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第三章

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 別室のベッドの上に仰向けで寝かされるプルプレア――

 今にも起き出して来そうな自然な表情に「肩を少し揺さ振れば目覚めるのでは」と思えなくも無いが、その様な筈もなく、緊張した面持ちで「麗しき眠り姫」を囲むラディッシュ、ドロプウォート、パストリス、ニプル、ターナップ。
 彼女の無事な目覚めを祈らずに居られない中、ハクサンが五人の下に歩み寄り、

「今からみんな(五人)には、彼女にチカラを注ぎ込んでもらうけど……」

 ラディッシュを見据え、
(?!)
 怯え交じりの驚き顔に、笑顔で以て、
「マズは「ラディが」チカラを注いでくれるかなぁ?」
「えぇ!? 僕がぁ?!」
「そぅそぅ。彼女が新たに持つチカラの「核」にしたいからぁ♪」

 事は重大。

 彼女の「新たなる人生」を左右する重責に、

「ぼっ、僕なんかで良いのぉ!? むしろ(序列)一位のハクさんの方が、」

 変わらぬ謙虚さ、と言うより「逃げ腰」と「卑屈さ」で辞退しようとすると、
「何を言ってるんだよぉラディ~キミも百人の天世人だしょ~?」
 ハクサンはケラケラと、
「今は「(仮)」だけどぉ♪」
 冗談交じりに笑って見せたが、その心の内では、
(ぼくぉチカラは新しい物で、元老院から「どんな制約」を仕込まれているか分かった物じゃないからね……)
「ん? ハクさぁん、何か言った???」
「なぁんでもないさぁ~、なんくるないさぁ~」
(((((?)))))
 中世人にはよく分からない冗談で話をはぐらかすと、

「あぁ、それと、この部屋にはぼくぁしか居ないけど、天世から見られない様に、術を施したからぁ」

(((((え?!)))))

 戸惑いを覚える五人。
 彼の口振りは「天世に知られると都合が悪い」と聞こえたから。

「ちょ、ちょっとハクさぁん!」

 青い顔するラディッシュは、
「もしかして、これってぇ天世の人に知られるとマズイ行為なのぉ?!」
 するとハクサンはヤレヤレ笑いで、

「元老院のジィ様たちがウルサイんだよねぇ~「死者を蘇らせるような行為だ」とか、なんとか言っちゃってねぇ~治療行為と変らないって言うのにぃ。グチグチ文句言う顔が目に浮かぶようぉ~」

「「「「「…………」」」」」

 思わず押し黙る五人。
 天世の上層部を敵に回す行為と知らされ、事の重大さを改めて認識し、躊躇いを覚えると、
「ん?」
 彼はあっけらかんと、

「なら止めるかぁい?」
(((((ッ!?)))))

 眼の色が変わる五人の中、

『止めないよォ!』

 真っ先に声を上げたのは、ヘタレ勇者のラディッシュ。
 彼に続けとばかり、

「当然ですわぁ! そもそも彼女は死者ではありませんわァ!」
「ウチらは「救える仲間の命」を見捨てたりしねぇサァ!」
「でぇすでぇすゥ!」
「問われるまでもねぇ話だァ!」

 ドロプウォート達も声を上げ、
「それは良かった♪」
 ハクサンはニコリ。
 五人の決意を試したニオイを含ませ、
「だからねぇ……」
 パストリスを見つめ、

「パストちゃんも、容赦なくチカラを注いでね」
(((((ッ!?)))))

 それは暗に「地世のチカラを注ぎ込め」との意であり、何故にハクサンが「彼女の正体を知っているのか」と疑問に思うより先、

『ボクもぉ?!』

 パストリスのみならず、驚くラディッシュ達。
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