ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

文字の大きさ
32 / 894

1-32

しおりを挟む
 後日――
 
 些か緊張した面持ちで、姿勢良く切り株に座るラディッシュと、その前には差し棒代わりの小枝を手にした「ラミウム先生」の姿が。
 教師にでも成り切っているのか、いつものガラッパチは鳴りを潜め、満更でもなさげな上品を気取った表情でコホンと小さく咳払いを一つすると、

「良いかぁい、ラディ。まずはアンタに、この世界について教えといてやるよ」

 穏やかを演じた口調に対し、
(今日の晩御飯の下ごしらえが終わってないんだけどなぁ……)
「なんか言ったかァい!」
 上の空を、毎度の「キレ顔」でツッコまれ、

「なっ、何でもありましぇん!」

 条件反射的にピンと背筋を伸ばして立ち上がり、
「サァー! イエスマァムぅ!」
 軍隊式で敬礼。

 そんなラディッシュは、
「はぁ? 何だぁいそりゃ??」
 呆れ交じりの冷静なツッコミを入れられ、
「へ?」
(何コレ?)
 むしろキョトン顔。

 自らやっておいて不思議そうに首を傾げる姿に、
(また、アッチの世界(地球)の記憶の断片ってヤツかねぇ……やはりアタシの……)
 消したはずの記憶が度々顔を出す事に、ラミウムは「とある懸念」を抱いたが、今は一先ずそれは横に置き、
「ドロプ」
「?」
「アンタの知らない話があるかも知れないからねぇ、一応聞いときなぁね」
「…………」
(この世界の住人である私に、この世界における一般常識などを聞かされましても……)
 些か不服に思うドロプウォートであったが、天世人による直接講義など本来は皆無であり、そう考えると不平よりも好奇が勝り、
「分かりましたわ」
 頷くと、ラディッシュの隣に着席した。

 するとラミウムが自嘲気味な笑みを浮かべて開口一番、
「と、まぁ偉そうに言っちゃぁいるがねぇ、アタシも天世人になって、天世で聞かされた話をするってぇだけで、どこまで本当の話かなんてぇ分かりゃしないけどねぇ」
「ん?」
(どう言う意味だろ???)
 頭上に「大きなハテナマーク」を立てた顔するラディッシュ。

 その間の抜けたような表情から、疑問を察したラミウムは、
「そう言やぁアンタに話して無かったねぇ~」
 自身の失念をケラケラと笑い、
「アタシぁ元々、中世の人間なのさぁね」
「へぇ?!」
 新たに知る、意外な事実。

 驚くラディッシュの傍ら、この世界では子供でも知る常識なのか、ドロプウォートがさも当然と言った口ぶりで、
「ですから「この様な品」であるにもかかわらず、身近に感じ、熱心な「信者」までおりますのよ」
「あぁん? 「この様な品」ってのは、どう言う意味さぁねぇ?」
 訝し気な顔に、

「さぁ~?」

 軽やかに笑って受け流していると、頭の整理が追い付かないラディッシュが、
「信者? だってぇ前にラミィが「自分は女神じゃない」って……え?? えぇ???」
 戸惑いを隠せずにいると、何故か決まりが悪そうなラミウムに代わって、そんな彼女をクスッと小さく笑うドロプウォートが代弁する様に、

「ラミィは天世人の中でも、中世人の信仰対象となる、「選ばれし百人の天世人」の御一人なのですわぁ」
「えぇ!? 嘘ぉ?! 凄ぉ! だって天世の人達だって沢山いるんだよねぇ? その中での百人の一人って言う事は、ラミィって実は超優秀なのぉ!!!?」

 称賛を以って驚くラディッシュに、ラミウムはほんのり照れを滲ませ、
「ナハハハハ、んなぁ大仰なモンじゃないさぁね」
 珍しく謙遜して見せたが、
(!)
 ラディッシュは見逃さなかった。笑顔の奥に潜む「微かな陰り」を。
 それは人の顔色ばかり窺う、気弱な彼の悪癖ゆえに成せた業か。

(何でだろう……いつもみたいに笑ってない、気がする……そぅ言えば前にも……)

 他の天世人の話をした時に感じた違和感を思い出していたが、よもや心の奥底にしまい込んだ「闇の断片」を悟られているとは露知らず、ラミウムは照れ臭そうに笑いながら、
「信仰対象なんてガラじゃないと、アタシ自身が一番思ってるさぁね。何の因果か、天世になったアタシが百人の一人に選ばれて……って、アタシの話はイイのさぁねぇ!」
 取り繕った様子で思い直し、

「今は、この世界の話さぁね!」

 心の内の一部を吐露してしまった自身を小さく笑ったが、
「っと、その前に」
 一呼吸置くと、
「ラディ、ドロプ、イイかいよくお聞き」
「「?」」
 念押しする様に前置きしてから、

「これから聞かせる話は、あくまで天世で教えられた、天世側から見た「一方的な話」さぁね。だから軽々しく鵜呑みにスンじゃないよ」
「…………」
(どうしてそこまで……)

 物言いたげな表情で見つめるラディッシュに、
「ん? どぅしたぁい、ラディ?」
「ねぇ、ラミィ……」
「おぉん?」
「ラミィは、何でそこまで天世を疑うの?」
「…………」
「だって、天世ってぇ「中世を護ってる世界」なんでしょ?」
 するとドロプウォートも同じ印象を抱いていたのか、

「それについては私も興味がありますわぁ」

 向けられた二つの無垢な瞳に思わず、
「そ……」
 一瞬、何かを言いかけたラミウム。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

【完結】海外在住だったので、異世界転移なんてなんともありません

ソニエッタ
ファンタジー
言葉が通じない? それ、日常でした。 文化が違う? 慣れてます。 命の危機? まあ、それはちょっと驚きましたけど。 NGO調整員として、砂漠の難民キャンプから、宗教対立がくすぶる交渉の現場まで――。 いろんな修羅場をくぐってきた私が、今度は魔族の村に“神託の者”として召喚されました。 スーツケース一つで、どこにでも行ける体質なんです。 今回の目的地が、たまたま魔王のいる世界だっただけ。 「聖剣? 魔法? それよりまず、水と食糧と、宗教的禁忌の確認ですね」 ちょっとズレてて、でもやたらと現場慣れしてる。 そんな“救世主”、エミリの異世界ロジカル生活、はじまります。

処理中です...