ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第八章

8-8

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 部屋から出てリンドウを探すラディッシュ達――

 数組に分かれ、
(リンドウさん、何処に行っちゃったんだろ……)
 不安げに走るラディッシュの背後から、

『はぁ~女の子たちと組みたかったヨォ~』

 趣旨を無視した嘆きを上げたのは、目と髪の色を茶色に変えた姿のゴゼン。
 天世人の容姿のまま町へ出ると「とんでもない騒ぎなる」との判断から、天技を使い、中世で比較的一般的な髪と目の色に変えたのであったが、「リンドウ捜索」にあたりナゼ彼が「男子ラディッシュ」と組む羽目になったのか。
 それは単純明快、女子一同から、

『『『『『『『イヤッ!』』』』』』』

 拒否を突き付けられたから。
 お目付け役にターナップが選ばれなかったのは、力量差。
 街中を行き交う一般女子を前に、まかり暴走した彼を止められるのは、同等以上のチカラを持つラディッシュでなければ不可能であったから。

 女子と行動を共に出来なかったのは、日ごろの彼の「軽薄な立ち振る舞い」や「言動」に端を発する、自業自得、言わば「身から出た錆」であった。

しかし先の「リンドウの件」に関する真摯な口振りから、ゴゼンが「単なるチャラ男」でないのは付き合いが未だ短いラディッシュでも分かる事であり、
(ゴゼンさんも「根は真面目」なんだろうけどなぁ……)
 見た目イケメンの「残念」に苦笑し、リンドウの捜索は走って続けながら、

(そう言えば……)

 ふと浮かんだ素朴な疑問から、

「ねぇ、ゴゼンさん」
「ん?」
「さっきの話にあった「先代の人」って、」

 何者たちであるのか問おうとしたが、

『『!』』

 前方に、ある筈の噴水が見えなくなる程の人だかりが。

((まさか!))

 二人が瞬時に想像したのは、揉みくちゃにされ、大怪我を負うリンドウの姿。
 天世人を前に熱狂した人々の手により。

「話の続きは後だヨォ!」
「そうだね!」

 慌てて駆け寄り、ラディッシュが「誰に」とでもなく、

『何かあったんですか!』

 人だかりの輪に急ぎ声を掛けると数名が振り返り、

「「「勇者様ぁ♪」」」

 熱を帯びた笑顔で興奮気味に、

『完成度の高いコスプレイヤーが現れたんですよぉ!』
『しかも設定も完璧なんでぇす!』
『あんなレイヤーさんが、こぉんな田舎村に来てくれるなんてぇ!』

 最悪を想定し気構えていた分だけ、
「へ?」
 一気に脱力するラディッシュと、その傍らで、

「こ、こす? れいやぁ???」

 キョトン顔のゴゼン。
 フルール国で発行された同人誌をきっかけに広がり、中世で定着しつつある最新の言葉を、天世人の彼が知らぬは無理からぬ話であったが、今、このタイミングで「完成度の高いレイヤー」と聞いたラディッシュには、おもい当たる節が一つ。

(まさか……)

 とある懸念を以て、

「すっ、すみませぇん! ちょっと通して下さぁ~いぃ!」

 人混みを掻き分け、輪の中心になんとか進むと、聴こえて来たのは、

『リンドウちゃ~ん、こっち向いてぇ~♪』
『視線ちょうだぁ~い♪』
『こっちにも何か違う格好を見せてぇ~♪』
『リンドウちゃ~ん、サイコぉー♪』

 手のひらサイズの「四角い白い板」を同じ方へ向ける歓喜の人々と、その先で薄紫の髪をたなびかせ、アメジストの如き瞳でキラキラとした笑顔を振り撒き、

『カワイく撮らなかったらぁ許さないしぃー♪』

 次々新たなポーズを繰り出すのは、
((リンドウ(さん・ちゃん)……))
 悲嘆に暮れ部屋から飛び出して行った「悲しみにむせぶ百人の天世人」、悲哀の序列二位リンドウ、その人であった。
 涙ながらに反発して見せた気骨は、気概は、

『アーシをカワイク撮るしぃ~♪♪♪』
「「・・・・・・」」

 見る影も無し。
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