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ようこそAnother world
#02 遭遇Destiny
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大体三十分くらい経過しただろうか。
道標も何も無い森をあてもなく歩くのは正直なところ無謀という言葉が頭によぎり始めた。
いつしか僕は歩くのをやめ、木に背中を預けて寄り掛かり、木々の枝葉によって作られた緑の天井を見上げる。
歩いている途中、スマートフォンを確認したけれど電波表示は圏外。更にはこの最悪なタイミングで故障したのか時刻は文字化けのような感じで正確な時間が分からなかった。
ただ真上から光が差し込んでいる、ということは時刻的にはお昼であっているのかな。
「参ったなぁ……どうしようこれ」
ボーッとしているのは良くないというのはわかっている。こうしている間にも時間はどんどん過ぎていく訳だし、いつしか日は暮れてしまう。気持ちはかなり焦ってはいるけど、じゃあどうしたら良いんだよ、って気持ちが勝ってしまって動く気になれない。
手持ち無沙汰にポケットに入っていた変身宝石であるエトヴァスクリスタルを手に取り、途方に暮れる。
「……とりあえず立ち止まっておこう」
変に動いてさらに迷ったら笑えない状況になる。大人しく待っていよう、と考えた僕はクリスタルをポケットにしまってその場に座り込む。
***
青年がいた。見たことの無い素材で作られた手の込んだ服装。そしてこの地域では珍しい黒髪の青年。
彼は木に寄りかかり、腕を組んで寝息を立てながら眠っている。
右手には服装に似合わない籠手が目立つ。
「旅人にしては服装が……どこかの良いとこの貴族様かな」
青年を見つけた女性、リュウカ・ホワイトロックは顎に手を当て、その青年をつま先から頭の先まで観察する。
起こした方がいいんだろうか、とか変に話しかけて不敬罪だとかいちゃもんをつけられたらどうしようか、と考えているうちに、青年は急に身体をビクッとさせ、ゆっくりと顔を上げた。
顔は整っていた。どうしてこう良いとこの階級の人たちは顔が整っているのだろうか? もちろん全員が全員そうではないということはリュウカも知っているが、その割合としては一般の人よりも多い気がする。
青年は「寝ちゃってたか」と小さく呟き、頭を掻く。
そして欠伸をしながらこちらを見る。
「……こんにちは」
「う、うわぁああ!?」
ビクッと驚いた様子の彼はそのまま勢いよく寄りかかっていた木に頭をぶつけ、痛がりながら頭の後ろを抑え、リュウカを見る。
「もしかして、助けが来たみたいな?」
「助け? えっとアナタ……じゃないか、貴族様は道にお迷いになられたのですか?」
「実はお恥ずかしながら……ん? 貴族様?」
貴族、という言葉にピンと来てない様子の彼は首をかしげる。
「えっと、貴族様ですよね? ここらじゃ見たことのない服装で、その右手の籠手とかも見た感じだと金貨何十枚で取引されているようなみたいな代物ですし」
リュウカは青年の唯一の装備とも言える籠手を指を指す。その視線を追い、意味を理解した彼は勢いよく首を横に振り、「いやいやいやいやいや、まさかまさか。僕なんてそこらにいるモブキャラみたいなもんですよ」と矢継ぎ早に答えた。
「も、ぶきゃら?」
「あぁ、えっと、とにかく僕は貴族じゃないですよ」
青年は立ち上がり、服についた枯れ葉を手で落とす。
「僕は悠介です。石動悠介。一応俳優やってまして、今のニチアサの三人目の戦士としてやってます」
道標も何も無い森をあてもなく歩くのは正直なところ無謀という言葉が頭によぎり始めた。
いつしか僕は歩くのをやめ、木に背中を預けて寄り掛かり、木々の枝葉によって作られた緑の天井を見上げる。
歩いている途中、スマートフォンを確認したけれど電波表示は圏外。更にはこの最悪なタイミングで故障したのか時刻は文字化けのような感じで正確な時間が分からなかった。
ただ真上から光が差し込んでいる、ということは時刻的にはお昼であっているのかな。
「参ったなぁ……どうしようこれ」
ボーッとしているのは良くないというのはわかっている。こうしている間にも時間はどんどん過ぎていく訳だし、いつしか日は暮れてしまう。気持ちはかなり焦ってはいるけど、じゃあどうしたら良いんだよ、って気持ちが勝ってしまって動く気になれない。
手持ち無沙汰にポケットに入っていた変身宝石であるエトヴァスクリスタルを手に取り、途方に暮れる。
「……とりあえず立ち止まっておこう」
変に動いてさらに迷ったら笑えない状況になる。大人しく待っていよう、と考えた僕はクリスタルをポケットにしまってその場に座り込む。
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青年がいた。見たことの無い素材で作られた手の込んだ服装。そしてこの地域では珍しい黒髪の青年。
彼は木に寄りかかり、腕を組んで寝息を立てながら眠っている。
右手には服装に似合わない籠手が目立つ。
「旅人にしては服装が……どこかの良いとこの貴族様かな」
青年を見つけた女性、リュウカ・ホワイトロックは顎に手を当て、その青年をつま先から頭の先まで観察する。
起こした方がいいんだろうか、とか変に話しかけて不敬罪だとかいちゃもんをつけられたらどうしようか、と考えているうちに、青年は急に身体をビクッとさせ、ゆっくりと顔を上げた。
顔は整っていた。どうしてこう良いとこの階級の人たちは顔が整っているのだろうか? もちろん全員が全員そうではないということはリュウカも知っているが、その割合としては一般の人よりも多い気がする。
青年は「寝ちゃってたか」と小さく呟き、頭を掻く。
そして欠伸をしながらこちらを見る。
「……こんにちは」
「う、うわぁああ!?」
ビクッと驚いた様子の彼はそのまま勢いよく寄りかかっていた木に頭をぶつけ、痛がりながら頭の後ろを抑え、リュウカを見る。
「もしかして、助けが来たみたいな?」
「助け? えっとアナタ……じゃないか、貴族様は道にお迷いになられたのですか?」
「実はお恥ずかしながら……ん? 貴族様?」
貴族、という言葉にピンと来てない様子の彼は首をかしげる。
「えっと、貴族様ですよね? ここらじゃ見たことのない服装で、その右手の籠手とかも見た感じだと金貨何十枚で取引されているようなみたいな代物ですし」
リュウカは青年の唯一の装備とも言える籠手を指を指す。その視線を追い、意味を理解した彼は勢いよく首を横に振り、「いやいやいやいやいや、まさかまさか。僕なんてそこらにいるモブキャラみたいなもんですよ」と矢継ぎ早に答えた。
「も、ぶきゃら?」
「あぁ、えっと、とにかく僕は貴族じゃないですよ」
青年は立ち上がり、服についた枯れ葉を手で落とす。
「僕は悠介です。石動悠介。一応俳優やってまして、今のニチアサの三人目の戦士としてやってます」
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