ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第六章

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 屋敷の外に居たカドウィード、パストリス、ターナップ、チィックウィードの役割は、交渉決裂時の脱出ルートの確保であり、屋敷の中ではラディッシュ達が大立ち回り。
 イリスを背で庇いながら、

『殺しちゃダメだからねぇ!』

 ラディッシュの叫びに、庇われるイリスも、
「ドロプ! ニプルも頼むさねぇ!」
 懇願の声をラディッシュの背から上げると、襲い来るアクア国の騎士、兵士たちの剣を次々と薙ぎ払いながら、

『簡単に言って下さいましてですわぁ!』
『それが騒ぎを起こした張本人が言う事さぁ!』

 苦笑のドロプウォートとニプルウォート。
 すると多勢に無勢でありながら、思い通りにならぬ現状に、

『たかが四人を相手に何をしているかぁあぁぁあッ!』

 声を荒げるディモルファンサ。
 狂気に満ちた支配者の激昂に、騎士、兵士たちはいよいよ以て腹を括らない訳にはいかなくなり、勇者一行を相手に眼の色を変えて玉砕を覚悟、

(これは良くないよぉ)

 死人が出るのは、もはや時間の問題と悟るラディッシュ。
 ドロプウォート、ニプルウォートと視線をチラリと交わし合い、二人も同じ心証を得ていたのか小さく頷き返し、今が退き時と決断した彼は、

「一旦、退くよイリィ!」
「ここまで来て何を言ってるのさねぇ! アタシぁ!」

 ごねる彼女を、タックルすように肩に担ぐとドロプウォートが斬り開いた兵士たちの間隙を縫い、
『ゴメンねぇーーー!』
 誰に言うでもなく廊下を目指して一目散、

『逃がすでなァアァいっ!!!』

 三人と一人はディモルファンサの声を背に謁見の間から飛び出した。
 しかし廊下に出ても当然の如く騎士、兵士たちは湯水の如くに湧いて出て来る。

 先陣切って駆け抜け薙ぎ払うドロプウォートと、追従しながらしんがりを務め、後方の迎撃に当たるニプルウォート。
 間に挟まれ走るラディッシュの肩の上では、イリスが「ディモルファンサに説教させろ」と暴れもがき、そんな彼女の容姿と言動、シチュエーションとが相まって、逃走劇の最中でありながら、

((…………))

 懐かしきラミウムとの過去場面を思い出す、ラディッシュとドロプウォート。
 しかし急に静まるイリスに、

(((?)))

 ラディッシュは走りは止めず、
「ど、どうかしたのイリィ?」
 彼女の尻に向かって問い掛け、今更ながら、

(顔が見える担ぎ方にすれば良かったぁ)

 後悔していると、聞こえて来た声は、
「だ……大丈夫さねぇ……最近いつものアレなだけ、さぁねぇ……」
 淀んでいて、

(((頭痛!)))

 直感する三人。
 とは言え、今は立ち止まる訳にいかず、ラディッシュは走りながら、

「大丈夫、イリィ?! しんどくない? って言ってもゴメンね今は立ち止まる訳にいかないけど……」

 気遣いながらも心苦し気に尻すぼむと、背からは、
「大丈夫さねぇ……しばらくすりゃぁ「また治(しず)まる」だろうさねぇ……♪」
 精一杯の明るさを振り絞った「強がり」が返り、

(((…………)))

 戦いながら逃走を続ける三人は何もしてあげられないもどかしさを抱きつつ、
(((発症頻度が日増しに短くなってるような……)))
 一抹の不安を隠せずに居た。

 やがて勢いそのまま玄関ロビーに飛び込むと、
 バァン!
 屋敷の正面扉を蹴破り、

『こっちでぇありんすぅ!』

 外で待ち構えていたカドウィードが手招き。
 しんがりのニプルウォートは追っ手に向かって、

『コイツでも喰らいなァ!』

 時間稼ぎの煙球を懐から取り出し投げ付け、
 パァン!
 球が炸裂、
 「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」
 追っ手が煙幕に包まれ右往左往する中、逃走するラディッシュ達がカドウィード達の下へ駆け寄ると、

「「「!」」」

 そこにはディモルファンサの家の物と思われる紋章があしらわれた、複数の小型ボートが。
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