小町のひとりごと

夢酔藤山

文字の大きさ
19 / 41

……あかね雲の行方(2)

しおりを挟む
 父の小野長友は、いい加減、わたしが権力者を婿とするのを望んでいるご様子。わたしは、うんざりです。全く男というものが信じられなくなっておりました。
 放っておいて欲しいのです。
 放っておいて下されば、わたしは静かに宮様のことも、思い出の中へ封じることが出来るというのに。
 そんなわたしの心を、まるで逆撫でするかように、男達は通って参ります。わたしの磨かれた美貌を、肉体を、奏でる声を欲して。
 そんな気忙しさから逃れるように、わたしは女官だけを伴い、小野家の所有する山科の別宅に引き籠もるようになりました。
 ここは都を遠く離れた洛南の地。
 奈良街道を往来する人影さえ疎らな、風光明媚なる鄙びた土地です。あろうことか、小原小野郷と同じ匂いのする処なのです。
 これまで頂戴した煩わしき恋文の数々……。
 捨てることも憚られたわたしは、それを張り合わせ型とし、わたし自身の煩悩を打ち払う術として、地蔵を造ることにしました。人々がわたしへ寄せる想いも無下に出来ませんから、一緒に供養できたら、どんなに素晴らしいことでしょう。そう思っての、まさに、一大発起でした。
 ようやく訪れた心の平安。
 独りで心の内を慰める刻。

 しかし、そんな日々も、長くは続きませんでした。

 わたしを求めて方々を彷徨い歩き、金に糸目をつけずに人を使い、遂に執念実らせこの山科まで追いかけてきた男がいたのです。
 深草少将平義宜(たいらのよしのぶ)。
 その御方は、平安遷都の功労者・桓武帝の御孫宮にあたり、賜姓平氏という身分でございます。姓を帝から下賜された者は、もはや皇族ではなく、わたしの敬愛する在原業平さまのように、自活の道を探らねばなりません。
 ただし、この深草少将平義宜というその御方は、出生だけで扶持の約束された御人でした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

彼女が望むなら

mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。 リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。

神楽坂gimmick

涼寺みすゞ
恋愛
明治26年、欧州視察を終え帰国した司法官僚 近衛惟前の耳に飛び込んできたのは、学友でもあり親戚にあたる久我侯爵家の跡取り 久我光雅負傷の連絡。 侯爵家のスキャンダルを収めるべく、奔走する羽目になり…… 若者が広げた夢の大風呂敷と、初恋の行方は?

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

抱きしめて

麻実
恋愛
夫の長期に亘る不倫に 女としての自信を失った妻は、新しい出会いに飛び込んでいく。

処理中です...