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11 井の中の蛙
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パーティでは予想通り、多くの要人達に取り囲まれる事になった。アレンが影武者と知っているベルーガ帝国以外の国々の貴族や高官の相手が主だった。レミリアは王太子の婚約者としてそれなりにパーティには出慣れているつもりだったが、これほど多くの国から人々が集まっているのは見たことがなかった。
(井の中の蛙だったってことね)
前世の記憶があるからといって油断してはいけないと改めて自戒したのだった。
予想外だったのは、アルベルトの父、現マリロイド国王ギルバートがレミリアの姿を見て腰を抜かさんばかりに驚いた事だ。アルベルトがひた隠しにした為、王にまで彼女の情報が伝わっていなかった。
「こんな重要な情報すら入手出来ていないなんて」
各国から集まった貴族や高官達がヒソヒソと話す声を聞いて、ギルバートは恥と怒りで顔が真っ赤になっていた。しかし人々のヒソヒソ話はなかなか納まらない。
「何ですあの恰好は。ルヴィア様が亡くなったことご存知ないのかしら」
「あれじゃあまるで娼婦じゃないか」
「昨日公爵家の宝石店で暴れていたらしいですわ」
「まぁなんて野蛮な……やはり魔物の森に取り囲まれていると中の住人も凶暴になるのかしら」
アルベルトもユリアもなんともこの場にそぐわないド派手な恰好をしていた。2人とも白い衣装で合わせていたが、おそらく婚約したことを国外へアピールするためだったのだろう。ユリアに至っては胸も背中も足もかなり露出されており、会場中の視線を悪い意味で独り占めしていた。
「フフ! 皆芋臭いドレスね」
「……。」
流石にアルベルトとグレンは自分達が場違いな恰好をしてきたとわかったようだ。自分達以外誰もいつものパーティのように煌びやかな服装をしていない。あえて暗いカラーのドレスを着て、露出を控えているのがわかる。喪に服しているのだ。第二王子は今回のパーティを欠席していた。
「第二皇子の婚約者ルヴィア様が最近お亡くなりになったそうです」
グレンがアルベルトにそう告げると、額に手を当ててため息をついた。
「どうして俺達には知らされていなかったんだ」
「それが……ユリア様にはお知らせしたと言われました……」
彼らは予定より1週間も早くベルーガ帝国に来ていた。図々しくも皇宮の来賓室に居座り好き勝手観光していた。たまたまアルベルトとグレンが席を外している際に、ルヴィアが亡くなったことを知らされたユリアは、
「ふーん。わかったわ」
と答えたそうだ。
「ユリア、なんで教えてくれなかったんだい?」
「え? だってパーティとは関係なくない?」
本当にわからないという表情だ。彼女は今日のパーティを楽しみにしていた。各国のイケメン達をまた自分の虜に出来ると思い込んでいる。
「ねえ見て、皆こっちを見てる……なんでだろ?」
目をパチパチとさせてアルベルトとグレンに尋ねる。いつものように、君が誰よりも可愛いからさ、と言ってくれるのを待っているが、2人は答えない。
大方のお偉方との挨拶が終わったレミリアは、今度は若い男性に大人気だった。ほとんどが他国の王族や高位貴族の息子だった。これほど男に取り囲まれたことは前世でも今世でもない。
(モテ期キターーーーーー!)
内心ウハウハとした高揚感に溢れていたが、彼女が長年培ってきた『王太子の婚約者である公爵令嬢』という今はない肩書による自制心が働き、見事な立ち振る舞いが周囲の評価を高く上げた。
「やはり婚約破棄は王太子側に原因があったのですね」
「あの国の司法はどうなっているんだ……あんな素晴らしい令嬢が国外追放だんて」
「やはり大賢者の弟子ともなるとかなりの力量があるのだろうな」
「美しい上になんて聡明な方なんだ」
マリロイド王国から来た者達は、皆一様に恥ずかしい思いをしていた。乙女ゲームの登場キャラ以外、でかい魚を逃したことがわかっていたから、なおのこと悔しい思いもあった。
アルベルトが父親に呼び寄せられ、アレンとレミリアが別々の場所でそれぞれ対応し始めたころ、ついにあの女が動く。そう乙女ゲームのヒロイン、ユリアだ。
「ねぇねぇ大賢者様~少しお話いたしませんかぁ?」
「私達、並ぶと絵になるんですって。どう言う意味かなぁ?」
「きゃっ! ヒールに慣れてなっくて……ごめんなさぁい」
(あんのクソアマ!!!)
アレンの腕に胸を押し当て始めたユリアをみてレミリアが駆け寄ろうとしたところ、アレンの方が手を上げて制した。そしてウィンクする。口元をキュッときつく結び、笑うのを我慢しているのがわかった。
(あ……面白がってる)
「ねぇ! 魔法にて照らされた庭園がとても綺麗なんだって! あっちで見ましょうよ!」
そういって、アレンの腕を引っ張って強引にバルコニーへと連れて行った。
(井の中の蛙だったってことね)
前世の記憶があるからといって油断してはいけないと改めて自戒したのだった。
予想外だったのは、アルベルトの父、現マリロイド国王ギルバートがレミリアの姿を見て腰を抜かさんばかりに驚いた事だ。アルベルトがひた隠しにした為、王にまで彼女の情報が伝わっていなかった。
「こんな重要な情報すら入手出来ていないなんて」
各国から集まった貴族や高官達がヒソヒソと話す声を聞いて、ギルバートは恥と怒りで顔が真っ赤になっていた。しかし人々のヒソヒソ話はなかなか納まらない。
「何ですあの恰好は。ルヴィア様が亡くなったことご存知ないのかしら」
「あれじゃあまるで娼婦じゃないか」
「昨日公爵家の宝石店で暴れていたらしいですわ」
「まぁなんて野蛮な……やはり魔物の森に取り囲まれていると中の住人も凶暴になるのかしら」
アルベルトもユリアもなんともこの場にそぐわないド派手な恰好をしていた。2人とも白い衣装で合わせていたが、おそらく婚約したことを国外へアピールするためだったのだろう。ユリアに至っては胸も背中も足もかなり露出されており、会場中の視線を悪い意味で独り占めしていた。
「フフ! 皆芋臭いドレスね」
「……。」
流石にアルベルトとグレンは自分達が場違いな恰好をしてきたとわかったようだ。自分達以外誰もいつものパーティのように煌びやかな服装をしていない。あえて暗いカラーのドレスを着て、露出を控えているのがわかる。喪に服しているのだ。第二王子は今回のパーティを欠席していた。
「第二皇子の婚約者ルヴィア様が最近お亡くなりになったそうです」
グレンがアルベルトにそう告げると、額に手を当ててため息をついた。
「どうして俺達には知らされていなかったんだ」
「それが……ユリア様にはお知らせしたと言われました……」
彼らは予定より1週間も早くベルーガ帝国に来ていた。図々しくも皇宮の来賓室に居座り好き勝手観光していた。たまたまアルベルトとグレンが席を外している際に、ルヴィアが亡くなったことを知らされたユリアは、
「ふーん。わかったわ」
と答えたそうだ。
「ユリア、なんで教えてくれなかったんだい?」
「え? だってパーティとは関係なくない?」
本当にわからないという表情だ。彼女は今日のパーティを楽しみにしていた。各国のイケメン達をまた自分の虜に出来ると思い込んでいる。
「ねえ見て、皆こっちを見てる……なんでだろ?」
目をパチパチとさせてアルベルトとグレンに尋ねる。いつものように、君が誰よりも可愛いからさ、と言ってくれるのを待っているが、2人は答えない。
大方のお偉方との挨拶が終わったレミリアは、今度は若い男性に大人気だった。ほとんどが他国の王族や高位貴族の息子だった。これほど男に取り囲まれたことは前世でも今世でもない。
(モテ期キターーーーーー!)
内心ウハウハとした高揚感に溢れていたが、彼女が長年培ってきた『王太子の婚約者である公爵令嬢』という今はない肩書による自制心が働き、見事な立ち振る舞いが周囲の評価を高く上げた。
「やはり婚約破棄は王太子側に原因があったのですね」
「あの国の司法はどうなっているんだ……あんな素晴らしい令嬢が国外追放だんて」
「やはり大賢者の弟子ともなるとかなりの力量があるのだろうな」
「美しい上になんて聡明な方なんだ」
マリロイド王国から来た者達は、皆一様に恥ずかしい思いをしていた。乙女ゲームの登場キャラ以外、でかい魚を逃したことがわかっていたから、なおのこと悔しい思いもあった。
アルベルトが父親に呼び寄せられ、アレンとレミリアが別々の場所でそれぞれ対応し始めたころ、ついにあの女が動く。そう乙女ゲームのヒロイン、ユリアだ。
「ねぇねぇ大賢者様~少しお話いたしませんかぁ?」
「私達、並ぶと絵になるんですって。どう言う意味かなぁ?」
「きゃっ! ヒールに慣れてなっくて……ごめんなさぁい」
(あんのクソアマ!!!)
アレンの腕に胸を押し当て始めたユリアをみてレミリアが駆け寄ろうとしたところ、アレンの方が手を上げて制した。そしてウィンクする。口元をキュッときつく結び、笑うのを我慢しているのがわかった。
(あ……面白がってる)
「ねぇ! 魔法にて照らされた庭園がとても綺麗なんだって! あっちで見ましょうよ!」
そういって、アレンの腕を引っ張って強引にバルコニーへと連れて行った。
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