本当の絶望を

夕浪沙那

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1章

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「お姉様、その目は何?
次期王妃の私にそんなことして許されると思ってるの?」

「本当に憎たらしい」

ミカエラ、
外見だけ見れば、王妃に相応しいのはこの子なのだろう。

私と違い、人の注目を集める主張の強い顔立ち。1つ1つのパーツは主張が強いが、小さな輪郭の中に収まると上手く調和する。

年下ながら私より整ったスタイル。
体のラインは細いが、出るところは出ていて、その体の起伏が見る人を虜にする。

なにより、私が手に入れることのできなかった白色の髪。

お父様の琥珀色の瞳はミカエラ同様、
私にも遺伝していた。
 
だが、お母様の白色の髪だけは遺伝しなかった。

私の人生をこんな惨めにしたのは、紛れもなくこの黒色の髪のせいだ。

髪色さえ遺伝すれば…

「私も、貴方が憎たらしいわ、世界中の誰よりも」

「何ですって?」

予想もしていなかった言葉が飛んできて、
ミカエラは明らかに動揺していた。

「お姉様さっきからどうしたのらしくない…
頭のネジでも外れたの?」

私の態度に納得できなかったのか、
ミカエラは八つ当たりとして私の肩を強く押した。

「…」

以前なら、そのままお尻をついてしまっていたが、なんとか後ろ足で踏ん張って耐えてみせた。

「パチッ…」

私の体が反射的に動いた。
私はミカエラの頬をかなりの勢いで叩いていた。

ミカエラはそのままお尻をついた。 

叩く方と叩かれる方の立場が逆転した。
 
人を叩くと、こんなにも手のひらがヒリヒリするなんて…初めて知った。

「こっちは全てを失ったの、ねぇ覚悟できてる?」

ミカエラは目に涙を浮かべた。 

こんなことで、涙を浮かべるなんて…

つくづく幸せものだ。

両親から叩かれることに慣れてしまった私は、
叩かれすぎて涙すら出なくなってしまったというのに…

そんなことを思っていると、もう一発叩きたくなってきた。

散々私に酷いことをしてきたんだ、
八つ当たりくらいしても許されるだろう。

ミカエラを無理やり立ち上がらせ、
今度はさっきよりも大きく手を振りかぶった。

「何脅えているの」

ミカエラに向けて放った。

恐怖で体が固まってしまったミカエラは動けない。

ミカエラは体に力を入れて目をつむった。

力を込めた手のひらが、
再びミカエラに触れそうになったときだった。

何者かが後ろから私の腕を掴み、
ミカエラへの一発を防いだ。

私が両親にやられているときには、
誰も助けてくれなかったくせに、どうして…

納得がいかない…
手に全力で力を込めるも、ピクリとも動かない。

「やめておけ」

聞き覚えのある声に、すぐに振り返る。

一発を免れ、目を見開いたミカエラも、  
自分を助けてくれた人物が誰か確かめる。

「…」

とにもかくにも、運命は私を苦しめる。

怖気付いた表情が見る見るいつものミカエラに戻っていく。

「助けていただきありがとうございます!
ラビラ様」
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