160 / 894
第二章
2-43
しおりを挟む
花咲き誇るフルール国にも雪が降り始め――
『最後の追い込みでゴザルよォ!』
赤ジャージ姿で頭にねじり鉢巻き、■眼鏡を掛けたBL作家オトコエシ先生バージョンのフルールが発破をかけ、
「「「「はぁ~~~いぃ……」」」」
お疲れ気味の声を返したのは、
『ミナさぁん、返事が小さいでゴジャルよぉ!』
アシスタント筆頭の証である「青ジャージ」を纏う「元気いっぱいパストリス」と相反する、緑ジャージ姿のラディッシュ、ドロプウォート、ターナップ、ニプル。
五人は、女帝フルール直々の「天法教育」を受けられる代わりに、同人誌活動の時間が減る彼女のアシスタントを務める事になっていたのであった。
加えてパストリスには喜ばしい事も。
彼女が「妖人」であるのを知るフルールが、事情を未だ知らないターナップとニプルに話を伏せた上で、
≪天法を鍛えれば、より強固な地法を使えるようになる≫
背中を後押し、個別で修業を付けてくれたのである。
同人誌作成活動と天法修行に明け暮れる日々は瞬く間に過ぎ、やがて数週間が経過した頃、
『では皆さま、よろしくお願いします』
謁見の間で、変わらぬ事務的口調で丁重に頭を下げるのはリブロン。
そんな彼女の前には、
「「「「「…………」」」」」
困惑顔を浮かべたラディッシュ達の姿が。
各々複数の段ボールを抱え、
「あ、あのぉ……リブロンさん。朝一に呼び出されて来てみれば……これはいったい?」
戸惑うラディッシュの問いに対し、彼女は毅然と、
「即売会で使う横断幕や旗、文具などです」
(((((?!)))))
「え、えぇと……それは、つまり、僕たちに「売り子をやって来い」とぉ?」
遠回しに「本気で言っているのか」尋ねたが、彼女は寸分ブレる事なく、
「端的に申しまして「そう言う事」です」
言い切った。
その、あまりの堂々たる様に、
(((((…………)))))
ツッコミを忘れる五人。
真っ先に我に返ったラディッシュが「豊富なツッコミどころ」の中から、最も差し障りの無い、無難な一つをチョイスし、
「ぼ、僕たち、城下町に出て良いんですか?」
城から出る事さえ、固く禁じられていたが故に恐る恐る尋ねると、彼女はラディッシュの眼差しに、ほんのり顔を赤くしながらも毅然と、
「最もの懸念材料であった、あの「女たらし」……コホン、失礼。ハクサン様は、」
言葉遣いを、皮肉を込めて言い直し、
「行方をくらましましたし、ラディッシュ様の御業(女性を主に魅了するスキル)も、心が落ち着いている時には発動しないようですので」
「み、みわざ???」
受けた相手の性癖を変えてしまうほどの、ある意味最強(最悪)スキルでありながら、無自覚ゆえのキョトン顔に、
((((((て、天然って怖い……))))))
背筋が冷えるターナップ達。それと同時に、ハクサンに対する新たな怒りも。
町に出られなかった最大の理由は「彼の方にあった」と今更ながらに知り、
『『『『ハクサンめぇ!』』』』
両目に憤怒の炎を宿す、ドロプウォート、パストリス、ターナップ、そしてニプルであった。
そしてラディッシュは、禁じられていた理由の一部が「無自覚なれど自身にもある」と改めて知り、同行する事で掛けてしまう「迷惑可能性」を危惧し、
「あ、あの……」
「何でしょう?」
「リブロンさんは、(監視役として)来てくれないんですか……?」
好意を寄せるイケメン男子が見せる「困惑と不安」が入り混じった視線に、
(はぅ……)
内心で、乙女心をキュンとさせるリブロン。
毅然を見せつつも、先程より顔の赤みを強め、思わず、
「き、気持ちは行きたいのですが……」
本音が漏れ出た途端、慌てて誤魔化しの咳払いを一つし、
「へ、陛下の側近である私が「陛下の下」を離れる訳にはいきませぇん」
平然を装い、
「か、彼女が居れば問題ないでしょう」
チラリとニプルを見るなり、
「分かっているとは思いますが、」
注意を促そうとすると、
「わぁ~てるわぁ~てるさぁ~。手順は耳にタコが出来るほど聞かされたからねぇ」
辟易顔で「もぅ聞きたくない」と言わんばかりに手を振ったが、そんな彼女にリブロンは注意を重ねるが如く、
「この即売会は「中世じゅうの同志」が集まる、言わば「国家の威信をかけた催し」なのです。例の団体の活動が活発化していると言う話も聞きますし、警備は厳にしてありますが、内側からの監視の任も、」
「わぁ~てるってばぁ!」
延々続きそうな小言を強制的に打ち切り、
「では陛下、行って参ります!」
頭を下げた先には、
「…………」
真っ白に燃え尽き、横長玉座にしな垂れかかるフルールの姿が。
即売会に向け全力を出し切り、精も根も尽き果て、そのあまりの「枯れ果てぶり」に、思わず苦笑するラディッシュ達。
五人は、声なく、チカラ無く、手を振るだけのフルールに見送られ城を出ると、ニプルの先導で即売会が行われる城下町に、初めて足を踏み入れた。
正確には二度目であるが、一度目は「ハクサンが原因」で、鉄格子付きの荷馬車に揺られて通過しただけなのでノーカン、ノーカウントである。
『最後の追い込みでゴザルよォ!』
赤ジャージ姿で頭にねじり鉢巻き、■眼鏡を掛けたBL作家オトコエシ先生バージョンのフルールが発破をかけ、
「「「「はぁ~~~いぃ……」」」」
お疲れ気味の声を返したのは、
『ミナさぁん、返事が小さいでゴジャルよぉ!』
アシスタント筆頭の証である「青ジャージ」を纏う「元気いっぱいパストリス」と相反する、緑ジャージ姿のラディッシュ、ドロプウォート、ターナップ、ニプル。
五人は、女帝フルール直々の「天法教育」を受けられる代わりに、同人誌活動の時間が減る彼女のアシスタントを務める事になっていたのであった。
加えてパストリスには喜ばしい事も。
彼女が「妖人」であるのを知るフルールが、事情を未だ知らないターナップとニプルに話を伏せた上で、
≪天法を鍛えれば、より強固な地法を使えるようになる≫
背中を後押し、個別で修業を付けてくれたのである。
同人誌作成活動と天法修行に明け暮れる日々は瞬く間に過ぎ、やがて数週間が経過した頃、
『では皆さま、よろしくお願いします』
謁見の間で、変わらぬ事務的口調で丁重に頭を下げるのはリブロン。
そんな彼女の前には、
「「「「「…………」」」」」
困惑顔を浮かべたラディッシュ達の姿が。
各々複数の段ボールを抱え、
「あ、あのぉ……リブロンさん。朝一に呼び出されて来てみれば……これはいったい?」
戸惑うラディッシュの問いに対し、彼女は毅然と、
「即売会で使う横断幕や旗、文具などです」
(((((?!)))))
「え、えぇと……それは、つまり、僕たちに「売り子をやって来い」とぉ?」
遠回しに「本気で言っているのか」尋ねたが、彼女は寸分ブレる事なく、
「端的に申しまして「そう言う事」です」
言い切った。
その、あまりの堂々たる様に、
(((((…………)))))
ツッコミを忘れる五人。
真っ先に我に返ったラディッシュが「豊富なツッコミどころ」の中から、最も差し障りの無い、無難な一つをチョイスし、
「ぼ、僕たち、城下町に出て良いんですか?」
城から出る事さえ、固く禁じられていたが故に恐る恐る尋ねると、彼女はラディッシュの眼差しに、ほんのり顔を赤くしながらも毅然と、
「最もの懸念材料であった、あの「女たらし」……コホン、失礼。ハクサン様は、」
言葉遣いを、皮肉を込めて言い直し、
「行方をくらましましたし、ラディッシュ様の御業(女性を主に魅了するスキル)も、心が落ち着いている時には発動しないようですので」
「み、みわざ???」
受けた相手の性癖を変えてしまうほどの、ある意味最強(最悪)スキルでありながら、無自覚ゆえのキョトン顔に、
((((((て、天然って怖い……))))))
背筋が冷えるターナップ達。それと同時に、ハクサンに対する新たな怒りも。
町に出られなかった最大の理由は「彼の方にあった」と今更ながらに知り、
『『『『ハクサンめぇ!』』』』
両目に憤怒の炎を宿す、ドロプウォート、パストリス、ターナップ、そしてニプルであった。
そしてラディッシュは、禁じられていた理由の一部が「無自覚なれど自身にもある」と改めて知り、同行する事で掛けてしまう「迷惑可能性」を危惧し、
「あ、あの……」
「何でしょう?」
「リブロンさんは、(監視役として)来てくれないんですか……?」
好意を寄せるイケメン男子が見せる「困惑と不安」が入り混じった視線に、
(はぅ……)
内心で、乙女心をキュンとさせるリブロン。
毅然を見せつつも、先程より顔の赤みを強め、思わず、
「き、気持ちは行きたいのですが……」
本音が漏れ出た途端、慌てて誤魔化しの咳払いを一つし、
「へ、陛下の側近である私が「陛下の下」を離れる訳にはいきませぇん」
平然を装い、
「か、彼女が居れば問題ないでしょう」
チラリとニプルを見るなり、
「分かっているとは思いますが、」
注意を促そうとすると、
「わぁ~てるわぁ~てるさぁ~。手順は耳にタコが出来るほど聞かされたからねぇ」
辟易顔で「もぅ聞きたくない」と言わんばかりに手を振ったが、そんな彼女にリブロンは注意を重ねるが如く、
「この即売会は「中世じゅうの同志」が集まる、言わば「国家の威信をかけた催し」なのです。例の団体の活動が活発化していると言う話も聞きますし、警備は厳にしてありますが、内側からの監視の任も、」
「わぁ~てるってばぁ!」
延々続きそうな小言を強制的に打ち切り、
「では陛下、行って参ります!」
頭を下げた先には、
「…………」
真っ白に燃え尽き、横長玉座にしな垂れかかるフルールの姿が。
即売会に向け全力を出し切り、精も根も尽き果て、そのあまりの「枯れ果てぶり」に、思わず苦笑するラディッシュ達。
五人は、声なく、チカラ無く、手を振るだけのフルールに見送られ城を出ると、ニプルの先導で即売会が行われる城下町に、初めて足を踏み入れた。
正確には二度目であるが、一度目は「ハクサンが原因」で、鉄格子付きの荷馬車に揺られて通過しただけなのでノーカン、ノーカウントである。
0
あなたにおすすめの小説
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
【完結】海外在住だったので、異世界転移なんてなんともありません
ソニエッタ
ファンタジー
言葉が通じない? それ、日常でした。
文化が違う? 慣れてます。
命の危機? まあ、それはちょっと驚きましたけど。
NGO調整員として、砂漠の難民キャンプから、宗教対立がくすぶる交渉の現場まで――。
いろんな修羅場をくぐってきた私が、今度は魔族の村に“神託の者”として召喚されました。
スーツケース一つで、どこにでも行ける体質なんです。
今回の目的地が、たまたま魔王のいる世界だっただけ。
「聖剣? 魔法? それよりまず、水と食糧と、宗教的禁忌の確認ですね」
ちょっとズレてて、でもやたらと現場慣れしてる。
そんな“救世主”、エミリの異世界ロジカル生活、はじまります。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる