まぁ待て、今はまだ堪能させろ。お前らにも後でくれてやるからよ。見ろよ、この女みてぇな顔に白い身体をよ。コイツを好きに出来るなんざ、高級娼館に金を積んでもなかなか出来ることじゃねぇぞ……!」
「や、めぇ……ひ、ぁぁ……っ」
じゅるりとダリウスの舌が薫の無防備な首筋を舐め上げ、ぐにぐにと柔らかな尻を揉みしだかれる。早く終わって欲しいと願う薫だが、宴は未だ始まったばかり。複数人から肉欲の籠った瞳で見下ろされ、薫は恐怖に小さな身体を震わせた。
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※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
心理描写が丁寧で大好きな作品です!
作品で何回も読み返して楽しんでます。
ヴァルツさんカッコいい!
感想ありがとうございます。まだまだ三人の仕事は続きますので、これからもご愛読頂ければ幸いです。
感想ありがとうございます。他の追随を許さないくらい強いのも嫌いではないのですが、個人的には努力する主人公に尊みを感じるので、ある程度の素質は持たせつつも向上の余地を持たせるように考えています。