ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第二章

2-54

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 話は現在に戻り――

『以上が、聴取で得られた情報の全てです』

 凛とした表情で手元のファイルを閉じるリブロン。
 どよめく騎士たちを見回し、
「にわかに信じ難い話ではありますが、エルブ国で起きた事象と酷似している点で、信憑性に問題は無いかと思います」
 確認を取る意を以てラディッシュ達をチラ見。
 彼らが「間違いないこと」を目で訴えると、小さく頷き返し、改めて騎士たちに向け、

「謎のローブの男に関しては鋭意捜査中であり、各隊は事態が落ち着くまで警戒を厳に!」

「「「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」」」

 騎士たちは一糸乱れぬ承知を返し、その姿にリブロンは、
(動揺は無いようですね……)
 小さく頷くと、玉座のフルールに、
「では陛下、例の件を皆に話しても構いませんでしょうか?」
「構わぬぞよぉ」
 フルールは妖艶な笑みで頷き返したが、跪くドロプウォートに視線を落とし、
「エルブの四大やぁ」
「は!」
「ほんに伝えても良いのかぇ? 事は国防に関する、」
 何かしらの確認を促そうとしたが、彼女は毅然と、

「構いませんですわ!」

 惑いすら感じさせず、
「地世との戦いは、恐らく激しさを増しますわ。でしたら天法研究を旨とする貴国に伝え、更なる昇華を願うは「中世の民の一人」として当然の理ですわ!」
 きっぱり断言した上で、
「それに……」
「なんじゃ?」
 妖艶に小首を傾げるフルールに、ドロプウォートはほんのり笑みを浮かべ、

「正直に申しまして、私達は「この国の気質」と言うモノが気に入りましてなのですわ♪ ですわよねぇ、ラディ?」

 問われたラディッシュも、同意を示す屈託ない笑顔で頷き、

「それに、お世話になりっ放しだしね♪」

 パストリスとターナップ、そしてニプルも笑みを見せると、フルールをはじめとする屈強な騎士たちまでもが、自国を称された事に笑みを見せ、するとリブロンが緩んだ空気を諫めるように短く咳払い。
 変わらぬ凛とした口調で、

「では確認が取れましたので、各員、心して聞く様に!」

 自制を促す前置きをした上で、
「我らがフルール国は、先にエルブの四大殿が言われていました通り、天世様より天法開発の任を賜り、研鑽に務めているのは言わずもがな。その中でも困窮を極めていたのは天法、天技の発動時間の短縮です。周知の通り、天法を扱うには天世様の恩恵を受け(借り)ねばならず、受けるに前小節は不可欠であり、それに加え事象を発現させる為の後小節」
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
 中世の民ならば「子供でも知っている話」を語る彼女の言葉を、黙って聞く騎士たち。
 彼女がそんな話を「無駄にする筈が無い」と、信頼しているから。

 リブロンは、その様な彼女たちの真剣な眼差しを一身に受けながら、
「しかし、此度ご活躍いただいた勇者様より、常識を覆す有益な情報がもたらされました!」
((((((((((!))))))))))
 固唾を呑んで聞き入る彼女たちを前に、彼女は話を出し惜しみする事無く、

「それは「名付け」による短縮です!」

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 一瞬の間の後、

((((((((((え?))))))))))

 口にせずとも、平静を装うその顔が、彼女たちの疑問を表していた。
 しかし「当然の反応」、「予想の範疇」と思うリブロン。
 苦言を呈すること無く、

「皆が疑問に思うのは「無理なき事」と思います」

 前置きし、平静に理解を示したが、その一方で彼女は、長きに渡り停滞していた天法開発の新たな時代の幕開けの予感に、
「我々はチカラを借りる事ばかり考え失念していたのです!」
 口調は次第に熱を帯び、
 
「言葉は「言霊」なのでぇす! 天法や天技に便宜上で呼称を付けている物もありますがソレではダメなのでぇす!! 魂の籠もった『名前』でなければぁ!!!」

 拳を握り固め、

((((((((((…………?))))))))))

 ピンと来ない顔の騎士たち。
 彼女の話は精神論であり、非論理的であり、論理的思考のリブロンらしからぬ物言いにも戸惑いを覚えたが、それは興奮任せに「言ってしまった本人」が一番良く分かっていて、羞恥でほんのり赤く色づいた顔して、握り固めてしまった拳を使い、
「こ、コホン」
 誤魔化しの咳払いを一つ。

 努めて平静に、いつも通りの事務的口調を極力装い、
「名前は「天世様に対する感謝」に加え、発動を願う「天法や天技」との結びつきが容易に可能な、かつ最も効果を発する言葉でなくてはなりません。つまりは「便宜上の呼称」ではなく、「意味を持った名前」でなければならないのです」
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
 何かしらの要点を掴み始めた表情を滲ませる騎士たちに、
「難題ではありますが、これが実現した暁には、天法、天技の発動時間は大幅に短縮され、戦い方は飛躍的に進化するでしょう」
 しかし、

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 にわかに信じ難いと言った表情を滲ませる騎士たち。
 それもその筈、長きに渡り天法研究に勤しんで来たフルール国でさえ、「前小節」から「後小節」そして「天法、天技発動」が常識の流れとされて来ただけに。
(当然その様な反応になりますよね……)
 リブロンも同胞の「秘めたる疑念」を重々理解した上で、
「これは勇者ラディッシュ様が、先の牛人(ミノタウロスの)との戦いの中で発見、実行された「事実」であり「仮定では無い」のです!」
((((((((((!))))))))))
 驚きを滲ませる騎士たち。
 騎士が感情変化を易々と露呈するは「半人前」と失笑を買う風土が故に、先程より表面上は平然を貫いていたが、

「しかもこれは中世の民であるエルブの四大殿、そして我が国の民であるニプルウォートでも実行が可能だったのです!」

「「「「「「「「「「なッ!?」」」」」」」」」」

 この追い打ちには、隠した「驚きの感情」を抑え込む事が出来なかった。
 彼女が放った言葉は「異世界勇者」でも、「誓約者」でもない誰もが、「超人的な戦い方」が可能になるのを意味していたから。

 騎士として、更なる高みを目指せる誉れに浮足立つ中、

『リブロン殿ォ!』

 騎士の一人が手を挙げ、
「その……私は決して「自分たちを卑下」して言うつもりは無いのですが……その……」
 言葉尻を濁すと、
((((((((((…………))))))))))
 自身の新たな可能性に浮足立っていた騎士たちも現実を思い出し視線を落としたが、リブロンは「私見をハッキリ示さぬ彼女」を叱責する事なく、
「言いたい事は分かります」
 小さく頷き、
「確かに二人は「同じ中世の民」でありながら、その能力は特異に余りあり、比較にならないと感じる者も少なくないでしょう。それ故に実現困難とも」
((((((((((…………))))))))))

「ですが!」

 リブロンは目の端をギラリと光らせ、座する騎士たち、そしてこの場にいない国中の騎士、兵士たちの心中を慮った上で、

「この国、フルールは「うつむく暇があったら精進せよ」が家訓の様な国なのではありませんか?」

((((((((((!))))))))))

 ハッとする騎士たち。
 彼女たちの気付きを、すかさず逃さず、

「困難ならば困難なほど『燃える』と言うモノではありませんか!」

((((((((((ッ!!!!))))))))))

 火の点いた眼に変わる騎士たち。
 彼女たちの気質をよく理解した煽りであったと言うべきか、流石はフルール国最高位の参謀と賞賛すべきか。

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