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お泊まり会
第107話
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ボヤァ~っとした視界に和室の屋根が写る。鹿島のほうを見る。
布団が半身にしかかかっておらず、両脚は跳んだカエルのようになっており
左手はかろうじてかかっている布団とお腹を繋ぎ止めるように、右手は頭の方向に伸びている。
匠のほうを見る。また抱き枕を抱きながら寝ていた。大あくびをかます。うつ伏せになる。
ガサファサッっという掛け布団の音がする。
布団や枕のいい香りと匠のシャンプーで洗い
コンディショナーをつけた自分の髪のいい香りが混ざり、旅行に来た感があり
深呼吸をし、その香りを楽しむ。枕元のスマホを手に取り、ホームボタンを押す。9時33分。
まだまだ寝れる。と思ったが妃馬さんからの通知で一旦おはようございますをする。
「おはようございます。って怜夢さん起きてるかな?」
自分に「?」をつけてるのが可愛く寝ぼけ眼でニヤける。あくびが出る。
妃馬さんとのトーク画面が涙で歪む。右手で涙を拭う。返信を打ち込む。
「おはようございます。今しがた起きました。二度寝する予定ですw」
送信ボタンをタップする。しばらく妃馬さんとのトーク画面を眺める。
枕に顔を埋めてニヤける。顔を上げ、トーク一覧に戻し、電源を切る。
もう一度枕に顔を埋める。枕のいい香りと匠のシャンプーで洗い
コンディショナーをつけた自分の髪のいい香りが混ざったいい香りを思い切り吸い込む。
そのままスーハースーハーと息をしているうちに予定していた二度寝についていた。
ボヤァ~っとした視界に匠が写る。匠は寝ながらスマホをいじっていた。
「ぉはよ…」
匠はスマホからこちらに視線を移し
「おぉ、おはよ」
と言ってまた視線をスマホに戻した。鹿島のほうを向く。鹿島の姿はない。
また匠のほうを向き
「鹿島はー?」
と寝起きでまだ発声がしっかりしていない声で聞く。
「ん?さあ?トイレ?」
「んん~…。ふぁ~あ」
うつ伏せになり、枕元のスマホを手に取る。ホームボタンを押す。12時3分。
その下に妃馬さんからの通知。
「ふふ」
つい鼻で笑いが漏れる。
「起きてたんですね。おはようございます。予定ってw私たちはこれからお出掛けです。」
お出掛けか。どこ行ってんのかな?とかを思いながら
通知をタップし、妃馬さんとのトーク画面へ飛び、返信を打ち込む。
「2度目のおはようございますw予定通りでしたw
お出掛けいいですね。どこ行ってるんですか?」
送信ボタンをタップする。トーク一覧に戻り、電源を切る。
鹿島の布団の近くにあったテレビのリモコンで床の間のテレビをつける。
お昼のバラエティー番組が流れる。匠が立ち上がり、部屋を出ていく。
コーディネート対決をボーっと眺めていると匠が帰ってくる。
「京弥庭にいたわ」
「庭?」
「うん」
「ん、んん~!」
と寝転がった状態で思い切り伸びをする。
「じゃ、あ、下下りるか」
「ん」
テレビを消して、スマホを持ち、部屋を出る。
部屋を出るとすぐ縁側のようなところに目をやった。
鹿島が座りながらいじっていた。階段を下り、鹿島のいる庭へ行く。
スーっとガラスのスライドドアを開く。
「おぉ!おはよう!」
満面の笑みを向けてくる鹿島。匠も僕も縁側のようなところに座る。
「おはよ。なにどしたん。こんなとこで」
「いや、別に?ただここが気に入ってただけ」
「まぁここはいいよな。たしかに」
「珍しくない?こんな時間に起きてんの」
「まぁ昨日割と早めに寝たじゃん」
「早めとは言っても5時くらいじゃない?」
「オレいっつも7時とか8時とかだもん」
「自慢すんな」
「京弥京弥」
「ん?」
「オレも同じ」
「マジ!?うぇ~い」
鹿島と匠がハイタッチをする。
「んじゃ、オレと匠は歯磨いて顔洗ってくるから、その後お昼買いに行こ」
「あーいよ。オレはもうちょいここで寛いでるわ」
「へーいへい」
匠と僕はお風呂場の洗面台で隣同士で歯を磨き、顔を洗う。
リビングに戻ると鹿島が縁側のようなところで仰向けで寝転がっていた。
その鹿島が僕らに気づき「お?」という表情を見せ、リビングに入ってくる。
3人とも着替えることなくコンビニへ行く。
コンビニでお昼ご飯、僕たちにとっての朝食を買い、匠邸へ戻る。
各々洗面所で手洗いうがいを済ませてダイニングテーブルのイスに座る。
「トースター…あ、あれか。借りるよー」
僕はコンビニで買ったランチダッシュのハムチーズを匠邸のトースターで焼く。
匠も鹿島もキッチンへ来て各々のグラスに各々好きな飲み物を注ぐ。
パンの香ばしい香りが漂ってくる。
「あ、いいね。朝感」
「ド昼間だけどな」
チンッっとトースターといえばの音がして、熱々のランチダッシュを手の上で踊らせ
ランチダッシュを包んでいたビニール袋の上に2枚乗せ、ダイニングテーブルへ運ぶ。
「お皿出せばよかったね」
「あ~いいいい。大丈夫大丈夫。ありがと」
鹿島はおにぎり3つ、匠はナポリタン。そして全員ハマったタマネギサラダを
「いただきまーす」
食べ始める。香ばしく狐色に焼かれたパンにかぶりつく。ザクザク。良い音を響かせる。
香りと音で朝と錯覚させる。中のハムとチーズもハムの香り
チーズのねっとりさ、香ばしく焼かれたパンの香り
食感が合わさり、朝ご飯特有の心持ちになる。
「ご馳走様でした」
匠はナポリタンスパゲッティとタマネギサラダを
鹿島はおにぎり3つとタマネギサラダを、僕はランチダッシュとタマネギサラダを食べ終えた。
黒い木のテーブルの上に散りばめられたパン屑を
ランチダッシュを包んでいたビニール袋に入れる。
3人でゴミを持ってキッチンへ行き、洗ったり、分別したりしてゴミ箱に捨てる。
「はぁ~…今日でおさらばか」
ソファーに体を預け脱力する鹿島が呟く。
「まぁな?」
「まぁ、気軽に来てよ」
「マジ!?いいの?」
「まぁ父母、もしかしたらお兄ちゃんがいてもいいなら」
「あぁ…」
「嫌がんなよ」
「いや、オレなんか庶民中の庶民じゃん?なんなら質の悪い庶民だし」
「オレの親友だって紹介してるからへーきよ」
「匠ちゃん!」
「ときめいたような顔すんな。オレもひさしぶりにお母様とお父様にご挨拶しないとな」
「匠ちゃんのご両親どんな人?」
「めっっちゃ良い人。お父様は車好きで中学のときに遊びに来たとき、見せてもらった。
お母様は優しいけど…なんつーの?パッパッパってする人かな」
「そうね。父は細かい作業するのが好きな人で
母は服が好きで下着の着け心地や装飾なんかを凝ってて
まぁ性格でいうと父は気長な人。母はせっかちな人だね」
「お兄ちゃんは?」
「お兄ちゃんは良いお兄ちゃん。オレにとってはそこに尽きる」
「まぁそっか。怜ちゃんは?お兄ちゃん会ったことある?」
「会ったことはあるけど少ないな。だって、えぇ~っと?8つ上だっけ?」
「そうそう」
「だからオレらが中1のときには大学生だもんな」
「あの頃お兄ちゃん、まぁ遊んでたよ?
一応コネ入社ではないけど父の会社に入ることに決まってたし
父も母も「今しか遊べないんだから大学生は目一杯遊んどきなさい」って
ずっと言ってたから」
「でも…あんま会ってないよな。1回くらい?」
「まぁ、友達の家泊まったり飲んで潰れてたりとかしてたからな」
「あぁ~」
「で?怜ちゃんからしたらどんな人?」
「お兄さん、まぁめっちゃ良い人よ。優しさの塊みたいな顔してる」
「どんな顔よ」
3人で笑う。
「あ、そうだ。次はあれだね?匠ちゃんの…」
「あぁ~。報告会ね」
「報告会?…あぁ、そーゆーことね」
「なんかオレもソワソワするんだけど!」
「わかる!なんか…なんかだよな!」
「事前には言わないからな。事後報告だから。
オレから「この日周辺空いてる?」ってLIME行ったら、もう事後だと思っといて。
あと泊まる準備もしといて」
「うわぁ~なおさらなんかドキドキするわぁ~」
その後もテレビを見ながら話したり
鹿島が縁側のようなところを気に入り3人で庭に出たりして
あっという間に4時過ぎになった。
「じゃ、そろそろ帰る用意するか」
「名残惜しい」
鹿島と僕でリビングで部屋着を脱ぎ、普段着に着替える。部屋着をリュックにしまう。
「あ、そうだ。布団は?どうすればいい?」
「あぁ、ま、とりあえず干すから」
そう言って匠は庭に出る。
「じゃ、オレと鹿島で1階持ってくればいー?」
とサンダルを履く匠に聞く。
「あ、じゃ、頼んでいー?」
「じゃ、鹿島行くぞ」
「ガッテンじゃい」
鹿島と階段を上がり、和室のゲストルームに行く。
僕は掛け布団1枚に枕3つを包み、抱え、鹿島は掛け布団1枚を抱え、階段に差し掛かる。
「階段気ーつけろよー」
「おけおけ」
正面は掛け布団で見えないため、体を横にした状態で階段を下りる。
「ありがとありがと」
匠が受け取る。枕が3つがボトボトっと落ちる。
「あぁ、枕もあったか」
「とりあえず全部持ってきちゃっていい?」
「あ、うん。頼むわ」
「じゃ、匠ちゃん、ここ置いとくよ?」
「あぁ、うん。ありがと」
鹿島が掛け布団をその場に置く。そしてまた鹿島と僕は階段を上り
和室のゲストルームから鹿島は掛け布団1枚、僕は敷き布団1枚を抱えて出る。
同じように横になって階段を下り、先程鹿島が掛け布団を置いた近くに置いて
また和室に戻る。残りは敷き布団2枚。鹿島と僕それぞれで抱え、1階へ下りる。
匠は物干しスタンドを庭に出し、掛け布団を干していた。
僕と鹿島も掛け布団を持ち、サンダルを履き、外に出て物干しスタンドにかける。
次に敷き布団もそれぞれ3人で物干しスタンドにかける。
「いやぁ~こんだけ布団干しても、まだよゆーあるもんね。改めて庭の広さを実感するわ」
「たしかに。自分家だけど、広いな」
「枕は?どーすればい?」
「あぁ。ちょっと待ってて」
匠がサンダルを脱ぎ、お風呂場のほうへ行く。
しばらくして匠がクリップ付きハンガー3つを持ってきた。
「これに挟んでそこに吊るして」
と縁側のようなところの屋根の先の部分を指指す。
縁側のようなところを雨や雪から守るために突き出たコンクリートの屋根の先には
金属のポールがついていた。
3人でハンガーのクリップに枕をつけ、ハンガーをそのポールにかけた。
「はい!お手伝いありがとーございました」
匠が鹿島と僕に敬礼する。
「いえいえ。こちらこそありがとうございました」
「ありがとうございました!」
鹿島と僕も匠に敬礼をする。3人で笑う。
「なに?全員月曜9時の警察のドラマ見たん?」
「季村桜さんの?」
「あれは面白かったねぇ~」
「キムサク(季村桜さんの呼称)の作品外れある?」
「思いつかん」
「ゲームも最高だしな」
「早く次回作出ないかなぁ~」
季村桜さんの話で少し盛り上がる。
ジーンズのポケットからスマホを取り出し、ホームボタンを押す。16時47分。
「じゃ、そろそろお暇するか」
「マジ?もうそんな時間?」
「5時前」
鹿島が鼻から息を吐く。
「そっかそっか」
3人でリビングに戻る。リュックのジッパーを閉め、リュックを背負う。
鹿島もリュックを背負い、3人で玄関へ向かう。鹿島と横並びで靴を履く。振り返る。
「んじゃ、また」
と匠に言う。
「匠ちゃんまたねぇ~。大学か~ゲームで」
「ん。まぁ大学は行ったり行かんかったりだから会えたらラッキーだね」
「来いよ」
半笑いで言う。
「じゃ、まぁたまにゲーム誘うから暇だったら一緒やろ」
「おけおけ」
僕がドアノブに手をかけ、ドアを押し開ける。
「んじゃ、お邪魔しましたぁ~」
「お邪魔しましたぁ~」
「んだば」
匠の姿が扉で隠れていく。飛び石のように置かれたタイルの道を行き
恐らく車用の門の隣の両開きの扉を開き、鹿島と僕は匠邸を後にする。
布団が半身にしかかかっておらず、両脚は跳んだカエルのようになっており
左手はかろうじてかかっている布団とお腹を繋ぎ止めるように、右手は頭の方向に伸びている。
匠のほうを見る。また抱き枕を抱きながら寝ていた。大あくびをかます。うつ伏せになる。
ガサファサッっという掛け布団の音がする。
布団や枕のいい香りと匠のシャンプーで洗い
コンディショナーをつけた自分の髪のいい香りが混ざり、旅行に来た感があり
深呼吸をし、その香りを楽しむ。枕元のスマホを手に取り、ホームボタンを押す。9時33分。
まだまだ寝れる。と思ったが妃馬さんからの通知で一旦おはようございますをする。
「おはようございます。って怜夢さん起きてるかな?」
自分に「?」をつけてるのが可愛く寝ぼけ眼でニヤける。あくびが出る。
妃馬さんとのトーク画面が涙で歪む。右手で涙を拭う。返信を打ち込む。
「おはようございます。今しがた起きました。二度寝する予定ですw」
送信ボタンをタップする。しばらく妃馬さんとのトーク画面を眺める。
枕に顔を埋めてニヤける。顔を上げ、トーク一覧に戻し、電源を切る。
もう一度枕に顔を埋める。枕のいい香りと匠のシャンプーで洗い
コンディショナーをつけた自分の髪のいい香りが混ざったいい香りを思い切り吸い込む。
そのままスーハースーハーと息をしているうちに予定していた二度寝についていた。
ボヤァ~っとした視界に匠が写る。匠は寝ながらスマホをいじっていた。
「ぉはよ…」
匠はスマホからこちらに視線を移し
「おぉ、おはよ」
と言ってまた視線をスマホに戻した。鹿島のほうを向く。鹿島の姿はない。
また匠のほうを向き
「鹿島はー?」
と寝起きでまだ発声がしっかりしていない声で聞く。
「ん?さあ?トイレ?」
「んん~…。ふぁ~あ」
うつ伏せになり、枕元のスマホを手に取る。ホームボタンを押す。12時3分。
その下に妃馬さんからの通知。
「ふふ」
つい鼻で笑いが漏れる。
「起きてたんですね。おはようございます。予定ってw私たちはこれからお出掛けです。」
お出掛けか。どこ行ってんのかな?とかを思いながら
通知をタップし、妃馬さんとのトーク画面へ飛び、返信を打ち込む。
「2度目のおはようございますw予定通りでしたw
お出掛けいいですね。どこ行ってるんですか?」
送信ボタンをタップする。トーク一覧に戻り、電源を切る。
鹿島の布団の近くにあったテレビのリモコンで床の間のテレビをつける。
お昼のバラエティー番組が流れる。匠が立ち上がり、部屋を出ていく。
コーディネート対決をボーっと眺めていると匠が帰ってくる。
「京弥庭にいたわ」
「庭?」
「うん」
「ん、んん~!」
と寝転がった状態で思い切り伸びをする。
「じゃ、あ、下下りるか」
「ん」
テレビを消して、スマホを持ち、部屋を出る。
部屋を出るとすぐ縁側のようなところに目をやった。
鹿島が座りながらいじっていた。階段を下り、鹿島のいる庭へ行く。
スーっとガラスのスライドドアを開く。
「おぉ!おはよう!」
満面の笑みを向けてくる鹿島。匠も僕も縁側のようなところに座る。
「おはよ。なにどしたん。こんなとこで」
「いや、別に?ただここが気に入ってただけ」
「まぁここはいいよな。たしかに」
「珍しくない?こんな時間に起きてんの」
「まぁ昨日割と早めに寝たじゃん」
「早めとは言っても5時くらいじゃない?」
「オレいっつも7時とか8時とかだもん」
「自慢すんな」
「京弥京弥」
「ん?」
「オレも同じ」
「マジ!?うぇ~い」
鹿島と匠がハイタッチをする。
「んじゃ、オレと匠は歯磨いて顔洗ってくるから、その後お昼買いに行こ」
「あーいよ。オレはもうちょいここで寛いでるわ」
「へーいへい」
匠と僕はお風呂場の洗面台で隣同士で歯を磨き、顔を洗う。
リビングに戻ると鹿島が縁側のようなところで仰向けで寝転がっていた。
その鹿島が僕らに気づき「お?」という表情を見せ、リビングに入ってくる。
3人とも着替えることなくコンビニへ行く。
コンビニでお昼ご飯、僕たちにとっての朝食を買い、匠邸へ戻る。
各々洗面所で手洗いうがいを済ませてダイニングテーブルのイスに座る。
「トースター…あ、あれか。借りるよー」
僕はコンビニで買ったランチダッシュのハムチーズを匠邸のトースターで焼く。
匠も鹿島もキッチンへ来て各々のグラスに各々好きな飲み物を注ぐ。
パンの香ばしい香りが漂ってくる。
「あ、いいね。朝感」
「ド昼間だけどな」
チンッっとトースターといえばの音がして、熱々のランチダッシュを手の上で踊らせ
ランチダッシュを包んでいたビニール袋の上に2枚乗せ、ダイニングテーブルへ運ぶ。
「お皿出せばよかったね」
「あ~いいいい。大丈夫大丈夫。ありがと」
鹿島はおにぎり3つ、匠はナポリタン。そして全員ハマったタマネギサラダを
「いただきまーす」
食べ始める。香ばしく狐色に焼かれたパンにかぶりつく。ザクザク。良い音を響かせる。
香りと音で朝と錯覚させる。中のハムとチーズもハムの香り
チーズのねっとりさ、香ばしく焼かれたパンの香り
食感が合わさり、朝ご飯特有の心持ちになる。
「ご馳走様でした」
匠はナポリタンスパゲッティとタマネギサラダを
鹿島はおにぎり3つとタマネギサラダを、僕はランチダッシュとタマネギサラダを食べ終えた。
黒い木のテーブルの上に散りばめられたパン屑を
ランチダッシュを包んでいたビニール袋に入れる。
3人でゴミを持ってキッチンへ行き、洗ったり、分別したりしてゴミ箱に捨てる。
「はぁ~…今日でおさらばか」
ソファーに体を預け脱力する鹿島が呟く。
「まぁな?」
「まぁ、気軽に来てよ」
「マジ!?いいの?」
「まぁ父母、もしかしたらお兄ちゃんがいてもいいなら」
「あぁ…」
「嫌がんなよ」
「いや、オレなんか庶民中の庶民じゃん?なんなら質の悪い庶民だし」
「オレの親友だって紹介してるからへーきよ」
「匠ちゃん!」
「ときめいたような顔すんな。オレもひさしぶりにお母様とお父様にご挨拶しないとな」
「匠ちゃんのご両親どんな人?」
「めっっちゃ良い人。お父様は車好きで中学のときに遊びに来たとき、見せてもらった。
お母様は優しいけど…なんつーの?パッパッパってする人かな」
「そうね。父は細かい作業するのが好きな人で
母は服が好きで下着の着け心地や装飾なんかを凝ってて
まぁ性格でいうと父は気長な人。母はせっかちな人だね」
「お兄ちゃんは?」
「お兄ちゃんは良いお兄ちゃん。オレにとってはそこに尽きる」
「まぁそっか。怜ちゃんは?お兄ちゃん会ったことある?」
「会ったことはあるけど少ないな。だって、えぇ~っと?8つ上だっけ?」
「そうそう」
「だからオレらが中1のときには大学生だもんな」
「あの頃お兄ちゃん、まぁ遊んでたよ?
一応コネ入社ではないけど父の会社に入ることに決まってたし
父も母も「今しか遊べないんだから大学生は目一杯遊んどきなさい」って
ずっと言ってたから」
「でも…あんま会ってないよな。1回くらい?」
「まぁ、友達の家泊まったり飲んで潰れてたりとかしてたからな」
「あぁ~」
「で?怜ちゃんからしたらどんな人?」
「お兄さん、まぁめっちゃ良い人よ。優しさの塊みたいな顔してる」
「どんな顔よ」
3人で笑う。
「あ、そうだ。次はあれだね?匠ちゃんの…」
「あぁ~。報告会ね」
「報告会?…あぁ、そーゆーことね」
「なんかオレもソワソワするんだけど!」
「わかる!なんか…なんかだよな!」
「事前には言わないからな。事後報告だから。
オレから「この日周辺空いてる?」ってLIME行ったら、もう事後だと思っといて。
あと泊まる準備もしといて」
「うわぁ~なおさらなんかドキドキするわぁ~」
その後もテレビを見ながら話したり
鹿島が縁側のようなところを気に入り3人で庭に出たりして
あっという間に4時過ぎになった。
「じゃ、そろそろ帰る用意するか」
「名残惜しい」
鹿島と僕でリビングで部屋着を脱ぎ、普段着に着替える。部屋着をリュックにしまう。
「あ、そうだ。布団は?どうすればいい?」
「あぁ、ま、とりあえず干すから」
そう言って匠は庭に出る。
「じゃ、オレと鹿島で1階持ってくればいー?」
とサンダルを履く匠に聞く。
「あ、じゃ、頼んでいー?」
「じゃ、鹿島行くぞ」
「ガッテンじゃい」
鹿島と階段を上がり、和室のゲストルームに行く。
僕は掛け布団1枚に枕3つを包み、抱え、鹿島は掛け布団1枚を抱え、階段に差し掛かる。
「階段気ーつけろよー」
「おけおけ」
正面は掛け布団で見えないため、体を横にした状態で階段を下りる。
「ありがとありがと」
匠が受け取る。枕が3つがボトボトっと落ちる。
「あぁ、枕もあったか」
「とりあえず全部持ってきちゃっていい?」
「あ、うん。頼むわ」
「じゃ、匠ちゃん、ここ置いとくよ?」
「あぁ、うん。ありがと」
鹿島が掛け布団をその場に置く。そしてまた鹿島と僕は階段を上り
和室のゲストルームから鹿島は掛け布団1枚、僕は敷き布団1枚を抱えて出る。
同じように横になって階段を下り、先程鹿島が掛け布団を置いた近くに置いて
また和室に戻る。残りは敷き布団2枚。鹿島と僕それぞれで抱え、1階へ下りる。
匠は物干しスタンドを庭に出し、掛け布団を干していた。
僕と鹿島も掛け布団を持ち、サンダルを履き、外に出て物干しスタンドにかける。
次に敷き布団もそれぞれ3人で物干しスタンドにかける。
「いやぁ~こんだけ布団干しても、まだよゆーあるもんね。改めて庭の広さを実感するわ」
「たしかに。自分家だけど、広いな」
「枕は?どーすればい?」
「あぁ。ちょっと待ってて」
匠がサンダルを脱ぎ、お風呂場のほうへ行く。
しばらくして匠がクリップ付きハンガー3つを持ってきた。
「これに挟んでそこに吊るして」
と縁側のようなところの屋根の先の部分を指指す。
縁側のようなところを雨や雪から守るために突き出たコンクリートの屋根の先には
金属のポールがついていた。
3人でハンガーのクリップに枕をつけ、ハンガーをそのポールにかけた。
「はい!お手伝いありがとーございました」
匠が鹿島と僕に敬礼する。
「いえいえ。こちらこそありがとうございました」
「ありがとうございました!」
鹿島と僕も匠に敬礼をする。3人で笑う。
「なに?全員月曜9時の警察のドラマ見たん?」
「季村桜さんの?」
「あれは面白かったねぇ~」
「キムサク(季村桜さんの呼称)の作品外れある?」
「思いつかん」
「ゲームも最高だしな」
「早く次回作出ないかなぁ~」
季村桜さんの話で少し盛り上がる。
ジーンズのポケットからスマホを取り出し、ホームボタンを押す。16時47分。
「じゃ、そろそろお暇するか」
「マジ?もうそんな時間?」
「5時前」
鹿島が鼻から息を吐く。
「そっかそっか」
3人でリビングに戻る。リュックのジッパーを閉め、リュックを背負う。
鹿島もリュックを背負い、3人で玄関へ向かう。鹿島と横並びで靴を履く。振り返る。
「んじゃ、また」
と匠に言う。
「匠ちゃんまたねぇ~。大学か~ゲームで」
「ん。まぁ大学は行ったり行かんかったりだから会えたらラッキーだね」
「来いよ」
半笑いで言う。
「じゃ、まぁたまにゲーム誘うから暇だったら一緒やろ」
「おけおけ」
僕がドアノブに手をかけ、ドアを押し開ける。
「んじゃ、お邪魔しましたぁ~」
「お邪魔しましたぁ~」
「んだば」
匠の姿が扉で隠れていく。飛び石のように置かれたタイルの道を行き
恐らく車用の門の隣の両開きの扉を開き、鹿島と僕は匠邸を後にする。
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