ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第九章

9-44

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 自身が元老院の手先である事実に孫が激しい憤りを見せるも、大司祭は動ずる様子も無く淡々と、

「新たな魔王は甘くない。その様な時宜に回復役がこの有様では「勇者組の全滅」も時間の問題じゃ」
「なっ?! クッ……」

 皮肉に返せる言葉は無かった。
 地面に伏す、自身の今の姿からでは。

 何を言っても説得力に欠ける、負け犬の遠吠え。
 恥を知らぬ身であったなら、倒された姿のまま異を唱えることも出来たであろうが。

 誇りを胸に、非難を甘んじて受け入れ黙する孫を前にしてなお、祖父は変わらぬ語り口で以て、

「それに、近々元老院から命(めい)が下ろう」
「?」
「思惑に従ぬ現勇者一行への抹殺命令がのぉ」

『なっ?!』

 地に伏したまま驚愕する孫を祖父は冷笑し、

「案ずるでない。お前の後に、お前がお気に入りの娘(パストリス)は先んじて送ってやろう」
『お嬢(じょう)をだとォオ!』

 鮮血に染まる彼女の姿が、悲鳴が、ターナップの中の何かを打ち砕いた。
 勝利を諦め、立ち上がれない程の精神的、肉体的ダメージを受けていた筈が、

「ジジィ……てんめぇえ……」

 生き返った両眼でユラリと立ち上がり、

『!』

 咄嗟に大きく飛び退く大司祭。
 攻撃を警戒したと言うより、孫の気迫に気圧され。

 叙事詩時代から生きる猛者の第六感が、危険を知らせる。

 現在に生きる青年から向けられた気概に、感じた悪寒に、
(流石はワシの孫と言ったところか)
 それは戦士としての、強がりか。

 祖父として、孫の成長の嬉しさ半分、辛うじて立ち上がったように見えるターナップを見据え、
「立って居るのが精一杯の今のお前に何が出来、」
 皮肉を言い終わるより先、

『のぉくっッ!?』

 眼前に拳が迫る。
「クッ!」
 瞬間的に両腕でガード、無詠唱の天技を用いた身体強化にて。

 バァバアァシィイィイッ!

 生身の拳を打ち込んだとは思えない音を、天技で強化された大司祭の両腕で立てるターナップ。
 しかし止められながらも、

『ソレがぁどうしたァジジィイィィィイイィィッ!!!』

 獣のような荒ぶる息遣いで強引に、

『ダァラァァアァァァアーーーッ!』

 受け止められた剛腕を怒り任せに振り抜いた。
 その「魂と誇り」を込めた一撃に、

「クゥクッ!」

 弾き飛ばされる大司祭。
 天技で身体強化をしていたにも拘らず。

 否、正確には自ら飛び退き、押さえ切れなかった彼のチカラを打ち消したのであるが、
(死に体(たい)であった筈が、何処にこのようなチカラが?!)
 打撃を受けた両腕に残る痺れに、彼の潜在能力に、驚きを隠せなかった。

(ワシは此奴(こやつ)の成長度合いを見誤っていたと言うのか?!)

 想定と現実をすり合わせ、戦い方の修正を行いたいところではあったが、

『逃げんなやァジジィイ!』

 ターナップは攻め手を強め、拳による休まぬ連打連打連打の嵐。
「クッ!」
 大司祭は逃げと、防御の一辺倒になり、

(なっ、何故じゃ?! 何が起きていると言うんじゃ?!! 天法を纏うワシが「纏わぬ此奴(こやつ)」に何故に押されておるじゃと?!!!)

 内心で混乱していた。

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