猫舌ということ。

結愛

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動き

第83話

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「ご馳走様でした」
全員が夜ご飯を終え、食器をキッチンへ運び、母が食器を洗い始めた。
僕は食器をキッチンへ運んだついでにお風呂へ行き
ボタン1つでお風呂を作り始める。
「お湯はりを開始します」
AIのような人間の女性の声が流れる。
リビングへ帰り、ソファーに腰を下ろし、妹と一緒にテレビを見ながらスマホを触る。
妃馬さんからLIMEが来ていた。

「私をなんだと思ってんですかwあ、それこそ完璧超人?w」

そのメッセージの後に猫が笑っているスタンプが送られていた。
通知をタップし、妃馬さんとのトーク画面に飛び、返信を打ち込む。

「え、妃馬さんて、完璧超人じゃなかったんですか!?僕てっきり隙がない人かと…」

その後にフクロウが驚いてるスタンプを送った。
「お風呂が沸きました」
AIのような人間の女性のこもっているような、少し響いているような声が聞こえてくる。
「夢香入ってくれば?ドラマ見てんだろ?」
スマホをいじりながら妹を見ずに話しかける。
「あ、そっか。今のうちに入っとかないと」
「そうそう。時間かかるんだから」
妹がソファーの背もたれを乗り越えてお風呂へ向かった。
僕はMyPipeを開き、動画は再生せずに
「あなたへのおすすめ」で出てきた動画のサムネだけを見て
あ、これ系は好きじゃない。と思いながら動画を非表示にし
「この動画は好みではない」と理由を押したり
へぇ、新作出るんだぁ~。と眺めたり、え、なにこのゲーム面白そう。とまじまじ見たりした。
もうそろそろ9時。ドラマの始まる時間だ。あと5分も経たないうちに始まる。
相変わらず長いな。と思っていると、カッチャンという音が聞こえ
2分もかからずにペタペタと少し水分を含んだ足で廊下を歩く音が聞こえてきた。
「まだ始まってない?」
返事をしようとする。
「まだなんじゃない?」
と母が答える。冷蔵庫の開く音が聞こえ、閉める音も聞こえた。
しばらくすると先程と変わらぬ部屋着で頭にタオルをターバンのように巻いた妹が
牛乳と思われる白い液体が入ったグラスを片手にソファーの背もたれを乗り越え、帰ってきた。
「まだ始まってない?」
今度こそ僕に聞いたのだろう。
「あぁ、まだ始まって」
返事を言い終わる前に
「あ、始まった」
始まった。オリジナル脚本の恋愛ドラマ。一応僕も見ていた。
オリジナル脚本のドラマは一応全部見るようにしていた。理由は匠だ。
匠はこの上ないオタクであり、常々言っていることがある。
「実写化マジで○○」
脳内で匠の言葉に放送禁止音が被さる。
そしてもう1つ最近になって匠に言われたこと
「どんなつまんなくても、脚本がクソでも、設定盛り盛りでも
出てる女優さん俳優さんが弱くても演技へたでも
オリジナル脚本のドラマは見てくれ。とりあえず見てくれ。そして視聴率に貢献してくれ。
オリジナル脚本のドラマが数字取れば、あんなクソみたいな実写化はなくなっていくはず。
マジでマンガ家様が可哀想。キャラも可哀想。
ファンは怒り狂ってるし、なんなら怒り通り越して泣いてる人もいるかもしれない。
ヲタクの先輩なら泣いてるかも。だからマンガの世界を守るため
これ以上被害マンガ家様、被害作品
被害キャラ、被害ファンを出さないために協力してくれ」
そう言われた。そう言われて見始めたのだが、時にはおもしろい作品とも出会えるものだ。
特に日曜日のドラマは映画並の力の入れようでおもしろい。匠も
「日曜日のドラマを見習ってほしい。あんなクソ実写とかしないで」
という絶賛振りだった。9時からのドラマは妹も母も見ているし
視聴率に貢献できているだろうと、途中でお風呂に入り
10時からのドラマはおもしろく、僕も見ていたのでリビングで妹と母と共に見る。
ドラマが始まってすぐに玄関の扉が開き、父が帰ってきた。
父は洗面所に入って階段を上り、着替えて下りてきたと思ったら
すぐ洗面所に入り、お風呂に入った。
濡れた髪をタオルでグシャクシャしながらリビングに入ってきて
冷蔵庫から缶ビールを1缶取り出し、ダイニングテーブルのイスに座る。
カペリプシュッっとプルタブを開ける音がする。
「っはぁ~」というビールのCMのような声に「お疲れ様です」と心の中で労う。
ドラマが終わると僕は家族に「おやすみ」と寝ないのに告げる。
妹も家族に「おやすみぃ~」と言った。妹と一緒に階段を上がる。
妹が部屋に入るときにまた妹と「おやすみ」と言い合い
自分の部屋のドアノブを下ろし、ドアを押し部屋に入る。
ベッドに行く道中でローテーブルに置いていたテレビのリモコンを手に取り
テレビを点け、リモコン片手にベッドに胡座をかき座る。
テレビのリモコンを右太ももの右側に置き
右側のポケットからスマホを取り出し、ホームボタンを押す。
妃馬さんからのLIMEの通知があり、その通知をタップし、妃馬さんとのトーク画面へ飛ぶ。

「完璧超人なわけないでしょw
ていうか、隙がない真面目お嬢様は苦手なんじゃ?( ¯▽¯ )ニヤニヤ」

そのメッセージの後に猫がニヤニヤしているスタンプが送られていた。
「あぁ~一本取られたな」
と笑顔で呟く。

「ぐっ…たしかに…。」

その後にフクロウが悔しがっているスタンプを送った。
スマホを枕の中央に置き
思い出したようにベッドから降りてバッグからサティスフィーを取り出す。
何気に電源を入れ、起動していたソフトを終了し、金太郎電鉄を起動する。
可愛いキャラが出ているタイトル画面からモード選択画面に移る。
オンラインの文字を見て、そういえばインターネット繋いでたっけ?と思い
ホーム画面に行くと、やはりインターネットに繋がっていなかったので
家のWI-FIのパスワードを入力し、インターネットと接続する。
サティスフィーを左手に枕の中央に置いたスマホのホームボタンを押す。
鹿島からのLIMEがある。

「もうそろそろいいかな?」

サティスフィーをベッドに置き、スマホを持ち上げ
通知をタップし鹿島とのトーク画面へ飛び、返信をする。

「匠は?オレはいけるけど」

スマホを枕の中央に置きテレビを眺める。ニュース番組で世間のニュースが流れる。
事件のニュースの詳細を解説し始め
「怖っ」
と呟く。するとスマホの画面が光り、チラッっと見ると鹿島と匠と僕のグループ通話だった。
「参加する」ボタンをタップする。
「おいおいー」
いつもの挨拶。
「おいおいー」
「匠ちゃんまだかな?」
「うす」
匠が入ってきた。
「おー!おいおいー」
「うぃー」
なんだろう。1対1の通話よりグループ通話のほうが音質が悪い。
よく考えてみれば回線が分岐するんだから音質が悪くなるのは当たり前だが
なんとなく腑に落ちなかった。
「そういえばさ、パス4(パスタイム スポット 4の略称)では
声も同時に録画できたけど、今回はどうすんの?」
「あぁ、今LIMEだけどさ、音声通話専用アプリあんじゃん?」
「ん?チルロードの話?」
「そうそう。チルロ!匠ちゃんチルロ入ってる?」
「あぁ、あるよ」
「あぁ、なら良かった!チルロに切り替えて、画面はパソコンで録画して
音声と画面合わせる作業した後に始めようかなと」
「なるほどね」
「あ!あと匠ちゃん!」
「ん?」
「オレ「イディオ」でやってるから、なるべくそう呼んでね?
本名呼んでもピー音入れるからいいっちゃいいけど」
「あぁ。なるほど?まぁ頑張るわ」
「じゃあ、アプリ切り替えて、準備したら始めよう」
「うぃー」
「おけー」
通話を切り、僕もパソコンを用意して、サティスフィーの画面を録画するための準備を整え
音声通話専用アプリ「チルロード」をパソコンで開き、そこに3人集まって撮影が始まった。
「おいおいーさてさて始まりました!」
と勢いよく始めた鹿島に割って入る。
「ちょっと待って」
「ん?どした?」
「匠は匠でいいの?」
「あぁ、呼び方か。匠ちゃんどうする?」
「んあ~別にいつも通りでいいよ」
「ん。オッケー。じゃ、仕切り直していくよ?」
その後数秒間を空け
「おいおーい!イディオのゲーム実況チャンネルへようこそ!!
チャンネル主のイディオです!さてさて始まりました!
なんと今回からぁ~…また新しいシリーズを始めまーす!!
見ての通り、金太郎電鉄!そして見ての通り今回は…。
3人でプレイしていきます!では自己紹介どーぞー!」
「はい」
鹿島と言いそうになり飲み込む。
「イディオと度々コラボさせていただいている、レイチャンネルからきました、レイです」
「はい!レイちゃん今回もよろしくね!そして今回初の登場となります」
「はい。匠です。どうぞよろしくお願いします」
「実はこの3人はリア友でして
実況中に内輪ネタで盛り上がるかもしれませんがご容赦ください!
じゃあ、やっていきます!レッツー?」
「「「ゴー!!」」」
3人で声を揃えて言った。
「でどうする?」
「えぇーと?1年で18分」
「10年くらい?」
「でも実況でやるとたぶん1年でも18分じゃ終わらんだろ」
「あぁたしかに」
「じゃあ7年くらい?2時間ちょい」
「あぁそれくらいがいいかもね。キリ悪いけど」
「まぁ10年のほうがキリ良いけど編集とか考えるとね」
「そう考えると実況者さんてすごいんだね。
編集の大変さよりキリの良さとか視聴者さんのこと考えてんだね」
匠のその言葉に底辺も底辺だが
曲がりなりに実況チャンネルを開設している僕と鹿島は少し黙った。
その後結局、年数を7年にして各自、名前を入力してゲームが始まった。
可愛い女の子のキャラが最初の目的地を決めた。
「さて始まりました!結局7年ゲームにしたんですけど」
「ちょっと中途半端だけどね」
「じゃ、一投目いきまーす」
匠が最初でサイコロを振る。5の目が出た。
進みはするもののまだ都心から出られないため物件は買えない。
「うわたっか」
「リッチな匠でも買えないか」
早速内輪ネタを言ってしまった。
「いやみんな持ち金1000万だから」
「え?なになに?どゆこと?」
「いや、匠大金持ちだから」
「えぇ!?マジで!?おぼっちゃま!?」
「はい次、あぁ~とイディオだよ」
「大金持ち詳しく」
「わーわーわーわーわー45ー45ー」
「なんだそれ」
「お?バグったバグった」
そう言って鹿島と僕で笑った。その日は楽しくて2年ほどプレイし、決算で終えた。
「いやぁ~お疲れぇ~」
「おつぅ~」
「おつおつぅ~」
「楽しかったな」
「いや、カードが凶悪すぎる」
「わかる。急行系カードなかったら一生金貯まんねぇよな」
「それかカード割るカードとか奪うカード持たないと」
「でも奪うカード全員持ってたら牽制して終わりよな」
「もぉ~なにこのゲームー」
「それ実況中に出る言葉だろふつー」
そう言って3人で笑った。
「んじゃ、また週末とかに声かけるし、大学で会ったら、そんときまた日程相談するかも」
「ん」
「あいよ」
「じゃ、あんがとぉ~お疲れぇ~またねぇ~」
「あ~い。お疲れぇ~またぁ~」
「お疲れぇ~またぁ~」
音声通話専用アプリから鹿島が1番に抜け、僕が2番目に抜けた。
パソコンでの録画を切り、音声の録音も切り、その日は以前撮ったワメブロの動画を編集して
次の日も1限から講義があったがサボる気満々で眠りについた。
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