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第九章

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 覚悟を以てゲートに飛び込んだラディッシュたち勇者組は――

 ゲートから抜け出るなり、
『『『『『『『えっ?!』』』』』』』
 驚きの声を上げ、玉座のプエラリアも変わらぬ笑顔のままではあったが、

『なぁっ?!』

 驚き露わに立ち上がった。
 愛らしい笑顔の口元の端を、微かに震わせながら。

 そこに浮かんでいたのは、怒り。

 何故にプエラリアが「怒りの感情」を露呈するほど驚いたのか。
 それはラディッシュ達が現れた場所にあった。
 七人が現れたのは、

《魔王城》

 まさかの「謁見の間の階下」であり、それに輪を掛け、
(ラディがゲートを抜ける直前に発動したのは、潜伏型の地技?! あのチカラは……グラァン!)
 合成獣として使い捨てた元戦友の、置き土産であったから。

 魔王は怒りから崩れそうになる愛らしい笑顔に苦々しさを滲ませ、
「や、やってくれましてねぇグラン・ディフロイス。キミのようなヤツを「智将」と呼ぶんだろうねぇ♪」
 罵声を辛うじて堪えて皮肉を口に、表面上の余裕を自ら演出したものの、その腸(はらわた)は、

(何ごとかコソコソと裏工作していたのは分かっていたけどねぇ!)

 煮えくり返っていた。
 感情をむき出しに猛り狂わなかったのは、地世王としてのプライド。

 騒ぐほどの事も無い「小事と捉えている」と、懐の深さ、寛大さをアピールし、自己暗示的にも威厳を保ったつもりであったが、どの様に取り繕っても親友と呼ぶに等しい存在であった「元戦友の一人」からしっぺ返しを受け、足元をすくわれた滑稽は変えようが無く、玉座の隣で置物と化していた全身鎧は、

「…………」

 兜の口元部分に手甲を当てると、
「…………」
 微かに肩を上下に揺らした。

 その姿に「辛うじての笑顔」のプエラリアは、苛立ちが透ける物言いで、
「何が、そんなに、可笑しいのですかぁ?」
 苦言を呈するような責めを口にしたが、全身鎧は地世の絶対的君主である魔王プエラリアからの叱責を前に平然と、
「…………」
 両肩を小刻みに揺らし続けた。

 素顔は兜で覆われ、表情こそ見て取る事は不可能であるが、愉快げに。
 しかしそれは、
《己(おの)が主(あるじ)を軽んじる行為》
 通例であるならば罰を与える場面でもあったが、プエラリアは物を言わぬ相手に「口喧嘩では勝てぬ」とでも言いたげに、

「ま、まぁイイでしょぉ♪」

 負け惜しみとしか聞こえない口振りで話を強引に打ち切り、
「それでも地世の王であるこのボクの勝利は揺るがなぁい♪」
 いつも通りの笑顔に戻った。

 否、「戻した」と言う方が適切か。
「…………」
 無言で笑い続ける全身鎧を傍らに。
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