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第三章

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 御歴歴の剣幕に、報告に上がったローブ姿の若者は怯えながら、
「ふっ、複数のチカラが一点に集束する現象が観測されましてぇ!」
 他の御歴歴も、

『フルールのみならず、カルニヴァまでとは!』

『いったい中世で何が起きていると言いますの!』

 混乱と怒りと狼狽の中、長と思わる一人が、

『スグにスパイダマグを呼べ!』

 若者を急き立て、
「かっ、かしこまりましたぁ!」
 部屋から転がる様に飛び出して行く背に、
(今のアヤツ(スパイダマグ)に頼らねばならぬとはァ!)
 口惜しげにギリギリと歯ぎしり。
 その姿を、中世で邪推するハクサンは、

(大騒ぎになっているだろうぅねぇ~「人造勇者の誕生」とも知らずぅ♪)

 仄暗い笑いを堪えるのに必死であった。
 しかし表面上は、いつも通りの普通レベルのイケメンスマイルを装い、

「ありがとう、パストちゃん♪」

 術の解除を促し、
「これでみんなが注いだ「天世のチカラ」と、釣り合いが取れたと思うよ♪」
「は、ハイ、なのでぇす」
 小さく頷き、術を解除するパストリスと、全身を、白、銀、黒の混在する「異質な輝き」に、薄く纏われたまま横たわるプルプレア。
 未だ目覚めぬ仲間に、

(((((プルプレア……)))))

 ラディッシュ、ドロプウォート、パストリス、ニプル、ターナップ、無事な目覚めを祈りながらも不安げに見つめていたが、
(さぁ~て、どんな勇者が誕生するかなぁ~♪)
 ハクサンだけが違った感情を内に秘め見つめていた。
すると、

((((((ッ!))))))

 彼女の全身を包む輝きの弱まりに合わせ、髪の色が「茶色」から「水色」へと徐々に変わって行くと同時、肌の色も白さを増して行き、
(頃合いだねぇ~)
 ハクサンは心の中で不敵に笑うと、ほんの微かな小さな声で、

≪我がチカラァ、天世のチカラを以て我は拒む≫

 ラディッシュ達が気付けない程、小さな小さな白き輝きを人差し指のみに宿し、

≪隔絶≫

 人知れず天井に放つと、部屋全体を、違和感を抱かせないほど薄く、白き輝きで覆い、
(彼女の新なる「チカラの紋(※個人を特定出来る指紋のような物)」を、天世に覚えられたくないからねぇ♪)
 天世の探知から隠した。
 自分たちが「今更そのような空間に置かれた」など、知る由も無いラディッシュ達。
 容姿が次第に変わって行く彼女を、不安を以て見守る中、

「う……うぅ……」

 ゆっくり眼を開け始めるプルプレア。
 ラディッシュ達が漏らした安堵の息に、人の気配を感じ、
「ここは……」
 呟くように尋ねると、
 
『プレアさぁん! 僕が誰だか分かるぅ!?』

『ワタクシが誰だか分かりましてですの!?』

『ウチが誰か分かるかぁい!?』

『ボクのこと分かるでぇすぅ!?』

『俺の事が分かるかぁ!?』

 矢継ぎ早、焦り寄る五つの顔に目覚めたばかりの彼女は、

『近い近い! 顔が近い!! 何ごとだぁ!!!?』

 ベッドの上で、困惑顔で後退り。
 記憶があるのを窺わせる物言いに、ラディッシュ達はホッと胸を撫で下ろしたが、
(クラリア……)
 彼女は意識を失う直前の光景を、フラッシュバックのように思い出し、

『クラリアは無事なのかァ! まさか既に処刑された何て事は無いよなッ! ラディ! ドロプッ! パス、』
「おっ、おぉ落ち着いてプレアさぁん! 大丈夫! 大丈夫だからぁ!」

 ラディッシュは、取り乱す彼女の気迫に気圧されながらも、一先ずの落ち着きを促し、今に至るまでの経緯を一つ一つ丁寧に話して聞かせ、
「そうか……自分が意識を失っていた間に、そんな事が……」
 視線を落とすプルプレア。
 幼馴染みの「退行」にショックを隠し切れない中、彼女の眼の端に、

(ん?)

 水色の物体が。
(……毛???)
 理解が追い付かない様子で、自身の頭をワサワサ触り始め、

(((((何て説明しよう……)))))

 説明に惑う、困惑笑いのラディッシュ達。
 自分たちの術が原因で容姿が変質、全くの別人の姿と化してしまった事実など、何と伝えれば良いのか思い悩んでいると、ハクサンが何の躊躇いもなく「彼女が驚く姿」を想像して、むしろ楽し気に、

『これがプレアちゃんの「今の容姿」だよ♪』

「「「「「あ!」」」」」

 ギョッとする五人を尻目に手鏡を手渡し、
(容姿???)
 全く意味が分からない、プルプレア。
 戸惑いながらも受け取った彼女は、そこに映った自身の姿を見るなり、
「・・・・・・」
 しばしの沈黙の後、

『なんじゃコリャアァァァァアァ!』

 驚愕の一声を上げた。
 変貌した、髪の色、瞳の色や肌の色、そして顔立ちまでもに。
「こっ、これがぁ……今のぉ……ジィブゥン?!」
 意識を失って目覚めたら「別人だった」など、驚きが易々と収まる筈も無く、
「…………」
 鏡の中の新たな自身の姿を凝視。
 ラディッシュ達は責任を感じて彼女の一挙手一投足を窺ったが、当の本人は驚くだけでなく、

(ちょ……ちょっと(※物凄く)可愛くなったかもぉ♪)

 密かにほくそ笑んでもいた。
 すると彼女の「密やかな喜び」を知ってか知らずかハクサンが、
「まぁ、容姿も変わって丁度良かったんじゃない?」
「?」
 ヘラヘラと笑いながら、
「どの道、この国には「居られない身」なんだし♪」
「!」
 ハッと現実に立ち返るプルプレア。
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