猫舌ということ。

結愛

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お泊まり会

第108話

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駅までの道を鹿島と歩き、駅で鹿島と別れる。僕はそのまま歩いて家に帰った。
見慣れたはずの自分の家の扉がほんの少し懐かしく感じるのと同時にどこか安心感がある。
扉を開く。匠邸の玄関と比べると圧倒的に狭いが
やはりどこか安心感があって少しニヤケそうになる。
「あ、帰ってきた?」
母の声が奥から聞こえる。ひょこっと顔を出す母。
「あ!おかえり~」
リビングまでの廊下の短さ、母の顔、母の声、自分の家の光景に何度も安心感を感じる。
「ただいまぁ~」
靴を脱ぎ、シューズクローゼットに入れ、洗面所で手洗いうがいをし
リュックからTシャツ、下着のパンツ、部屋着を洗濯籠に入れる。
今着ているTシャツも脱ぎ、洗濯籠に入れ、上裸で階段を上る。自分の部屋の扉を開く。
自分の部屋の匂い。電気をつける。すぐに変化に気がついた。ベッドが綺麗になっている。
そして洗濯され綺麗に畳まれた部屋着がベッドの上に置いてあった。
お母さんありがとう!という気持ちと
勝手に部屋入ったんか。という気持ちが同時に襲ってきて
後者の気持ちが勝ちそうになったが、主戦力の僕自身が勝手に部屋入ったんか勢を抑えつけて
お母さんありがとう!の気持ちを勝利に導いた。
リュックからスマホの充電器、結局使わなかったサティスフィーと
サティスフィーの充電器を取り出し、クローゼットにリュックをしまう。
ポケットからスマホを出してジーンズを脱ぎ、しまう。
ベッドの上に丁寧に畳まれた部屋着を着る。スマホをポケット入れ、部屋を出る。
階段に向かって廊下を歩いていると階段からオシャレをした妹が上がってきた。
「おぉ、お兄ちゃんおかえり」
「おぉ、ただいま。出掛けてたん?」
「うん。友達と買い物してきた」
そう言う妹の手にはトートバッグと青いロゴの入った白いビニール袋があった。
「お前それスポーツショップだろ」
「ん?そうだけど?」
「え、部活友達?」
「そそ。服屋とか回ったりーいろいろ回って、ワックも行ってー
で、スポーツショップ行って、で、可愛いTシャツあったから練習着として買ったー」
「そんなもんか。女子高生」
「そんなもんよ女子高生」
そんな会話をして、すれ違う。リビングに入る。
キッチンへ入り、自分のグラスを取り、四ツ葉サイダーを注いでソファーへ行こうとしたが
母がソファーに座っていたためダイニングテーブルの自分の席に座る。
「あ、そうだ。布団干しといたのと部屋着洗っといたよ」
ソファーでテレビを見ている母がこちらを振り返る。
「あぁ~。気づいた気づいた。あんがとー」
「どお?楽しかった?」
「んー。楽しかったよー」
展開のない会話をし、しばらくしたら、部屋着に着替えた妹がリビングに入ってくる。
妹も僕と同じ動線を辿り、グラスにSanta(サンタ)グレープを入れ、僕の隣に座る。
「なんか最近Santa(サンタ)好きよな」
Santa(サンタ)グレープを飲む妹に言う。
「んー。そうだね。最近割と好き」
「太るぞ」
「大丈夫ですぅ~。バスケ部だし」
「ま、そっか」
「それよりさーどうだった?楽しかった?」
母と同じ質問。しかし妹のほうが圧倒的に熱量がある。
「おん。あの2人だからな。楽しかったよ」
「京弥くんめっちゃはしゃいでそう」
「あぁ、んん~。でも割とそんなことなかったよ」
「マジ!?」
「初日素晴らしの湯行くときはテンション高かったかな」
「あぁ、あそこ行ったんだ?」
「そそ。「上がるぅ~」ってずっと言ってた」
「あぁ~想像できるわ」
その後も妹と2泊3日匠邸でのお泊まり会のことを話した。
6時過ぎに父が帰宅し、家族で夜ご飯を食べた。その後2日ぶりのいつもの感じを味わった。
家族団欒し、各々のタイミングでお風呂に入り、各々のタイミングで部屋へ帰った。
部屋の電気をつけ、ベッドに腰を下ろす。スマホを取り出し、ホームボタンを押す。
匠と鹿島と僕、3人のグループLIMEや妃馬さんからの通知がある。

「もうお帰りですか?」

ベッドに寝転がり、スマホを掲げ、まずは妃馬さんからの通知をタップし
妃馬さんとのトーク画面へ飛び、妃馬さんのメッセージに返信を打ち込む。

「はい。楽しい2泊3日でした。妃馬さんたちは?もう解散ですか?」

送信ボタンをタップする。トーク一覧に戻り
次は匠、鹿島、僕、3人のグループのトーク画面に入る。

「京弥様ただいまご帰宅~」
「自分で様付けw」
「弟寂しがってると思ったら、平然と「あ、おかえりぃ~」だった」
宇宙人が落ち込んでいるスタンプ。
「弟くんいくつ?」
「16。高1」
「ならそんな寂しがらないだろ」
「抱きついてもスマホいじりながらなんとも言わなかったわ」
「ブラコン」
「ブランコ」
「ぶらぶらぁ~」

匠のその一言からひどい下ネタのオンパレードとなった。

「今日さ、夜怜ちゃんと3人でワメブロ(ワールド メイド ブロックスの略称)やらん?」
「実況?」
「まぁ~ね?」
「いよ」
「おっしゃー!」

その鹿島のメッセージの後しばらく時間が空いて

「そろそ~ろど~お?」

と鹿島のメッセージ。時間を確認すると23時4分。
スマホの右上に表示された時刻を見る。23時16分。さほど差はなかった。

「んー。オレはいよ」
「じゃ、怜ちゃんが既読つけたら始めましょか」
「あいよ」
そこでトークは止まっていた。そこに入る。

「おっまたぁ~」

送信ボタンをタップするとすぐに起動が1つついた。

「お、来た来たー」

鹿島のメッセージの後にすぐグループ通知がかかってきた。
電話に出るほうのボタンをタップし、スピーカーのボタンもタップする。

「おいおい~」
「おいおい~」
「ひさしぶり!」
「帰りに頭でも打ったんか」
「どこがやねん!って来るかと思ってた」
「一瞬頭過ったわ」
「匠ちゃんもワメブロの実況加わってくれるって」
「見た見た」
「撮り溜めた動画も編集しないとなぁ~」
「オレもだ」
すると鹿島と僕のアイコンが表示されている画面に匠のアイコンも入ってくる。
「おっすぅ~」
「おす~匠ちゃん」
「おす~」
「じゃ、揃ったことだし始めますか」
「へぇ~い」
「あいよ」
テレビをつけ、入力切り替えをする。
パス4(パスタイム スポット 4の略称)のコントローラーを持ち
ホームボタンを押し、パス4の電源を入れる。
鹿島からパーティーの招待が来ており、パーティーに入る。
パス4のコントローラーを持ってくるときに
一緒に持ってきていたヘッドホンをコントローラーに挿す。ワメブロを起動する。
操作画面になるまででグループ通話を切る。
トーク一覧に戻ると妃馬さんからLIMEが来ていた。
妃馬さんの名前をタップし、トーク画面に入る。

「たしかに聞いてるだけで楽しそうでした。あの広いお家でですもんね?最高そうw
はい。私たちも2泊3日で解散です。私たちも楽しい2泊3日でした(*´∇`*)」

「怜ちゃーん。ワールド入ってー」
耳元から聞こえる鹿島の声にハッっとなる。
「あぁ、ちょ、ちょっと待って」
「ちょっとだけだぞ?」
そこから鹿島と匠の会話が耳元で聞こえる中、妃馬さんに返信を打ち込む。

「控えめに言って最高でしたw
2泊3日?あぁそっか。妃馬さん家で1泊、森本さん家?で1泊でしたもんね?
良かったです。っても仲良し3人ですもんね。よっぽどなことがない限り楽しいかw」

送信ボタンをタップし、トーク一覧に戻り電源を切る。
「お待たせ」
「おぉ。ねぇ、怜ちゃんはパイナップルは悪魔だと思う?」
「は?」
あまりにも唐突な質問に脳が追いつかない。話を聞くと
「酢豚のパイナップルはありかなしか」で話してて、匠も鹿島も「なし派」だったんだけど
鹿島は「パイナップルは邪魔だから悪魔」なんだけど
匠は「パイナップルなしの酢豚のありがたさを再確認させてくれるから天使」だという
謎の話をしていたらしい。
「そもそも2人酢豚そんな好きなん?」
「ん?いや別に」
「オレも嫌いでも好きでもない」
「ならなんで」
「いや、マンガネタで使えそうだなぁ~って」
「はい。じゃ、ちゃっちゃと始めるぞ~」
その後、匠を新しく迎えてワメブロの動画を撮った。動画を撮り終えて3時過ぎ。
そこから撮り溜めていた動画を編集し、予約投稿をし終えると
窓から僅かに夜空の奥から陽が昇るのが見えた。
大きく伸びをし、パソコンを閉じ、ベッドに上がる。布団を被る。
数回寝返りをうつと、ふっと眠っていた。

「おぉ~い怜ちゃん」
鹿島の声のほうに視線を向ける。
「行くよー」
「おお~」
目の前のローテーブルに置かれたグラスを持ち、ソファーから立ち上がる。
階段で2階に上がり、廊下を進む。
前をルンルンで行く鹿島の手には右にはグラス、左にはお赤飯の乗ったお皿を持っていた。
カチャカチャという音がした僕の手元を見ると
いつの間にか左手には小皿が5枚以上載っていた。
そのまま廊下を進み、3階への階段を上る。
屋上への扉を開くとそこには音成さん、妃馬さん、森本さん、匠の4人がいた。
「おいっすぅ~持ってきたでぇ~」
鹿島が左手に持っていたお赤飯を見せびらかす。
「お赤飯て」
「お祝い事にはお赤飯が定番でしょ」
「まぁうちもそうだわ」
「うちも」
「うちもうちも」
「はいはいはい~」
僕は左手に持っていた取り皿をみんなに配る。
「じゃ、まぁとりあえず匠ちゃん音成さん、おめでとー!」
みんながグラスを匠と音成さんの持っているグラスにあてる。カーン。カキーン。
「おめでとう」
「おめでとうございます」
「匠ちゃんをよろしくね?」
「恋ちゃんをよろしくお願いします」
「いやぁ~でも良かったよ。オレも怜ちゃんもドキドキしてたんだから~」
「まぁたしかにな」
「なんで2人がドキドキしてんの」
「わからん。親友の大舞台じゃん?」
「まぁ、決断ではあったけど、大舞台…か?」
「まあまあ。とりあえず記念パーティーだから食べよ食べよ」
屋上には匠邸のリビングにあったような大きなテーブルがあり
そのテーブルの上にはお寿司、ピザ、鹿島の持ってきたお赤飯
クロワッサン、トースト、炒飯、お蕎麦があった。軽いバイキングだ。
「恋ちゃんと小野田さん良かったですね」
いつの間にか隣にいた妃馬さんが僕に話しかけてくる。
「ですね。僕の緊張も解れました」
「怜夢さんも緊張してたんですか?」
クスッっと笑いながら聞く妃馬さん。
「なんででしょうね。でもなぜか落ち着かなかったですね」
「でも恋ちゃんが「告白する」って言ってたら私も緊張したのかな」
「すると思います。女子は特に」
「たしかに。中学のときありました。そんな感覚のとき」
「それですそれ」
「でも良かった。小野田さんから告白されたって聞いたときにはビックリしましたけどね」
「僕も好きな人「音成さん」って聞いたときはビックリしました」
「元々恋ちゃんから小野田さんが好きとは聞いてたので
告白された=付き合い始めたんだなって思いました」
「あ、やっぱそうだったんですね」
「気づいてました?」
「薄々?」
「そっかぁ~…」
妃馬さんが1歩、2歩と前に歩き出す。
「じゃあ」
妃馬さんが振り返る。
「私の気持ちは気づいてますか?」
妃馬さんの背景には夜空に光り輝く東京スカイタワー。
その東京スカイタワーの背後に花火が上がった。
「それって…」
それって僕のことが好きってことですか?そう思い口元が緩む。ニヤけが止まらなくなる。
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