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第三章
3-18
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現状が把握しきれていない中ではあったが、鐘の音は長考を許さず、ドロプウォートが急き立てられるように、
「村を中心に散開して行きますわよォ!」
声を上げると、引き締まった表情のラディッシュ達が頷き、
『じっ、自分もぉ!』
プルプレアも声を上げたが、ドロプウォートがすかさず、
「貴方はハクサンと、村長や、村人たちの避難誘導に当たって下さいですわ!」
(!)
それは「騎士の身」でありながらの、戦力外通告。
しかし、汚染獣の接近を察知する事さえ出来なかったのが「今のプルプレアの実力」であり、その自覚があるだけに、悔しさは抱きつつ、
「分かった! みんな、よろしく頼む! この国の民を一人でも多く!」
村人の全てを救えないであろう事は、理解していた。
いかに彼ら、彼女らが強者揃いであろうとも、全方位から襲い掛かって来る汚染獣の群れを、たった五人で防ぎ切るなど数的に不可能であったから。
プルプレアの言わんとする事を悟るラディッシュ。
悲し気に、
「ごめんなさい……」
小さく頭を下げると決意を以て、
「行こう!」
仲間たちと宿から飛び出した、その同時刻、
『誰がその様な指示を出したのですゥ!』
豪奢な椅子の肘掛けを殴るは、アルブル国宰相アルブリソ。
軽鎧を纏った兵士たちを前に猛り、怒り、神経質そうな顔立ちの眉間に深いしわを寄せ、
「今はまだ「その時ではない」と言うのにィ! まかり私の素性が知れたら宣戦布告に等しい行為ではないですかァ!」
カルニヴァ国内に放った工作員の暴走を耳に血相を変えていたのであった。
報告に登城した仲介役の兵士たちは彼の怒りに慄きながら、
「おっ、畏れながら、それが不明なのでありますゥ!」
「指示役が行方不明なのありますゥ!」
アルブリソは歯ぎしりし、
「クッ!」
(何故にこの世は、こうも私以外は「使えない輩」ばかりなのです!)
怒りをぶちまけるように、
「人形(※ビフィーダのこと)と、私達の関わりを示す、証拠、書類、痕跡、その他全てを直ちに消しなさい! 後ろ盾も金輪際中止としまぁす!」
「しっ、しかしそれでは今まで投資した分が、」
兵士の一人が再考を上申しようとした途端、
『権力を未だ掌握しきれず足元が固まっていない今の状態で、カルニヴァと事を構えたいのですかァ!』
立ち上がっての叱責に、
「「「「「「!」」」」」」
ハッと気付かされた兵たちは、
「「「「「「たっ、直ちにぃ!」」」」」」
一斉に部屋から飛び出して行き、
「チィ!」
アルブリソは苛立ち露わに舌打ちすると、豪奢な自席にドカリと座り直し、
(この様な無様な失態ィ! あの御方に、何と申し開きをすれば良いのかァ!)
怒りの中に焦りを交え、
(そもそも「例の兵器」が完成さえしていればカルニヴァなど……いや、アレはあくまで切り札か……)
浅はかに思えた考えを、振り払うが如くに首を振り、
(やはりカデュフィーユ、コニフェール、フィリュースの主要三騎士団の懐柔を急がなければなりませぇん!)
深い闇を感じさせる両眼を見開いた、その頃、村の外を目指し、放射線状に分散して走るラディッシュ達。
「イチ」対「無数」を覚悟する緊張のさ中、ターナップの胸中をよぎるは雑念。
それは、
≪今なら、俺が目にした「お嬢の真実」を見極められるかも知れない≫
しかし、
(…………)
命を救った親子の笑顔を、昼間目にした子供たちの笑顔を思い返し、
(この一大事にぃ俺ぁ何を考えてやがんだァ!)
自らを厳しく叱責し、
「(俺は)とんだ大馬鹿ヤローだァ!」
自身の両頬を両手で引っ叩いて猛省すると、
「坊主の俺が煩悩まみれでぇ間抜けに足下すくわれた日にぁ、いったいどれだけの村人が犠牲になると思ってやがんだァァアァ!」
走る足を速め「心に巣くう雑念」と戦っていた頃、村の外を目指して走っていたラディッシュも、
(うるさい! うるさァい!! ウルサァアァァアイッ!!!)
内なる声? と戦っていた。
日ごと強まる仄暗い存在は、まるで彼を深淵へといざなうように、
≪理不尽……不条理……怒れ……憎め……何もしない天世を蔑め……≫
(天世なんてぇ関係なァアァいィ!)
走りながら首を激しく横に振り、
(人は自然災害でも命を落とすし理不尽なんて何処にでも転がってる! 僕は単純に「あの親子の様な笑顔」を守りたいダケなんだァ!)
心に言い放つ彼の目に飛び込む、迫り来る汚染獣の群れ。
ラディッシュは決意を新たに、
『僕はみんなと、村の人を一人でも多く守って見せる!』
恐れを振り払い、
≪偽装の天法ォ「空蝉(うつせみ)」ィイ!!!≫
自身の身を、本来の「白き輝き」ではなく「白銀の輝き」で包み、汚染獣の群れの中へ飛び込んで行った。
百人の天世人の候補である彼が、中世のモメ事に介入するのを快く思わない天世が「横槍を入れる可能性がある」のを、ハクサンに聞かされていたから。
戦闘力は多少下がるものの、汚染獣を相手にするには十分であり、天世に所在を悟られず戦う為の方策でもあった。
「村を中心に散開して行きますわよォ!」
声を上げると、引き締まった表情のラディッシュ達が頷き、
『じっ、自分もぉ!』
プルプレアも声を上げたが、ドロプウォートがすかさず、
「貴方はハクサンと、村長や、村人たちの避難誘導に当たって下さいですわ!」
(!)
それは「騎士の身」でありながらの、戦力外通告。
しかし、汚染獣の接近を察知する事さえ出来なかったのが「今のプルプレアの実力」であり、その自覚があるだけに、悔しさは抱きつつ、
「分かった! みんな、よろしく頼む! この国の民を一人でも多く!」
村人の全てを救えないであろう事は、理解していた。
いかに彼ら、彼女らが強者揃いであろうとも、全方位から襲い掛かって来る汚染獣の群れを、たった五人で防ぎ切るなど数的に不可能であったから。
プルプレアの言わんとする事を悟るラディッシュ。
悲し気に、
「ごめんなさい……」
小さく頭を下げると決意を以て、
「行こう!」
仲間たちと宿から飛び出した、その同時刻、
『誰がその様な指示を出したのですゥ!』
豪奢な椅子の肘掛けを殴るは、アルブル国宰相アルブリソ。
軽鎧を纏った兵士たちを前に猛り、怒り、神経質そうな顔立ちの眉間に深いしわを寄せ、
「今はまだ「その時ではない」と言うのにィ! まかり私の素性が知れたら宣戦布告に等しい行為ではないですかァ!」
カルニヴァ国内に放った工作員の暴走を耳に血相を変えていたのであった。
報告に登城した仲介役の兵士たちは彼の怒りに慄きながら、
「おっ、畏れながら、それが不明なのでありますゥ!」
「指示役が行方不明なのありますゥ!」
アルブリソは歯ぎしりし、
「クッ!」
(何故にこの世は、こうも私以外は「使えない輩」ばかりなのです!)
怒りをぶちまけるように、
「人形(※ビフィーダのこと)と、私達の関わりを示す、証拠、書類、痕跡、その他全てを直ちに消しなさい! 後ろ盾も金輪際中止としまぁす!」
「しっ、しかしそれでは今まで投資した分が、」
兵士の一人が再考を上申しようとした途端、
『権力を未だ掌握しきれず足元が固まっていない今の状態で、カルニヴァと事を構えたいのですかァ!』
立ち上がっての叱責に、
「「「「「「!」」」」」」
ハッと気付かされた兵たちは、
「「「「「「たっ、直ちにぃ!」」」」」」
一斉に部屋から飛び出して行き、
「チィ!」
アルブリソは苛立ち露わに舌打ちすると、豪奢な自席にドカリと座り直し、
(この様な無様な失態ィ! あの御方に、何と申し開きをすれば良いのかァ!)
怒りの中に焦りを交え、
(そもそも「例の兵器」が完成さえしていればカルニヴァなど……いや、アレはあくまで切り札か……)
浅はかに思えた考えを、振り払うが如くに首を振り、
(やはりカデュフィーユ、コニフェール、フィリュースの主要三騎士団の懐柔を急がなければなりませぇん!)
深い闇を感じさせる両眼を見開いた、その頃、村の外を目指し、放射線状に分散して走るラディッシュ達。
「イチ」対「無数」を覚悟する緊張のさ中、ターナップの胸中をよぎるは雑念。
それは、
≪今なら、俺が目にした「お嬢の真実」を見極められるかも知れない≫
しかし、
(…………)
命を救った親子の笑顔を、昼間目にした子供たちの笑顔を思い返し、
(この一大事にぃ俺ぁ何を考えてやがんだァ!)
自らを厳しく叱責し、
「(俺は)とんだ大馬鹿ヤローだァ!」
自身の両頬を両手で引っ叩いて猛省すると、
「坊主の俺が煩悩まみれでぇ間抜けに足下すくわれた日にぁ、いったいどれだけの村人が犠牲になると思ってやがんだァァアァ!」
走る足を速め「心に巣くう雑念」と戦っていた頃、村の外を目指して走っていたラディッシュも、
(うるさい! うるさァい!! ウルサァアァァアイッ!!!)
内なる声? と戦っていた。
日ごと強まる仄暗い存在は、まるで彼を深淵へといざなうように、
≪理不尽……不条理……怒れ……憎め……何もしない天世を蔑め……≫
(天世なんてぇ関係なァアァいィ!)
走りながら首を激しく横に振り、
(人は自然災害でも命を落とすし理不尽なんて何処にでも転がってる! 僕は単純に「あの親子の様な笑顔」を守りたいダケなんだァ!)
心に言い放つ彼の目に飛び込む、迫り来る汚染獣の群れ。
ラディッシュは決意を新たに、
『僕はみんなと、村の人を一人でも多く守って見せる!』
恐れを振り払い、
≪偽装の天法ォ「空蝉(うつせみ)」ィイ!!!≫
自身の身を、本来の「白き輝き」ではなく「白銀の輝き」で包み、汚染獣の群れの中へ飛び込んで行った。
百人の天世人の候補である彼が、中世のモメ事に介入するのを快く思わない天世が「横槍を入れる可能性がある」のを、ハクサンに聞かされていたから。
戦闘力は多少下がるものの、汚染獣を相手にするには十分であり、天世に所在を悟られず戦う為の方策でもあった。
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