ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第九章

9-11

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 魔王プエラリアが身内からの裏切り行為に動揺を垣間見せていた頃――

 ゲートから抜け出たラディッシュ達は呆然と、
「「「「「「「…………」」」」」」」
 立ち尽くしていた。

 戸惑っていた。

 敵だらけのど真ん中に放り出されるのも、覚悟はしていた。
 ゲートから抜け出る直前、

(二重に飛ばされたような……)

 今までとは少し違う感覚もあったから。
 しかし抜けた先は、

≪衣裳部屋ぁ?!≫

 様々な服が掛けられた一室。
 中には「こんなの、いつ着るんだ」と、用意した何者かにツッコミを入れたくなるような、突飛で、奇抜な服までも。

 意気込んで乗り込んだ勇者組にとって、そこは「完全なる肩透かしな空間」であった。

 とは言え地世に向かうゲートに入ったのは事実であり、ラディッシュは緩みそうになる緊張を意識的に、自己暗示的に繋ぎ止める為、同意が窺える仲間たちと、

(ゆぅ、油断せずに行こう!)

 アイコンタクトを交わし合い、頷き合い、周辺警戒を怠らないよう気を引き締め合ったが、ただ一人、

『何スかねぇこの部屋ぁ~?!』
「「「「「「…………」」」」」」

 緩んだターナップが、半笑い。
 ヒラヒラ衣装を前に、すっかり気が抜けてしまった様子で、

「悪っ趣味なぁ部屋っスねぇ~ラディの兄貴ぃ♪」

 小馬鹿にした笑みに釣られ、自らに緊張を強いたラディッシュ達も、
「「「「「「………」」」」」」
 思わず緩みそうになった、次の瞬間、

『『『『『『『ッ!!!』』』』』』』

 真上から押し潰して来るような、強大な地世のチカラが。
 完全に気を抜いてしまっていたターナップなど、不意を突かれて圧倒され、

「クッ!」

 膝から崩れ落ちそうになったほど。
 中世の七草の一人であるにも拘らず。

 しかし彼が感じた重圧は、完全には気を抜いていなかったラディッシュ達も同じであり、勇者組の七人は瞬間的に纏った緊張の、こわばりの表情で頭上を一斉に見上げ、

≪プエラリアが居る!≫

 それは、確信。
 感じた「地世のチカラ」は過去に類(るい)を見ない強大なモノであり、その根底に見え隠れしたのは、紛う事なき「プエラリアの気配」であったから。
 油断があったとは言え、たった一度のチカラの放出で、
「「「「「「「…………」」」」」」」
 畏縮させられてしまった勇者組。

 だからと言って、
《戦う前から気持ちで負けていては、勝敗は決まったも同然》
 幾多の死戦を経てこの地に立つラディッシュはそれが分かるが故に、自らをも鼓舞するように、敵に発見される可能性も顧みず、

『行こう!』

 チカラ強く喊声を上げると、
「「「「「「!」」」」」」
 仲間たちも気持ちで呑まれてしまっていた自身に気付き、大きく頷き弱気に傾きかけた心を立て直し、

《行こう!》

 勇者と共に、衣裳部屋から飛び出した。
 目指すは上階の玉座に座(ざ)す、地世の魔王プエラリア。
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