18 / 183
出会い
第18話
しおりを挟む
するとアナウンスが聞こえてくる。急行の電車が通過するアナウンスだった。
そのアナウンスを聞きながら僕は鹿島の左に背後から回り込み
今度は左の脇に人差し指を刺す。するとまた空気が漏れ出たような
「はひゅー」
と先程から比べると我慢したのかなと感じられる声だか音のようなものを出し
腕組みしたまま左に体を曲げる。鹿島が背後の僕を見る。
僕は肘を曲げ腕を鹿島のほうへ突き出し、両手の指をウェーブするようにし
イヤらしい手つきを見せる。
「その手見るだけで寒気がするわ」
と腕組みしたまま肩を上げ首をすくめた状態になる。
すると突風を引き連れた急行という番長が目の前を走り去って行った。
その突風に少しよろめく2人。全く気にせず、イヤらしい手つきの僕に
「そういえば怜ちゃんのチャンネルはどうなん?」
と聞いてきた。
そう。僕も鹿島に誘われてチャンネルを作って動画を投稿しているのだ。
「オレも全然よ」
「これで怜ちゃんのチャンネルチェックしてめっちゃ登録者数いたらオレ暴れるよ?」
鹿島は鞄から自分のスマホを取り出し操作する。
「さっき脇ちょんしたときも暴れそうになってたけどな」
「あんなんくすぐり弱いやつならみんな暴れ回るって」
そう言った鹿島の顔と今の今まで忙しなく動いていた手も止まる。
恐らく僕のMyPipeのチャンネルを見ているのだろう。
それにしても鹿島の表情が読めない。
驚いているようなショックを受けているような。
…あれ?…。今までの話の流れからして…。
もしかして…。もしかして登録者数爆上がりしてたりするのか!?
そんな期待をしながらも顔は知らぬ存ぜぬな表情で鹿島に
「どうかした?」
と尋ねる。すると
「怜ちゃん…登録者数が…」
やっぱり!本当に?これは現実か?
そんなことを思いながら
「え?なに?」
と神妙な面持ちになり尋ねる。
「登録者数が…オレより多いじゃん!」
と僕のMyPipeのチャンネルの画面にしたスマホを僕の顔の前に突き出してくる。
ワクワクしながら登録者数の数字を見る。26人。
ワクワクと期待のパズルが崩れ去った。崩れ去った裏側にあった文字は「現実」。
「先週と変わってないじゃん。鹿島知ってたろ」
僕と鹿島は仲良くなってからというもの
ほぼ毎日のようにオンラインゲームを一緒にしている。
そのときボイスチャットで会話をしているため
「今日なにがあった」や「この番組おもしろかった」など
いろいろ話しているため知っているはずなのである。
「ふふふ~知ってた~」
とワザとらしい怒った顔から自然な笑顔へと変わった。
「んふふ~良い笑顔」
「知ってたけど~知ってたけど~なんで本数多いオレより
全然投稿してない怜ちゃんのほうが登録者数多いの!?納得いかな~い!」
軽く地団駄を踏む。
「やっぱ暴れるやん」
「まぁ怜ちゃん良い声だしなぁ~。しゃーないか」
そう。これもMyPipeを始めた1つのキッカケだ。
母にも父にも妹にも鹿島にも言われて少しその気になったのかもしれない。
オレって良い声なんだ。
と。
そして良い声が話題になって人気チャンネルになるかもしれない。
とも思った。が、やはり現実は違った。
最初に撮ったのはモンスターナンバーライズの動画。
全然新作ではなかったが今発売されているシリーズの中では1番最新作には違いないし
自分のペースでできるのがこれだった。
特にこれといって企画は思い付かなかったし
プレイスキルが飛び抜けてあるわけでもなかったので
「[モンナンRise]動画始めました。よろしくお願いします。[初投稿]」
となんの変哲もない初動画を投稿した。
投稿する完了ボタンを押すのに少しだけ勇気がいった。
投稿して2日はソワソワとドキドキで
日常を日常通り出来ていたかも自信がないくらいだった。
夜中1時。ベッドの上で寝転がり
意を決してスマホで自分のチャンネルを開き、初投稿動画の再生数を確認した。
「もしかしたら何千、何万再生いってるかも」という気持ちと
「どうせ再生数なんてゼロだ」という気持ちが
どちらが重いかどちらが軽いかわからず、心の中で天秤がぐらぐら揺れていた。
投稿した動画のタイトルから視線を下げる。再生数17。
これが現実だった。たぶん初投稿で再生数17はマシかもしれないが少しショックを受けた。
しかしショックを隠すように装う。誰に見られているわけでもないのに。
自分の心をも騙そうとする。自分の心など騙せるはずもないのに。
それからも週1くらいのペースで動画を投稿していった。
画面録画を開始し、ゲームをしてその動画をパソコンで編集してと
ゲーム実況動画の作成、投稿とは意外と手間暇の掛かるものだった。
しかし成果が出ない。動画を投稿して再生数が多いときで50回程度。
僕のやる気は上がることはなかった。
しかし嬉しいコメントがついたときがあった。
「良い声ですね」というコメントだった。
このコメントを見つけたのは大学に向かう電車内でのことだった。
僕は嬉しくて嬉しくて本当に胸が躍るような
胸の内側で太鼓を叩いてお祭りを開催しているような
上半身の嬉しさが溢れて両足が少し浮いた。文字通り浮き足だった。
ただ電車内。右にも左にも人が座っているし、前にも人が立っていた。
僕は口角が上がるのを必死で堪え、コメントに返信した。
「ご視聴、コメントいただきありがとうございます!
声、褒めていただき嬉しいです!」
いつもより指がはやく動いた。そんな気がした。
コメント1つでこんなに嬉しいんだ。
そう噛み締めた。その日から少しだけやる気が上がった。
そのやる気に比例して成果も上がる。…そんな世界ではない。
そんなことはわかっていたけど、1カ月やる気を出して2日に1本くらいのペースで投稿した。
けど結果はいつもと変わらなかった。
1本だけ100再生くらいの動画があったくらいで現実なんてこんなもんだと思った。
そんなこんなでやっているうちに登録者は26人になっていたのだ。
そのアナウンスを聞きながら僕は鹿島の左に背後から回り込み
今度は左の脇に人差し指を刺す。するとまた空気が漏れ出たような
「はひゅー」
と先程から比べると我慢したのかなと感じられる声だか音のようなものを出し
腕組みしたまま左に体を曲げる。鹿島が背後の僕を見る。
僕は肘を曲げ腕を鹿島のほうへ突き出し、両手の指をウェーブするようにし
イヤらしい手つきを見せる。
「その手見るだけで寒気がするわ」
と腕組みしたまま肩を上げ首をすくめた状態になる。
すると突風を引き連れた急行という番長が目の前を走り去って行った。
その突風に少しよろめく2人。全く気にせず、イヤらしい手つきの僕に
「そういえば怜ちゃんのチャンネルはどうなん?」
と聞いてきた。
そう。僕も鹿島に誘われてチャンネルを作って動画を投稿しているのだ。
「オレも全然よ」
「これで怜ちゃんのチャンネルチェックしてめっちゃ登録者数いたらオレ暴れるよ?」
鹿島は鞄から自分のスマホを取り出し操作する。
「さっき脇ちょんしたときも暴れそうになってたけどな」
「あんなんくすぐり弱いやつならみんな暴れ回るって」
そう言った鹿島の顔と今の今まで忙しなく動いていた手も止まる。
恐らく僕のMyPipeのチャンネルを見ているのだろう。
それにしても鹿島の表情が読めない。
驚いているようなショックを受けているような。
…あれ?…。今までの話の流れからして…。
もしかして…。もしかして登録者数爆上がりしてたりするのか!?
そんな期待をしながらも顔は知らぬ存ぜぬな表情で鹿島に
「どうかした?」
と尋ねる。すると
「怜ちゃん…登録者数が…」
やっぱり!本当に?これは現実か?
そんなことを思いながら
「え?なに?」
と神妙な面持ちになり尋ねる。
「登録者数が…オレより多いじゃん!」
と僕のMyPipeのチャンネルの画面にしたスマホを僕の顔の前に突き出してくる。
ワクワクしながら登録者数の数字を見る。26人。
ワクワクと期待のパズルが崩れ去った。崩れ去った裏側にあった文字は「現実」。
「先週と変わってないじゃん。鹿島知ってたろ」
僕と鹿島は仲良くなってからというもの
ほぼ毎日のようにオンラインゲームを一緒にしている。
そのときボイスチャットで会話をしているため
「今日なにがあった」や「この番組おもしろかった」など
いろいろ話しているため知っているはずなのである。
「ふふふ~知ってた~」
とワザとらしい怒った顔から自然な笑顔へと変わった。
「んふふ~良い笑顔」
「知ってたけど~知ってたけど~なんで本数多いオレより
全然投稿してない怜ちゃんのほうが登録者数多いの!?納得いかな~い!」
軽く地団駄を踏む。
「やっぱ暴れるやん」
「まぁ怜ちゃん良い声だしなぁ~。しゃーないか」
そう。これもMyPipeを始めた1つのキッカケだ。
母にも父にも妹にも鹿島にも言われて少しその気になったのかもしれない。
オレって良い声なんだ。
と。
そして良い声が話題になって人気チャンネルになるかもしれない。
とも思った。が、やはり現実は違った。
最初に撮ったのはモンスターナンバーライズの動画。
全然新作ではなかったが今発売されているシリーズの中では1番最新作には違いないし
自分のペースでできるのがこれだった。
特にこれといって企画は思い付かなかったし
プレイスキルが飛び抜けてあるわけでもなかったので
「[モンナンRise]動画始めました。よろしくお願いします。[初投稿]」
となんの変哲もない初動画を投稿した。
投稿する完了ボタンを押すのに少しだけ勇気がいった。
投稿して2日はソワソワとドキドキで
日常を日常通り出来ていたかも自信がないくらいだった。
夜中1時。ベッドの上で寝転がり
意を決してスマホで自分のチャンネルを開き、初投稿動画の再生数を確認した。
「もしかしたら何千、何万再生いってるかも」という気持ちと
「どうせ再生数なんてゼロだ」という気持ちが
どちらが重いかどちらが軽いかわからず、心の中で天秤がぐらぐら揺れていた。
投稿した動画のタイトルから視線を下げる。再生数17。
これが現実だった。たぶん初投稿で再生数17はマシかもしれないが少しショックを受けた。
しかしショックを隠すように装う。誰に見られているわけでもないのに。
自分の心をも騙そうとする。自分の心など騙せるはずもないのに。
それからも週1くらいのペースで動画を投稿していった。
画面録画を開始し、ゲームをしてその動画をパソコンで編集してと
ゲーム実況動画の作成、投稿とは意外と手間暇の掛かるものだった。
しかし成果が出ない。動画を投稿して再生数が多いときで50回程度。
僕のやる気は上がることはなかった。
しかし嬉しいコメントがついたときがあった。
「良い声ですね」というコメントだった。
このコメントを見つけたのは大学に向かう電車内でのことだった。
僕は嬉しくて嬉しくて本当に胸が躍るような
胸の内側で太鼓を叩いてお祭りを開催しているような
上半身の嬉しさが溢れて両足が少し浮いた。文字通り浮き足だった。
ただ電車内。右にも左にも人が座っているし、前にも人が立っていた。
僕は口角が上がるのを必死で堪え、コメントに返信した。
「ご視聴、コメントいただきありがとうございます!
声、褒めていただき嬉しいです!」
いつもより指がはやく動いた。そんな気がした。
コメント1つでこんなに嬉しいんだ。
そう噛み締めた。その日から少しだけやる気が上がった。
そのやる気に比例して成果も上がる。…そんな世界ではない。
そんなことはわかっていたけど、1カ月やる気を出して2日に1本くらいのペースで投稿した。
けど結果はいつもと変わらなかった。
1本だけ100再生くらいの動画があったくらいで現実なんてこんなもんだと思った。
そんなこんなでやっているうちに登録者は26人になっていたのだ。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
貞操逆転世界で出会い系アプリをしたら
普通
恋愛
男性は弱く、女性は強い。この世界ではそれが当たり前。性被害を受けるのは男。そんな世界に生を受けた葉山優は普通に生きてきたが、ある日前世の記憶取り戻す。そこで前世ではこんな風に男女比の偏りもなく、普通に男女が一緒に生活できたことを思い出し、もう一度女性と関わってみようと決意する。
そこで会うのにまだ抵抗がある、優は出会い系アプリを見つける。まずはここでメッセージのやり取りだけでも女性としてから会うことしようと試みるのだった。
診察室の午後<菜の花の丘編>その1
スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。
そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。
「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。
時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。
多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。
この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。
※医学描写はすべて架空です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる