ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第八章

8-23

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 王都エルブレスの貴族街を馬車で進むラディッシュ達――

 庶民街とは異なる景色にリンドウ、ゴゼン、ヒレンの興味が尽きない中、やがて馬車は懐かしささえ感じるオエナンサ邸の大門(おおもん)を抜け、アプローチを回って屋敷の正面入り口で停車。

「ここがドロプの家しぃ~?」
「まるで城だよネェ」
「まっ、まぁまぁ「立派な方」なんじゃないのぉ」

 天世の三人組が三者三様の反応しながら下車すると、ラディッシュは三人の新鮮な反応に笑みを見せながら、屋敷前で笑顔で待ち受ける従者に馬車を任せ、終始無言のドロプウォートをチラ見。
「…………」
 何を察したのか、彼は何とも言えない複雑な笑みを見せながら、

『じゃ、じゃあ行こうかぁ♪』

 仲間たちに促した。
「…………」
 黙って頷くドロプウォートと、

「「「「「…………」」」」」

 何故か苦笑の勇者組。
 天世人の三人組は当然、

《ドロプウォートの家なのに何でラディッシュが仕切ってるの?》

 七人の微妙な反応も含め不思議に思ったが、その謎の答えは屋敷の扉が開かれるなり、

《なるほどぉ……》

 困惑と共に理解した。
 開いた扉の先で、

『『『『『『『『『『お帰りなさいませぇ、お嬢様方ぁーーー♪』』』』』』』』』』

 カタカナの「ハの字型」に並んだメイド達が笑顔で恭しく一斉に頭を下げ、「ハの字」の頂点では、

『『お帰りぃ我らが愛娘ぇ~~~♪♪♪』』

 ドロプウォートの両親が歌劇団ばりのポージングでの歓待。
 娘(ドロプウォート)は予期していた事とは言え、

『!!!!!!!!!』

 堪え切れぬ羞恥から顔を真っ赤に手で覆い隠し、勇者組はオエナンサ邸の「変わらぬ圧の強さ」にたじろぎ、思わず、

「「「「「「オセワニナリマースぅ」」」」」」

 義務教育前の子供のような物言いで頭を下げた。
 その一方で、初体験となる天世人三人組は、

「「「・・・」」」

 ただただ絶句。
 異様な光景にリンドウは息を呑みつつラディッシュに歩み寄り、

(ちゅ、中世の貴族はみんな、こんな(へんな)感じなんしぃ?!)

 それなりの気遣いを以て耳打ちし、
(あははは……)
 彼が苦笑を返してお茶を濁すと、ドロプウォートの母親が、

「!?」

 そんな二人を凝視。
 ヒレンにも目を移し、

「あらぁあらぁ~」

 困惑顔で頬に手を当て、
「(娘に)またまた恋敵が増えましたのですわねぇ~」
 嘆き声に、

『ちっ、違うなんしぃ!』
『違うわよぉ!』

 二人は慌てて即否定。
 気が強い二人のわりに「恋愛話には弱い」のか、赤面顔のリンドウは動揺を隠し切れない様子で、

「あっ! アーシはぁ! こぉなヒョロイのぉ全然好みじゃないしぃ!」

 自ら歩み寄ったラディッシュを無下に突き飛ばし、

『アーシの好みはぁもっとぉ体のガッシリしたぁ!』
「スパイダとか、かぁ♪」

 すかさずツッコミを入れたのは、悪い顔して笑うニプルウォート。
 ラディッシュを粗雑に扱った彼女への、意趣返しも含めてか、皮肉と、からかいを交じえてツッコムとリンドウは、

『・・・・・・』

 当人(スパイダマグ)には到底見せられない、とてもとても、それは「塩っぱい顔」をした。
 異性として、よほど嫌っているのを露骨に呈し。
 その嫌われように、

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 流石に同情を禁じ得ない人々。
 スパイダマグの素行に「彼特有の暑苦しさ」はあるものの、その心根は「善(ぜん)」であるのを知っていたから。
 憐れに思ったラディッシュは、

「スパイダさんに「その顔」は……見せないであげてね……」

 割と真剣な表情で願うと、
「だって、しぃ……」
 リンドウはポツリと口を開いたと思うと堰を切った大河ように、

『元老院はもう気にしなくてイイし「素顔を出したら」ってアーシが言ってあげたらぁアイツ何て言ったと思うしぃ!』
「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」

『貴方は我らに人前で「イ〇モツを晒せ」と言うおつもりかってぇ言ったのしぃ!』
「「「「「「「「「「ッ!!!」」」」」」」」」」

 血相を変えて即座に愛しき我が子(チィックウィード)の両耳を手で塞ぐ母(ドロプウォート)と、衝撃を受ける一部の人々。

 言葉が違うこちらの世界で「その言葉の示すところ」が理解できた人は、みんな兄弟姉妹(同人誌愛読者)。
 そんな混乱のさ中にあって「彼女から溢れる怒り」は収まりを知らず、

「アーシぁそんな事ぉ一言でも言ったぁしぃ!? アーシの言い方が悪いのしぃ?! アーシの気遣いを返せってぇのしぃ!」

 鼻息荒く肩で息を切らせ、仲間たちが「まぁまぁ」と宥めていると、

『「イチ〇ツ」って、何ですわのぉ?』
「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 蒸し返したのは、不思議そうな、気品溢れるキョトン顔を見せるドロプウォートの母、オエナンサ夫人。
 あえての深掘りに、夫であるオエナンサ卿は妻が「口にした言葉の意味」を知った時の羞恥をおもんぱかり、

「そっ、そうだぁ! 私の書斎に「君へ渡す物」が置いてあったんだぁよぉ」

 彼女の両肩を優しく押しながら、

「一緒に取りに行こうか♪」
「あらぁあらぁ、そうですわのぉ?」

 夫人は疑問を持たず背中を押されながら退出して行ったが、閉じた扉の向こうから、

「ところで旦那さまぁ「イチモ〇」って何ですわの? 「〇チモツ」って?」
「我が妻よ、あまり人前で連呼はしないでおくれ……」
「え? えぇ?? ええぇ???」

 次第に遠ざかる二人の声を、
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
 苦笑で見送るラディッシュ達であった。

 未だ怒りが収まらぬ様子のリンドウを除いて。 

 するとゴゼンがここぞとばかり、
『ならぁリンドウちゅぁん「俺はぁ」どぉヨぉ♪』
 自身をアピール。
 しかし軽い態度を見れば、彼女に対して「特別な好意」を抱いてないのは丸分かりで、彼女は当然の如く、冷静に、平静に、淡々と、

『結構しぃ』

 事務的に拒否。
 先程までの「取り乱し」が、まるで嘘のように。

 とは言えゴゼンも「拒否される」と分かっていたのか、それとも「めげないのがナンパ師の性(さが)」なのか、素気無く拒まれたにもかかわらず、
「あららぁ手厳しいぃ~♪」
 笑っておどけて受け流して、今度はヒレンをチラ見。
 色目を使うも、

『フン!』

 これでもかと言わんばかりにソッポを向かれ、
「にゃはははは♪」
 それでもめげずに笑いながら、ドロプウォート達のみならず屋敷のメイド達にも色目を送り、その何処までも計り知れない軽薄さに、

《女子なら誰でもイイのかよ!》

 冷たいジト目を無言で向ける、ロビーの女性陣であった。
 相手が「一応は天世人」なだけに、面罵せずに。
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