ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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 思わず素っ頓狂な声を上げる二人を前に、ラミウムはフッと小さく笑い、
「良いかい、パスト。アタシがアンタに与えた天世のチカラは、あくまでアンタが中世で生きる為の「枷」なのさぁね」

「枷?」

「おぅさ。アンタが、地世のチカラを飼い馴らせる様になるまでのねぇ」
「で、でぇも……」
 自信無く、不安げな表情に、
「飼い方を身に付けな」
「…………」
「そしてチカラを「使うべき時が来た」と思った時、躊躇なく「枷」を外して使うんだ。良いね?」
「はぁい……」
 返事を返しつつ、

(ボクなんかに出来るのかな……失望させてしまうんじゃ……)

 不安しかない表情に、ラミウムは満面の笑顔で以って、
「自信をお持ちぃな、パスト! アンタは、このアタシが見込んで「チカラを分け与えたオンナ」だよ!」
「え!?」
(もしかしてボクぅ、両親以外の人に初めて評価されたぁ!?)
 パストリスは曇りが晴れた様な笑顔を見せ、ラミウムもその表情に満足げな笑みを浮かべつつ、

「ただし!」

「!」
「感情任せに「地世のチカラ」を求め過ぎるんじゃないよ。下手をすると、今の姿に戻れなくなっちまうからねぇ」
「ハぁイ!」
 未来を見据える眼差しに、
「良い返事さぁね」
 横たわったまま、嬉しそうにパストリスの頭を撫でまわすと、未だ納得出来ない様子でソッポを向くドロプウォートに、

「アンタも分かったかぁい? アンタは、頭はイイが「頭でっかち」に物事を捉え過ぎ過ぎなのさぁね。目先の知識や体裁に囚われて、心の眼まで曇らせんじゃないよ」
「…………」

 しかし応えは返らない。
 するとパストリスが意を決してバッと立ち上がり、

「ドロプウォートさん!」 

 右手を差し出し、

「もしボクがまた暴走したらぁ、今度こそアナタの手でぇ、容赦なく斬って下さぁい!」
「………」

 決意を以って差し出された右手を、黙って見つめるドロプウォート。
(この子(パストリス)が良い子ですのは十分過ぎるほど分かっていますわ……ですが私は「国と民」を護る四大が一子。危険な要素があると知りながら、それを放置など……)
 内なる葛藤に苛まれていると、惑う背中を押す様に、ラディッシュが優しく微笑みながら、
「ドロプウさぁん」
 握手を促し、促されたドロプウォートも、
(ラディ……)
 心は大きく揺らいだが、
(でも……それでも、やはり私は……)
 唇の端をキュッと噛み、凛然とした表情は崩さず、

「言葉だけでなら、何とでも言えますわ」

 差出された手を握る事無く背を向け、
「少し一人にして下さいですわ」
 家から出て行ってしまった。
 握ってもらえなかった右手を胸元で握り、
「…………」
 閉ざされた玄関扉を悲し気に見つめるパストリス。

 するとそんな彼女の傍らに、ラディッシュが優しく立ち、
「納得は出来ないけど、理解はしてくれるってさ」
 微笑みに、
「……はぁい」
 不安の残る笑顔を返した途端、

 バァン!

 閉ざされたばかりの玄関扉が勢いよく跳ね開き、

「家が武装した村人たちに取り囲まれてますわァ!」

 血相を変えたドロプウォートが飛び込んで来た。
「「「!」」」
 急ぎ扉を閉め、窓辺に駆け寄るラディッシュとパストリス。
 窓から、そぉ~と外の様子を窺うと、

「「!!!」」

 ドロプウォートの言う通り、家の周囲は既に「中世人の姿となった村人たち」に、遠巻きで囲まれていた。
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