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12.カフェに行く①

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 ペンダントを受け取ると、ルシエルは早速私の首元に付けてくれた。 
 宝石のサイズも小さいので、普段着に合わせても違和感を感じない。

(これなら毎日付けていても大丈夫そうかも)

 ペンダントに触れて私が嬉しそうに表情を緩めていると、彼はそれに気付いた様子で「気に入ってくれて良かった」と言った。

「ありがとうございます、お兄様! 私の宝物にしますねっ!」
「宝物とは大袈裟だな。だけど、それくらい喜んでくれているのなら、僕も嬉しいよ」

 彼の満足そうな顔を見ていると、私は余計なことは気にせず素直に喜んだほうがいいのだと感じた。
 折角の楽しい気持ちを台無しにしたくはなかったし、大好きな人からのプレゼントが嬉しくないはずがない。
 こんなことは滅多にないだろうし、今日は特別な日だと思って楽しむことに専念しようと思う。
 
「お兄様、次はどこに行くんですか?」
「少し街を見て周ったら、少し休憩をしようか。フィーが好きそうな店があるから、そこに行く?」

「どんなところだろう。行ってみたいですっ!」
「じゃあ決まりだね」

 私達はそんな話を繰り広げながら、二人で店を色々と見て周った。
 一人では絶対に来れない貴族街を、ルシエルと並んで歩けていることが既に嬉しい。
 次第に変な緊張感も消えて、素直に楽しむことが出来ていた。


 ***


 ある程度店を見終わると、ルシエルが勧めてくれたカフェへと移動した。
 外装は白い建物で、清楚なイメージを感じる。
 天井が高く開放的で、全個室となっているため、ゆったりと過ごすことが出来そうだ。
 内部も白を基調としているのか、多くの家具の色も白かそれに近い系統のものが揃っている。

「すごく綺麗なお店ですね」
「最近オープンしたばかりらしいからね」

「お兄様は来たことがあるんですか?」
「僕も来るのは初めてだよ。ここを知っていたのは、フィーが好きそうな店を調べていたからね」

 私のために調べてくれたことを知り、再び胸の奥がドキドキと騒めき始める。

「ここに立っていても休憩出来ないよ」
「そう、ですね」

 私が一人で感動していると、彼が手を引いてくれて部屋へと移動する。
 個室も余計なものがないせいか、すっきりしていて落ち着いて過ごせそうだ。

「メニューも僕に任せてもらってもいいかな? といっても、もう予約はしてあるんだけど」
「なんで……?」

「フィーの言いたいことは何となく分かるよ。今ここに来たばかりなのに、いつの間に予約したんだろうって思っているでしょ?」

 今考えていたことを読み取るかのように彼は口に出してきたので、私は小さく何度も頷いた。
 ここに限らず、兄は全て先を読んで動いているような気がする。

「朝、邸を出る前に使用人の一人を先に王都に向かわせたんだ。その時に予約を。そのペンダントは結構前に完成して、いつでも受け取れる状態にはしてもらっていたけどね」
「あのっ、この帽子は?」

「ああ、それはね、本当に偶然。フィーがそのワンピースを着ている時に、帽子をプレゼントしようとは思っていたけど、まさか今日になるとは僕も想像していなかったよ」
「そうだったんですね。謎が全て解けました!」

 疑問に思っていたことが全て判明し、胸の奥がスッキリ出来た。
 ルシエルが私のために色々と裏で用意していてくれたことには変わりないし、その気持ちが本当に嬉しくて堪らない。
 ますます彼に心が惹かれてしまいそうな気がした。

 
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