ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第三章

3-28

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 穏やかな時間は瞬く間に過ぎ去り――

 やがて陽が傾き始めたころ、皆がベースキャンプに戻って来た。
 しかし、

「ハクさん……」

 そこに唯一、彼の姿だけが戻らなかった。

 一晩待ってはみたものの彼は戻らず、やむを得ず待った二晩目の次の朝、

『探しに行こうよ!』

 仲間たちに持ち掛けるラディッシュであったが、ドロプウォートは静かに首を横に振り、
「手を拱いていましたら、ラディの体に異変が起き始めてしまいましてですわぁ」
「それは……」
 返す言葉が無かった。

 彼女の懸念は、正しかったから。

「…………」

 惑うラディッシュに仲間たちは、
「アイツ(ハクサン)が姿を消すのは毎度っスからねぇ」
「気にはなるでぇすけどぉ周りの汚染獣の気配に変わりないので、大丈夫と思うでぇすぅ」
「それにアレ(ハクサン)が、そうそう簡単にくたばる訳がねぇさぁ」
「付き合いの短い自分は「彼の人物の人となり」について、正直に、悪し様には言う事は出来ないが、想定を上回る事態が連続して起きている以上、足踏みしている場合で無いのは確かだと思う」
 得られなかった賛同に、

(ハクさん、えらい言われようなんだけど……)

 心の中で苦笑しながらも、
(でもコレってある意味で「放置してても大丈夫」って、信用されてる事の裏返し?)
 とも思うラディッシュ。
とは言え仲間達からの異論は的を射ていて、もっともで、後ろ髪ひかれる思いはありつつ、

「うん……分かった」

 ベースキャンプを張った地を後にした。



 その日の夕刻――

 食事の時間を迎えるラディッシュ達。
 ボケ役のハクサン不在により、いつもより幾分静かに感じる食事をしていると、プルプレアがおもむろに、
「なぁラディ、その……あと三日ほどで城下に入る距離なんだが……」
 窺う様に、少々言い辛そうに、
「その……消耗品の減り具合はどうだ? 途中の村に立ち寄らなくとも……大丈夫そうか?」
 それは彼女が、今日まで起きた出来事を顧みて、自分たちが立ち寄る事で掛けるであろう「村への迷惑(襲撃)の可能性」を危惧しての問い掛けであったのだが、

(!)

 瞬時に意図を察したラディッシュは、あえて気付かぬ冗談交じりで、
「大丈夫だよ。一人減ったしね♪」
「そぉ、そうか? それは良かった……」
 安堵の表情を見せた。
 するとドロプウォートが、彼女の懸念を察しつつ、
「近くに村がありますの?」
 プルプレアは笑顔で短く頷き、
「村と言うより、町に等しい規模だな。城に大分近づいたから」
 人口の増加を示唆しながら、
「村にはあまり近づかない様、迂回するつもりでいる。多少大回りになってしまうが……」
 余分な時間が掛かってしまう事実を仲間たちに伝えると、ターナップとパストリスの質問が、

『『それぁ・あのぉ』』

 期せずして被り、

「「!」」

 お互いにハッとし合い、
「すっ、済まねぇっス、お嬢ぉ」
「う、うぅうん。ボクこそぉ」
 互いに意識し合った赤い顔して、
「おっ、お嬢から先にぃ!」
「うぅうん! タープさぁんからぁ!」
 見ている方がムズ痒くなるやり取りで譲り合ったが、未だ「自身の本心」に辿り着けていないターナップ。原因不明の動揺(※本人的には)から己の冷静さを保つ為、彼女と距離を置こうとする姿に、

((((素直に認めればイイのにぃ))))

 苦笑を小さく浮かべるラディッシュ、ドロプウォ―ト、ニプル、プルプレアであった。
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