ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第八章

8-48

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 町の人々とのギクシャクした関係が改善されぬまま日々が過ぎ――

 事故処理がひと段落した頃、容姿を中世人の姿に戻したリンドウが、

『アーシ(天世人)達が居るのはぁ町の人達の精神衛生上良くないのしぃ♪』

 冗談めかした物言いと精一杯の笑顔で、ラディッシュ達に出立を促した。
 正体を明かす羽目になった事に「後悔は無い」と笑顔で言い切るも、何処か寂しげでありつつ。

 やがて勇者一行が出立の折、見送りに集まる町の人々。
 しかし、

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 リンドウの正体を知る前の気心は皆無で、まるで「不敬にあたる」のを気にして、義務感から集まったような、よそよそしさ。

 だからと言って無視して出発する訳にはいかず、馬車の手綱を握るラディッシュは、
「…………」
 旅立ちのきっかけを見い出せずに居ると、荷台のリンドウが過剰とも思える満面の笑顔で、

『いつまでも町の入り口に居たらぁ邪魔になるしぃ~♪』
(!)

 きっかけを貰った彼も、
「そ、そうだねぇ♪」
 多少ぎこちないながらも笑顔を返し、町の人々に向け、

「御世話になりました♪」

 仲間たちと頭を下げたが、返って来たのは、

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 何とも微妙な反応の数々。
 双方、気マズイ空気の中、

「で、では、僕達はこれで!」

 逃れるように、早々に馬車を走らせようとすると、

『ママもぉみんなもぉヘンだよぉ!』

 憤慨露な声を上げたのは、一人の女児。
 リンドウの手により母親と共に命を守られた、女の子であった。

 幼いながらも大人を圧する怒りようで以て、
「どうしてぇちゃんとぉアリガトウってぇいわないのぉ! たすけてもらったらアリガトウでしょ!」
((((((((((!))))))))))
 痛い所を衝かれた顔を見せる、町の大人たち。

 その表情からラディッシュ達は知った。

 町の大人たちが抱えていたのが「天世人に対する嫌悪感」ではなく、素直に感謝を伝えらなかった「罪悪感であった」と。
 我が身を顧みず助けてくれたリンドウが「町を蹂躙したハクサン」と同じ天世人と知り、思わず、反射的に、彼と姿をダブらせ嫌厭(けんえん)してしまったのだが、いざ冷静を取り戻してみれば、命を救われておきながら「大人として実に不誠実」な、人としても「恥ずべき振る舞い」の数々。

 彼女は、町の人々を犠牲に「悪しき大願成就」を果たそうとしたハクサンとは違うのである。

 とは言え、
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
 一度振り上げてしまった拳を「今更ゴメンナサイ」と素直に下せぬのが大人の見栄、面倒臭い悪癖。

 母親は町の大人の戸惑いを代弁するが如く、
「そ、そんな簡単な話じゃないよぉ」
 諭す物言いをしたが、

『そんなのオカシイよぉ!』

 幼子は即座に反発。
 すると、
「そ、そうだよな……」
 町の大人たちの中から同調の声が。

 彼女の素直に心を動かされ、
「その子の言う通りだ……」
「確かにそうよね……」
 声は、心の片隅で「謝罪のきっかけ」を待っていた大人たちの間に瞬く間に広がり、女の子と笑顔で感謝を口々にしつつ、

《リンちゃん、また遊びにおいでぇ♪》
「!」

 呆気に取られていたリンドウは思わず感涙したが、満面の笑顔で涙を振り払い、
『必ずぅまた来るしぃーーー♪』
 走り出した馬車の荷台から手を振った。

 憑き物が落ちた町の人々も笑顔で手を振り応え、チィックウィードやパストリスたち勇者組も笑顔で手を振り返すと、反発されたことで斜に構えていたゴゼンとヒレンも、
「「…………」」
 何処か照れ臭そうに「それとなく」を装い、手を振った。

 以降、天世の三人は荷台内に引き籠る事は無くなり、移動を続ける馬車から復興半ばのあるブル国の町々を、額に汗して作業する人々を、延々と眺め続けた。
「「「…………」」」
 同胞の暴挙を止められなかった自責を、一つ一つ心に刻み付けるように。

 馬車は一路、アルブル国北の国境を目指してひた走る。

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