ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

文字の大きさ
169 / 894
第二章

2-52

しおりを挟む
 数日後――

 謁見の間に集められたラディッシュ達と、主要な騎士たち。
 彼ら、彼女らを前に、女王フルールの傍らに立つ毅然とした表情のリブロンは、
「先だって発生した「牛人騒ぎ」の件、落ち着きを取り戻した「関係者の女性」から詳細を聴取出来ましたので報告します」
 凛たる佇まいを見せたが、そんな彼女の胸元には、チャームに黒猫をあしらったペンダントが揺れていた。
 彼女の「秘めた決意(自ら身を引く)」に居た堪れなくなったニプルが、黒猫好きのリブロンの為に、訳が分かっていないラディッシュに無理矢理買いに行かせたモノである。
 当然のことながら「無理矢理買いに行かせた」のくだりは、リブロンに秘密であるが。
 贈り物の話は一先ず置き、彼女の話は事件発生時の少し前にさかのぼる。


 窓から穏やかな陽が差し込むとある一室――

 整然と並べられた家具の上には塵一つなく、部屋の中央に置かれた小ぢんまりとした丸テーブルの上には、愛らしい花が飾られた一輪挿しが。
 慎ましやかな生活の中にも、確かな幸せが感じる部屋に、

『もぅあの人達と関わるのは止めてぇ!』

 突如響く、女性の叫び。
 泣訴の声に、若い男は眉間に深いしわを刻んで、

「俺はこの国を変えたいんだよォ!」

 例の団体の制服である「学ランの様な上着」を羽織りながら言い返すと、
「あの人達が町で何て言われてるか知ってるでしょ!」
「!」
「口先で文句を言っているだけじゃ何も変わらないのよ!」
「クッ……」
 今日までの彼らの活動を見ていれば彼女の言う事は的を射ており、痛い所を衝かれた男は返す言葉に詰まったが、

『確かに「今日までは」なァ!』
「え? それ、どう言う意味なの!?」

 不穏を感じ、慄く彼女を前にして逆上気味に、

「俺達は今日この日ィ! この町で革命を起こすのさぁ! 今まで俺たちを散々嘲笑った町の連中に目に物見せてやる!」
(か、革命ぇ?!)
「そんな事は止めてスティンク!」
「俺はぁ「この国」にも、「この国の体制」にも、もぅウンザリなぁんだよォ!」
 泣きすがる彼女を振り払い、

『俺たちの「本気ってヤツ」を見せてやるゥ!』

 捨て台詞を吐くと部屋から飛び出し、「革命」と言う不吉なワードを残された女性も、
「待ってぇ!」
 慌てて部屋から駆け出し後を追った。

 町の雑踏の中に、今にも駆け消えそうになる彼の背を、
(待ってぇ!)
 足がもつれそうになりながらも懸命に追う。
 しかし若い成人男性の駆け足に、アスリートでもない女性の足で追いつくなど容易ではなく、彼女は走りながら胸を押さえ、
(く、苦しい……)
 息を切らせ、それでも走り続けた。
 彼との小さな幸せを失いたくなかったから。
(!)
 脇道に曲がった背を追い、しばし遅れて曲がった頃には、

(もっ、もぅ……ダメ……)

 流石に体力が限界を迎え、壁に手をつき足を止め、
「ハァハァハァハァ」
 激しく息を切らせるさ中、

『スミマセン遅れました!』

 数メートル先の物陰から、彼の声が。
(!)
 女性は未だ苦しい胸を押さえながら、
(い、行かないで……)
 壁を杖代わりに、疲労で重くなった足を引きずるように歩みを進め、「やっと追い着けた」と思ったのも束の間、

『我らが革命の狼煙を上げる「祝い日」に、些末な文句など野暮と言うモノォ!』

(っ!?)

 幾度となく耳にした「あの暑苦しい声」が。

 例の団体の「団長の声」に女性は歩みを止め、一先ず呼吸を整えた。
 ひと気の無い場所で存在に気付かれては、例えその場に彼が居合わせても、何をされるか分からなかったから。
 そして物陰から、彼らに気付かれない様にそっと様子を窺い、
(あれは何?)
 何かに目を留め、訝しんだ。
 それは「見た者を不快にさせる笑顔」の団長の手に握られた、黒いガラス球。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】海外在住だったので、異世界転移なんてなんともありません

ソニエッタ
ファンタジー
言葉が通じない? それ、日常でした。 文化が違う? 慣れてます。 命の危機? まあ、それはちょっと驚きましたけど。 NGO調整員として、砂漠の難民キャンプから、宗教対立がくすぶる交渉の現場まで――。 いろんな修羅場をくぐってきた私が、今度は魔族の村に“神託の者”として召喚されました。 スーツケース一つで、どこにでも行ける体質なんです。 今回の目的地が、たまたま魔王のいる世界だっただけ。 「聖剣? 魔法? それよりまず、水と食糧と、宗教的禁忌の確認ですね」 ちょっとズレてて、でもやたらと現場慣れしてる。 そんな“救世主”、エミリの異世界ロジカル生活、はじまります。

【完結】能力が無くても聖女ですか?

天冨 七緒
恋愛
孤児院で育ったケイトリーン。 十二歳になった時特殊な能力が開花し、体調を崩していた王妃を治療する事に… 無事に王妃を完治させ、聖女と呼ばれるようになっていたが王妃の治癒と引き換えに能力を使い果たしてしまった。能力を失ったにも関わらず国王はケイトリーンを王子の婚約者に決定した。 周囲は国王の命令だと我慢する日々。 だが国王が崩御したことで、王子は周囲の「能力の無くなった聖女との婚約を今すぐにでも解消すべき」と押され婚約を解消に… 行く宛もないが婚約解消されたのでケイトリーンは王宮を去る事に…門を抜け歩いて城を後にすると突然足元に魔方陣が現れ光に包まれる… 「おぉー聖女様ぁ」 眩い光が落ち着くと歓声と共に周囲に沢山の人に迎えられていた。ケイトリーンは見知らぬ国の聖女として召喚されてしまっていた… タイトル変更しました 召喚されましたが聖女様ではありません…私は聖女様の世話係です

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

天才魔導医の弟子~転生ナースの戦場カルテ~

けろ
ファンタジー
【完結済み】 仕事に生きたベテランナース、異世界で10歳の少女に!? 過労で倒れた先に待っていたのは、魔法と剣、そして規格外の医療が交差する世界だった――。 救急救命の現場で十数年。ベテラン看護師の天木弓束(あまき ゆづか)は、人手不足と激務に心身をすり減らす毎日を送っていた。仕事に全てを捧げるあまり、プライベートは二の次。周囲からの期待もプレッシャーに感じながら、それでも人の命を救うことだけを使命としていた。 しかし、ある日、謎の少女を救えなかったショックで意識を失い、目覚めた場所は……中世ヨーロッパのような異世界の路地裏!? しかも、姿は10歳の少女に若返っていた。 記憶も曖昧なまま、絶望の淵に立たされた弓束。しかし、彼女が唯一失っていなかったもの――それは、現代日本で培った高度な医療知識と技術だった。 偶然出会った獣人冒険者の重度の骨折を、その知識で的確に応急処置したことで、弓束の運命は大きく動き出す。 彼女の異質な才能を見抜いたのは、誰もがその実力を認めながらも距離を置く、孤高の天才魔導医ギルベルトだった。 「お前、弟子になれ。俺の研究の、良い材料になりそうだ」 強引な天才に拾われた弓束は、魔法が存在するこの世界の「医療」が、自分の知るものとは全く違うことに驚愕する。 「菌?感染症?何の話だ?」 滅菌の概念すらない遅れた世界で、弓束の現代知識はまさにチート級! しかし、そんな彼女の常識をさらに覆すのが、師ギルベルトの存在だった。彼が操る、生命の根幹『魔力回路』に干渉する神業のような治療魔法。その理論は、弓束が知る医学の歴史を遥かに超越していた。 規格外の弟子と、人外の師匠。 二人の出会いは、やがて異世界の医療を根底から覆し、多くの命を救う奇跡の始まりとなる。 これは、神のいない手術室で命と向き合い続けた一人の看護師が、新たな世界で自らの知識と魔法を武器に、再び「救う」ことの意味を見つけていく物語。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました

オオノギ
ファンタジー
【虐殺者《スレイヤー》】の汚名を着せられた王国戦士エリクと、 【才姫《プリンセス》】と帝国内で謳われる公爵令嬢アリア。 互いに理由は違いながらも国から追われた先で出会い、 戦士エリクはアリアの護衛として雇われる事となった。 そして安寧の地を求めて二人で旅を繰り広げる。 暴走気味の前向き美少女アリアに振り回される戦士エリクと、 不器用で愚直なエリクに呆れながらも付き合う元公爵令嬢アリア。 凸凹コンビが織り成し紡ぐ異世界を巡るファンタジー作品です。

処理中です...