小町のひとりごと

夢酔藤山

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……あかね雲の行方(10)

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 この年の夏も、ゆるゆると過ぎ去ろうとしていました。
 わたしも少し年を召したものか、陽が西に傾く少し前の暑さに、物憂げな気怠さを覚えるようになりました。別段、年を召さずとも、気怠いことに変わりはござりませんが、女というものは、些細な違いを機微に感じるものなのです。
 わたしにはまだ、都の男達を魅了する美しさがある。
 それは、鏡に写る自分を観ても判ります。
 しかし、年は確実に重ねていきます。ましてや宮様だけの為に美貌を磨こうと志してきた、わたしの心の支えはなくなりました。いつかはその美しさも、花のように散り果てていくでしょう。
 花の生命は短いと申しますが、ほんにそうですね。
 いま振り返ってみれば、まさにそのとおりで、この女の性(さが)を、わたしは何一つ濡れ潤わせることもありませんでした。
 そう、見てくれこそ磨きをかけたこのわたしも、女としては全くの未完、殿方の〈まこと〉を識ることもなく、ここまで来てしまったのです。
 そうとも知らずに、今日もあの深草少将平義宜という御方から文が届きました。
 この殿方も世の男どもと同様、さぞやわたしが、選り好みの激しい房中房事に達者な、色恋の極めた女性であると思っていることでしょうね。
 毎日のように、この深草少将平義宜というその御方は、文をわたしに送って参ります。
 送り届けられるその文の内容は、御友輩との賭け事の詫びを重ねる繰り言と、本気で想いを募らせているという、まさに〈情熱〉そのものでした。
 そして、この日の文に添えられている歌が、彼の想いの熱さ深さを感じさせました。

  花の色は霞にこめてみせずとも
   香をだにぬすめ春の山風
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