小町のひとりごと

夢酔藤山

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……あかね雲の行方(12)

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 しかし、どういうことか、わたしはそれが出来ませんでした。
 十夜……二十夜……わたしは連日通い渡る深草少将平義宜という御方を迎え入れなかったのです。
 季節は移ろい過ぎていきます。
 燃える楓の季節を過ぎて、比叡の彼方に冠が積もりても、わたしは深草少将平義宜という御方を迎えなかったのです。
 そして、九九夜も過ぎました。
 いよいよ明日の夜、百日目の夜が来ます。
 きっとわたしは何食わぬ顔で、取り澄ましながらも、深草少将平義宜というその御方を屋敷へと招き入れるのでしょう。
 わたしの心には夜叉が棲んでいるのでしょうか。
 このような酷い仕打ちをしていながら、自分で自分を嘆き恐ろしがっているのです。女とは、こうも都合のよい生き物なのですか。それとも、このような所業を平然としてのけるのは、わたしだけなのでしょうか。
 いつも格子の隙間から覗き拝んでいる清潔そうなその御尊顔は、これまでの酷い仕打ちをきっと赦して頬笑むことでしょう。
 これが男というものなのですか。男とはこうも手に入れたい女性の為に、滅して励むものなのでしょうや。
 でも、きっとわたしは。
 この御方なら愛せる気がする。
 深草少将平義宜というその御方なら。

 百日目。
 思わぬ結末にわたしは呆然としていました。
 あれ程の情熱を示し
「あと一夜」
というところまで来たというのに、深草少将平義宜というその御方は、渡らせ参りませんでした。
 もしや通う道すがら、何事か起きたのではあるまいか。
 わたしは使いの者を深草まで差し向けました。そして、思わぬ事実を知ってしまったのです。

 深草少将平義宜というその御方が、死んだ。
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